天ルート63
「じゃあ、かぐやちゃん。私からはこれ。はい」
さくらちゃんも包装された小さな箱をかぐやに渡す。
それを開くとーー
「これはハンカチね。肌触りが良い」
かぐやはお嬢様だからか、触れただけで物の良し悪しが分かるらしい。
「え、と。それでね。ハンカチを開いて欲しいな」
「ハンカチを? こう?」
かぐやはさくらちゃんの言う通り、四つ折りにされた白いハンカチを目の高さで開く。
「まあ! 見て、峰! これ見て!」
興奮気味のかぐやに峰さんが微笑む。
「素晴らしい刺繍ですね」
「立花たちも見て!」
かぐやがハンカチを翻す。
「うわ、すご!」
思わず声を漏らしてしまう。
ハンカチの隅に、アルファベットで『Happy birthday Kaguya Yaebasi』の金刺繍と何かのマーク。
「嬉しいわ、さくら! 私の名前に、八重橋重工のマークまで!」
かぐやは胸にギュッとハンカチを抱き締める。
「喜んでもらえて良かった〜」
さくらちゃんは胸を撫で下ろし、微笑む。
謎のマークは八重橋重工の会社のマークらしい。
「アルファベットのスペル合ってるよね? 一応、先に練習で縫ったりはしたんだけど」
「……え?」
さくらちゃんの言葉に俺たちは目を丸くする。
俺たちの視線にさくらちゃんは困惑する。
「ど、どうしたの、皆?」
「縫ったって。これ、さくらちゃんが縫ったの?」
「え? うん」
「オーダーメイドじゃなくて?」
「そうだけど……やっぱり変だった?」
「さくら」
俺を退かして、かぐやがさくらちゃんの両手を取る。
「うちにお嫁に来ない? うちはあなたみたいな子を欲してるわ!」
「え、か、かぐやちゃん!?」
「かぐやストップ!?」
俺は暴走するかぐやを止める。
「ダメだよ! さくらちゃんは私の!」
「お菓子作りも料理も、まさかの刺繍まで出来るスーパー女子力なんてあり得ないでしょ!」
確かに俺もびっくりである。
さくらちゃんは元から女子力が高いが、刺繍も出来るとは初耳だ。
「さくらは将来、私が養うわ! それで毎日、お味噌汁を作ってもらうの!」
「考えが古風だな! 最高かよ!」
「お姉ちゃんも、かぐやさんも落ち着いて」
麻衣にポンポンと肩を叩かれる。
ふう。
一旦冷静になろう。
「でも。凄いね。手作りって」
「ううん。ハンカチは売ってたのだよ? 私は手縫いで刺繍を挿れただけだし」
「さくらちゃん、それが凄いんだよ」
「そ、そう? えへへ」
さくらちゃんが頬を染めて、恥ずかしげに微笑む。
あーもう!
うちの恋人は可愛い!
「ありがとう、さくら。峰、額縁を持って来て。これは是非飾らないとね!」
「分かりました、かぐや様」
「……使ってね?」
「家宝にするわ!」
「え、え〜……」




