彼方ルート91
数分の空の旅。
帰りは本当にクロハが丁寧に飛んでくれた。
そして森の中に降りる。
「さて、何処かな〜」
俺を腕から下ろすと、クロハは木々に右掌を向けていく。
「何してるの?」
「結界の弱いところを探しているんだよ。彼方の身体では無限は強力な結界を張り続けてられない。だからこうして弱いところを見つけて通り抜ける。神様が居れば、意図的に結界を弱めてくれたんだけどね」
目を細めてクロハは集中する。
俺も彼女を待つ。
「お、この辺りかな」
クロハが微笑む。
時間では十分ほど経っただろうか。
「さあ、相島。私にしっかり掴まって」
俺が手を伸ばす。
だけどクロハは俺の胴に腕を回した。
「一瞬とはいえ、結界を通るときは意識が奪われる危険がある。だから私に掴まって」
「わ、分かった」
俺はクロハの首に両腕を回す。
なんだかさっきから女の子扱いされているから恥ずかしいんだけど。
「行くよ?」
「いつでも良いよ」
少し怖くなり俺は目を固く閉じる。
「三、二、一。はッ!」
「うっ!」
何かに引っ張られる感覚。
これが意識を奪われるていうやつか。
「よし! もう大丈夫だよ」
恐る恐る目を開ける。
「こ、ここは?」
さっきまで木しかなかった景色。
だけどここはーー
「鳥居の道?」
俺がクロハに連れ去られた場所だ。
「ふいー。二度も成功するなんて。私は日頃の行いが良いんだね」
クロハが満足げに頷く。
「体調はどうだい?」
「あ、うん。大丈夫」
「そうか、それは良かった。じゃあ向かおうか」
クロハは階段の先を見上げる。
その先の神社に無限さんは居る。
俺たちは一段一段階段をゆっくりと上がっていく。
心に緊張が募っていく。
神社に着いたとき、巫女さんたちが俺たちと戦うことを選んだらどうしようかと。
「安心しなよ」
クロハが俺の背を軽く叩く。
「上手くいかなかったとしても、君は必ず返す。君を朱乃宮の敵にはさせないから」
「クロハ……」
なんか今日のクロハはイケメンなんだけど。
どうしよう。
軽く惚れそうだ。
「相島……?」
声に俺たちは顔を上げる。
上りの終着点。
そこから見下ろす人。
「守羽さん」
「ぶ、無事だったのね。良かった〜」
守羽さんが文字通り胸を撫で下ろす。
「それで、どうしてあなたが居るの?」
柔らかかった瞳が険しく細められる。
守羽さんの指には金属の杭。
「交渉しに来たのさ」
クロハが腕を広げて微笑む。
「無限に会わせてほしい。話したいことがあるんだよ」
「許可出来るわけないでしょ? 誰があなたなんかに」
「そうか。それならーー」
クロハは俺を抱き締める。
「この子を殺すよ?」
俺は人質に取られたのだった。




