彼方ルート90
そうと決まれば話は早い。
「無限さんは俺が説得する。だから一緒に行こう」
「君は本当にお人好しだね。無限は妖怪を酷く憎んでいる。君も一緒に殺されるかもよ?」
「クロハが一人で行くよりはマシでしょ?」
「ははッ。確かに!」
俺たちは笑い合って部屋を出る。
外はまだ明るい。
俺が倒れてからそれほど時間は経っていないのだろう。
「スズに会うの?」
「いや、決意が鈍る。それにスズ様に言ったら私たちだけで行かせない。自分も行くと言い張るよ」
やれやれとクロハは首を振る。
なんだか過保護な親を持った子供みたいだ。
「クロハ様?」
背後からの声に俺たちは振り返る。
「ああ、アカメか。どうしたの?」
「何処行くの?」
「朱乃宮のところだよ」
アカメが目を細める。
「私も行く。今度こそ全員の首を刎ねる」
アカメの腰には刀。
彼女は戦う気だろう。
「そいつは? 殺さないの?」
赤い瞳が俺を睨む。
それだけで背中の汗が冷える。
「ダメだよ。この人は私たちの同胞だ。殺しちゃダメ」
「……分かった」
アカメが目を伏せただけで俺に向いていた殺気が消える。
本当に恐ろしい子だな。
「アカメはお留守番。戦いに行くわけじゃないから」
「じゃあ何しに行くの?」
「偵察だよ。人数は最低限が良い。それとアカメ」
クロハは手招きをする。
アカメが傍に寄ると、彼女に耳打ちをする。
「よろしくね?」
「スズ様にも言ったらダメなの?」
不思議そうに小首を傾げるアカメにクロハは微笑む。
「うん。私たちだけの秘密だ。ほら、指切り」
二人は小指同士を絡めて約束をする。
「じゃあね、アカメ」
「うん。行ってらっしゃい」
アカメに手を振られて俺たちは敷地の外へ。
「さっきアカメに何て言ったの?」
「私が明後日の夜までに戻らなかったら全兵力で朱乃宮を滅ぼせって」
「戦争はもうしないはずじゃ?」
俺はクロハに目を細める。
「言っただろう? 私が死なない限りだ。私がここに帰って来ないということは、私は朱乃宮の誰かに討たれて死んでるってことさ」
悪戯っぽくクロハが笑う。
だけど彼女の心は本気なのだろう。
「絶対にそんなことにはさせない。クロハを殺させないよ」
だから俺は決意する。
争いがなくなる道が見えたのだ。
それを逃しはしない。
「そうかい。じゃあ君のことを頼りにしようかな。よっと」
「わっ!?」
クロハが俺に手を伸ばすと、そのままお姫様抱っこされる。
「く、クロハ。これはちょっと恥ずかしいんだけど」
「さっきは手荒に連れて来たけど、今の君は恩人だ。扱いが変わってもおかしくはないさ」
そして俺たちは天へ舞った。




