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魔物

 目の前には一体のプルプルとした魔物がいる。


 ――スライムだ。


 RPGなどではお馴染みだがゲームによってプルプルしていたりネバネバしていたり強さが変わるスライム。この世界では片手サイズより少し大きめで質感はプルプルしていて弾力が良さそうな丸いフォルムをしている。色は透き通った水色。摂取しているものの性質や何かで色が変わったり属性が変わったりする設定があったはず。

そして、強さはレベル1でも勝てる程度だったはずだ。


 ネトゲ時代にも一番初めに配下として加えた魔物。万が一にも傷つく恐れはないだろうと言うことで手始めに、その時の方法を思い出しながら挑戦してみよう。


 「俺は今からコイツの攻撃を受ける。だけど、手出しはするな」

 「だ、大丈夫なんっすか? マスター」

 「もちろん」


 スライムがミヨーンと体を変形させながら少しずつ近寄ってくる。そしてその弾力のある体を縮め込ませるようにして、反動とともに体全体での突撃を俺に向けて繰り出してきた。


ドンッ


 衝撃を感じ取るがダメージはゼロ。やはり補正の効果は抜群なようだ。スライム相手じゃ余り確証は持てないが。


 スライムは俺の腕にぶつかり、その後体を変形させ腕を包み込んで吸着した。スライムの特性として体の中に取り込んだものを分解し自分の養分にすると言うものがある。しかし俺は防御力に補正がかかっているのでダメージはゼロ。分解もされない。





 あとは――忍耐力だ。





 ただ只管にこのまま耐える。スライムに自分を慣れさせ、どうにか懐柔する。とてもシンプルだが分かりやすく安定した手段だ。

 魔物によって手段は様々だったがスライムはこれでいけた。


 「い、良いんっすか? そのままで痛くないっすか?」

 「ああ、全然問題ない。俺はこのままスライムを腕に着けて行動するから、準備が整ったらまた探索に戻ろう」

 「り、了解っす……さすがマスターっすね」





 その後、探索に戻り、倒した魔物をスライムに与えて餌付けしながら進んだ。少しグロかったが、この際仕方ないと諦めて剣で細切れにしながら与えた。あとは極力触らないようにして警戒心や敵対心を抱かせないように心掛けたが表情も感情も見えないので上手くいっているのかどうか分からない。


 そして、辺りもだいぶ暗くなってきてしまったが休めそうな場所は見つからず……。


 「しょうがないか……今日は野宿だな。ホシコは良いか?」

 「問題ないっす。不寝番は任せて下さいっす」

 「いやいや、交代で寝ような」

 「い、良いんっすか? マスター自ら番をするなんて」

 「当たり前だ。俺は別に偉い人ってわけじゃないしな。ホシコとは仲良くなりたいし上下関係だけの付き合いなんてつまらないだろ?」

 「マスター……ホシコもマスターともっと仲良くなりたいっす。にひっ」

 「じゃあまず焚火の用意をするか」

 「了解っす」





 夕食を終えて、最初は俺が見張りをすることにした。ホシコは俺の膝枕で寝ている。野宿用の道具などは持ってないので地面で寝るしかないのだが膝枕でも少しは良いかと思って提供した。最初は恥ずかしがっていたが今ではぐっすりだ。


 そして暇な俺はスライムと遊んでいる。

 今日一日かけて何とか俺には慣れてくれたようで試しに触ってみても悪い反応は見せなかった。餌を与えつつ細心の注意を払いながら感触を楽しむ。

 ハリとツヤがあってムニョンムニョンしてて柔らかくて手に吸い付くようなシットリした瑞々しい感覚がとても気持ちいい。まるで女性のおっぱいを触っているかのような…………童貞なので分かりませんが、そんな感触だ。


 いかん、夢中になり過ぎた。ここでまた警戒心を抱かせるような行動をしてはいけない。最後までしっかりと懐かせないと、スライムは弱い魔物でビビりだからすぐ怯えてしまう。

 俺が自身にとって危険を及ぼす存在ではないと、むしろ弱い自分には良いボディガード兼メシのタネぐらいに思ってもらわないと。スライムに関しては特に戦力として期待してないので怠惰になってくれても構わない。とりあえず魔物を手懐ける練習だ。





 結局昨日は寝れなかった。ホシコが爆睡してしまって起きなかった。


 「ご、ごめんなさいっす。申し訳ないっす。不甲斐ないっす」

 「そんなに畏まらなくても大丈夫だって。昨日は魔物との戦闘まかせっきりだったし疲れてただろうから仕方ない」

 「許してくれるっすか?」

 「怒る理由もないだろ。ただ眠いし今から寝ていいか?」

 「もちろんっす。こ、今度はホシコが膝枕するっす」

 「おお、そうか。助かる」


 ホシコの膝枕を有難く頂こうと思ったら、スライムが俺の腕から離れ平たく形を変えた。枕のようだ。もしやこれは自分を枕にしても良いという意思表示か?


 恐る恐る頭を乗せるとしっかり受け止めてくれた。正解だったらしい。

 いやー良い枕だ。感触も寝心地も俺にベストマッチしている。よく眠れそうだ。夜もずっと一緒にいたおかげかスライムも十分に心を開いてくれたみたいで安心した。


 「お休み……」

 「いつの間にスライムとあんな関係になってたっすか!? マスターに膝枕……」





 やっぱり日が昇った状態ではそんなに眠れなかった。三時間ほど眠った後目を覚まし、今は再び探索を始めた。

 スライムは俺の頭の上に落ち着いている。


 今日は俺も時々戦闘に参加している。ホシコの光線銃で倒した方が早いのかもしれないが戦闘の訓練も今のうちに積んでおかないと強力な魔物と遭遇したときなどに対処できなくなるからな。

補正の効果は抜群で、どの魔物からもダメージを受けなかったので安心して戦えた。

レベルは5まで上昇。


 「そろそろ何かあっても良いと思うんだが……」

 「あっ!! マスター、あそこに洞窟らしきもの発見っす!!」

 「ん? 本当だ」


 しかし洞窟か……ま、ちょっとだけ覗いてみるか。




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