新世界
うっすらと意識が目覚め始める。
地面に立っている感覚。少しずつ瞼を開いていくと――大平原のど真ん中にいた。
「ここは、どこだ?」
『新・世界創造』は結構やり込んだとはいえマップも広大で要素も膨大だったので遊べていない部分のほうが多いと思う。それに仕上げの段階で色々と手を加えたと言っていたし、俺の知っているままではないだろう。
と、言うことは、今のこの状態は迷子ってことになるよな。もう少し見知った土地か人里に召喚してほしかった。
まぁHPと防御の補正があるし死ぬことはないだろう。いや、普通に飢えとかで死ぬ可能性はあるな。ゲームでも空腹パラメーターがあってゼロになると死んだ覚えがある。
「ん? なんか袋が置いてある……」
すぐ傍に大きめの袋。特典の余ったポイントで選択した装備品とかアイテムとかだろうか。見てみよう。
覗いてみると予想通り特典で選択した物が入っていたのでとりあえず装備を身に着けた。
黒のニット製で、袖はなくて首元は覆うタイプのピッタリとした服と、黒のズボン。その上から鉄製の胸当てや腕甲、脚甲を装着した。武器は普通の片手剣だ。
他には回復薬や食料などが入っていて……何か大きな物体が一つある。明らかに怪しさ満点だ。
触れて良いものなのだろうか悩んでいるとソレがピクッと動いた。生き物か? もしかしてこれが……。
「ジャッジャジャーン!! ホシコ登場っす!!」ヒュー、シュタ
「うわっ!!」
急に飛び出してきた!!
「お兄ちゃんがホシコのマスターっすか? よろしくっす」
「え? あの……君が特典で選んだ宇宙人で良いのかな?」
「たぶんそーっす。ホシコっす。よろしくっす」
「あ、うん」
色々と予想外の人物だ。
まず背丈は俺の腹の辺り。子供サイズだ。そして顔以外、頭も含めて全身を光沢のあるピッチリとした水色のボディスーツを着ている。その上から白のグローブやブーツ、ベルトなどを装着した姿だ。いかにもSFとかアメコミっぽい感じだな。
顔は整っていてブロンドの前髪が頭部分のスーツからはみ出している。瞳はスカイブルー。胸がほんのり膨らんでいるので女の子だろう。
雰囲気はSFチックなコスプレをした可愛らしい幼女ってところだな。しかし言動が変なので余計に滑稽さが滲み出ている。と言うか、これが本当に宇宙人なのか?
「君、宇宙人なんだよね?」
「そう呼ばれてるっすね。こんな事も出来るっすよ」
そう言うとホシコの体がふわりと宙に浮きだした。無重力の中にいるみたいだ。宇宙人と呼ばれるだけのことはあるな。
「すごいな」
「これはテレキネシスって言う技っす。マスターに褒めてもらえて光栄っす」
「あぁ、それは良かったよ。で、ホシコは俺の配下ってことで良いの?」
「もちろんっす。そう言う条件でホシコもこの世界に送ってもらったっす。メニュー画面で確認してくれればホシコはマスターの配下として登録されてるはずっす」
メニュー画面。念じてみるとゲームでも馴染みのあるメニュー画面が目の前に開かれた。少しゲームの時とは変化しているみたいだが。確かにホシコは俺の配下として登録されていた。
「うん、確認できた。じゃあホシコ、これからよろしくな」
「マスターのお役に立てるよう精一杯頑張るっす」
なんか騒がしいけど良い子みたいだし悪くないな。超能力みたいなのは使えてたけど戦闘とかは大丈夫なんだろうか。
「あっ!! マスター、伏せて下さい。敵っす」
「えっ!?」
突然言われたので反射的にその場で伏せる。すると……。
チュンッ、ジュウ……
発射音のようなものと焼けるような音が聞こえた。
「もう大丈夫っすよ」
音のしたほうを見ると一体の魔物が倒れていた。
戦闘も問題ないようだ。
ホシコは手に玩具のような丸いフォルムの銃を持っていた。いわゆる光線銃とかの部類だろうか。それで魔物を仕留めたらしい。
「ありがとな、ホシコ」
「ま、マスターを御守りするのは基本中の基本っす。にひっ」
照れているのかモゾモゾしながらにやけている。可愛いな。何の基本か分からんが。
倒した魔物は最初から所持している収納袋に入れておいた。いくつか物を収納することができる小さい四次元袋だ。そんなに多くは入らないので新しく容量の大きな収納系のアイテムを手に入れないとすぐ満杯になってしまうだろう。
ゲームなら倒した魔物から勝手に素材をゲットできるんだが、そういったシステムはもうないらしい。かと言って剥ぎ取る方法とか知らないしグロそうなのでそのまま袋に突っ込んだ。他のアイテムなども収納袋に入れておく。
まずは街とか村とか休める場所を探さないといけないな。
「よし、それじゃあまずは周辺の探索を始めようか」
「了解っす。はぁ~新しい世界、ワクワクが止まらないっすね」
宇宙人にしてもファンタジーな世界は新鮮なのだろうか。こっちからすれば宇宙の時点でロマン溢れる感じなのだが。
「マスター!! こっちに変な虫がいるっす。あっ!! 向こうに変な草が生えてるっす。あっ!!」
探索を始めてからずっとこんな感じだ。好奇心が旺盛であっちこっち駆け回っている。魔物に遭遇しても速攻で倒すので止められない。そのおかげで俺のレベルも3まで上がったので問題はないが見失わないように気が気じゃない。
レベルと言う概念はゲームと同じく存在していて魔物を倒せば経験値が入る。パーティーを組んだ者が倒すと全員に分配されるようだ。ホシコは俺の配下だが、それとは別でパーティーを組んだり外したりできた。
「ホシコ!! 休憩にするからいったん戻ってこーい!!」
「了解っす!!」
腹が空いてきたので休憩にする。
収納袋から食料のパンと果実、水を取り出してホシコとお食事タイムだ。
「しかし、一向に人影一つ見当たらないな。ここはド田舎か?」
「確かにそーっすね。けどまだ日も高いし大丈夫っすよ。もし今日中に休むところ見つからなくて野営になってもホシコがマスターを御守りするっす」
「ホシコは頼りになるな」
「ほ、褒め過ぎっすよマスター……にひひ」
ガサガサッ
ん? 今なんか物音がしたような……。
「あ、魔物っす!! 任せて下さいっす!!」
「いや、ちょっと待って!! 試したいことがある」
先ほどからホシコが魔物を全て倒してしまうので試していなかったが……。
『新・世界創造』のゲームの中では魔物を支配下に置いて集めるのが好きだったからな。




