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わるいこと

                 第一章 英雄、地獄に落ちる

                    Ep.1 わるいこと


「ママ、わるいことってどういうこと?」

自らの胸元に背を預けた小さな顔が見上げる。

「んー、そうね。友達をいじめたり、おもちゃを盗んじゃうことかな」

「じゃあわるいことをしたらぼくはじごくにおちちゃうの?」

「悪いことをしてもしっかり謝って正しく生きれば、閻魔様は許してくれるよ。だからもしベールが友達にいじわるしちゃったら、ちゃんとごめんなさいをしようね」

「わかったよ!ぼくはてんごくにいく!」

まだ5歳になったばかりの息子がもう死後のことを考えているのが、ライナには複雑だった。

外から鐘の音が響く。それを聞くなりベールは手にとっていた「じごくのえんまさま」の絵本をその場に置き、城の外へと駆け出した。


城の門が開く。城壁の上から高鳴る鐘の音が響く。

「戦士達の帰還だー!!皆で出迎えよ!」

重厚な鎧を身に纏いし白馬に乗った戦士達が続々と門をくぐる。周囲に集まった大勢の住民が、視線を上げる。

「お帰りなさい!ありがとう!ウォーカー!」

国の民達の祝福の声が、響き渡る。先頭を走る男は、右手の拳をあげ周りの声に応える。

歓声が遠ざかる城門近くで、ウォーカーは自分に向かって走る小さな影を見つけた。

「パパーー!!」

「ベール!!」

白馬の背から身を滑らせ、駆け寄ってきた小さな体を抱きしめる。

「ただいま、ベール。寂しい思いをさせてごめんな」

「ぼくはだいじょうぶだよ。ママがいっぱいあそんでくれたからね」

遅れてくる足音に、顔を上げる。4ヶ月ぶりに映る妻の顔は以前と変わらない。

「お帰りなさい、ウォーカー」

「ライナ…ただいま、待たせてすまなかった」

「怪我はしてない?」

「大丈夫だ。怪我人は多くでたが誰一人置いてきてはいない」

優しい温もりがウォーカーを包みこむ。久々の家族で過ごすこの時がウォーカーにとって何よりもの幸せだった。


「国王様、南領土地域奪回作戦、無事完遂致しました」

片膝をつき、目の前に佇むオルデン王国国王クロンに、今回の作戦完遂の報告を行う。

「長旅ご苦労だった。本当に良くやってくれた。ありがとう」

「いえ、私一人の力ではございません。仲間達の助け無しでは今回の成功はありませんでした」

「怪我した者達は医療班で当分面倒をみる。お前も少しばかりゆっくり休んで、ライナとベールの傍にいてやりなさい。英雄もずっと気を張ってばかりじゃ務まらんじゃろ」

「お心遣いありがとうございます。父上」

義父である国王に頭を深く下げて、その場を去る。

ライナはクロン国王の一人娘である。幼くして母親を失い、王国中に見守られて育った存在だ。17歳の時オルデン王国の兵士として軍隊に入ったウォーカーは、当時2歳年下のライナと出会い一目惚れをした。

それからの日々は、幾度もの戦を越え、気づけば隊を率いる立場になっていた。その栄光を讃えられ、国王様からライナを嫁にしてはくれないかと話を受けた。

「この命に賭けて一生ライナさんを守りぬくと心から誓います」

そうして結婚をして、二人の間には男の子のベールが生まれた。守りぬく大切な命が1つまた増えた。

城の廊下を歩き、ふと窓の外を眺める。

「雲行きが怪しいな、そろそろ雨が降ってくる頃か」

黒ずむ空を横手に、シャンデリアで照らされる広間を通りぬけ、最愛なる妻子の元へ向かう。


草木が揺らぎ始めた。先程まで静かだった空が、辺り一帯に音を響かせる。激しい雨が降りだしたのだ。

手当を受ける者、休む者、なお監視を続ける者。城は、戦の後の静けさに包まれていた。

「パパはいっぱいわるいやつをたおしたんだよね?」

「あぁ、パパ達の国をいじめようとする奴らを懲らしめてきた」

「パパにたおされたひとはみんなじごくにいくの?」

「地獄?」

ライナと一瞬目を合わせる。その視線は、手元にある絵本を見た。

「そうだな。悪いことしたからみんな地獄行きかもな」

笑みを浮かべながら、少し大袈裟な表現で息子の顔を見る。その顔は少し怯えているようだ。

「でもごめんなさいしたらみんなてんごくにいけるんだよね」

「そうだな、パパが倒した人がみんなこれから真面目に過ごしたら、もしかしたら神様が見逃してくれるかもな」

息子の顔が少し明るくなったようだ。

「ベールは大きくなったらママを守ってあげるんだぞ」

「もちろんだよ。いまでもママをまもってあげるんだ」

「ははっ、それは頼もしいな。ベールは天国に行けるよ」

「パパはみんなのヒーローだから、パパも天国。ママもいつもみんなに優しくしてくれるから天国だね」

こんな話を、五歳の息子とするべきではない。

そう思いながらも、息子の明るい笑顔に、頭を撫でて応えた。

降り続ける雨音に紛れ、何やら遠くから鐘の音が聞こえた気がする。

(何か今聞こえたような..)

腰をあげ、部屋の窓に近づいていくその時だった。部屋の廊下から騒ぎが聞こえる。体の向きを変えドアを開ける。廊下を走る兵士を一人捕まえる。

「何の騒ぎだ!どうしたんだ!」

「あっ、隊長!!探してました!!大変なんです!!」

「アルバ軍が、城を攻めてきたんです!!」





この作品に目を通して頂き、本当にありがとうございます。

執筆は初めてで拙い文章表現ではありますが、面白い作品を作れるよう努力致します。

今後とも「英雄地獄譚ー国の英雄は地獄に堕ち、地獄を守るために抗うー」を何卒よろしくお願い致します。

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