猫と侵入
準備を終え、オレ達は大坂の町を出て、森の中に向かった。
「猫丸、数珠丸恒次を探しに行くぞ」
「ああ。ヤツら、逃げてるなよ」
時間をかけ、目的の森の中に着くと、地図を広げ、探し始めた。
「如月が描いているには、洞窟の中に連中が潜んでいるみたいだが……」
「あれやないか⁉」
目の前に見えた洞窟には、例のイルカ型のタイムマシンがあった。
「あの奇妙な物……見つけたぞ! 猫丸!」
「これだな」
「探しに行くぞ」
以前、中に入った事はあるので、ハシゴを登り、ドアを開け、中に入った。
「猫丸、あそこだったか?」
「そうだ!」
八郎が指さしたドアの中に三日月宗近や他の刀を見つけたのだ。
「入るぞ」
オレがドアを開け、中に入ると、そこには数振りの刀があった。
「少ないな」
「前ほどは、集めていない様だな」
八郎は座り込み、その内、一振りの太刀に目を付けた。
「……猫丸。これだ」
「えっ⁉」
八郎が目を付けた太刀には、数珠が巻き付けられている。
「柄に数珠が巻き付けられている太刀、これが数珠丸恒次だ」
「そうか! じゃあ、これを!」
「ああ。後、他の刀もだ。名刀かどうかは分からないが、全て手に……えりんぎ?」
「くそっ! 違う‼」
エリンギは、一振りずつ刀を鞘から抜いている。
「これも違う‼」
「……エリンギ。なんしょん?」
「ん? 見たら分かるだろ。錆びて抜けない刀を探しているだけだ」
「錆びて抜けない? それでは、刀としての価値も意味も——」
「それを使って、南蛮かぶれの頭を殴る為だ。何か文句あるか?」
懲りないな。エリンギ。
「いや、えりんぎ。大きさを考えるのだ」
八郎は冷静にツッコんでいるが、そこじゃない。
「エリンギ、ヤツら金儲けで盗んでいるんだろ。そんな刀——」
「あっ‼ これ、抜けないぞ‼」
「「ええっ⁉」」
確かにエリンギが引っ張っているが、抜けない刀がある。
「いや、待て。抜けんだけかもしれん」
オレがその刀を抜こうとしたが、刀は抜けなかった。
「……抜けない」
「本当に抜けないのか?」
八郎も全力で抜いてみるが、結果は同じだ。
「抜けないのか……」
「くっくっくっ、待っていろ。南蛮かぶれ」
エリンギは上機嫌だが、八郎は気になる事が、
「何故、抜けない刀が?」
「そんな事は、どうでもいい。とにかく、この刀を使って南蛮かぶれの頭を割るぞ‼」
相変わらずのエリンギだが、それより気になる事が、
「エリンギ。重くないか?」
「ん? 重くないぞ」
と言いながら、エリンギは刀を背中に背負っているが、その刀は約一メートルぐらいの大きさの大太刀だ。
「バカ猫! ボンボン! 刀を持ったか⁉ 逃げるぞ‼」
「へいへい」
「数珠丸恒次は見つけたのだ。早く逃げるぞ!」
刀を持ったオレ達は部屋を抜け出して、イルカ型のタイムマシンから外に出る事に成功した。
「上手くいったな! 八郎!」
「猫丸、油断は禁物だ——⁉」
オレ達が少し外を走ると、周りが急に明るくなった。
「くっ!」
「遅かったか!」
周りにライトが置いていて、オレ達がいる場所は昼の様に明るい。
そして、よく見ると、二人組の男女がいた。
「また私達から盗みに来たの?」
「今度こそ、渡しませんよ」
二人組は正義の味方っぽいポーズを決めている。
「お前達! 久しぶりだな‼ キタアカリとインカのめざめ‼」
キタアカリとインカのめざめと言われた二人はずっこけて、
「違うわよ‼ メイクイーンよ‼」
「同じく男爵です‼」
ホットパンツに仮面の女の子メイクイーンと、Tシャツにジーンズでマスクをしている男の子、男爵の二人が出て来た。
「ちょっと! あんた達‼ 私達の数珠丸恒次をどうするつもりなの⁉」
「当然! 八郎の考えた通りにする‼」
「わ、私は……」
八郎は少し戸惑ったが、
「上様に献上する‼ それだけだ‼」
刀を構え、凛々しく言った。
「そんな事、絶対にさせないわよ‼」
「それに、その大太刀をどうする気です⁉ 何故、猫の背中に⁉」
男爵がエリンギの背中にある大太刀を指さしながら言った。
「ああ、これか? これで南蛮かぶれの頭を殴り、殺す為だ。文句あるか?」
エリンギは嬉しそうに喋っている。嬉しそうに言うな。
「また喋ったわ‼」
「何故、猫が喋るのですか⁉」
相変わらず、二人は驚いているが、エリンギはお構いなしに、
「この錆びた刀は意味が無いだろう。俺が有効利用に使ってやるよ。お前達は、このボンボンが持っている数珠丸恒次を持って帰るんだな」
アクビをしながら、エリンギは八郎を指さした。
「何を言っているのだ⁉ えりんぎ‼ これは絶対に渡してはいけないのだぞ‼」
「それは抜けるだろ。俺は、この抜けない刀を使って南蛮かぶれを——」
「どーでもいいだろ‼ エリンギ‼ 数珠丸恒次もエリンギの刀もオレが持ってる刀も全て渡さねえよ‼」
オレの刀を置き、オレが抜刀すると、二人も身構えて、
「渡さないなんて、言うわね」
「お前達には、三日月宗近の件があるのですよ!」
「そうよ! あんた達が巻き上げた三日月宗近も取り返して、私達の物にするのよ‼」
ポーズを決めたメイクイーンは、オレを指さしているが、
「三日月宗近は渡せるか‼」
だって、三日月宗近はワケあって、今、オレが持っている短刀猫丸になったんだから……。そのワケは言えない。絶対に言えない。
「だったら、あんた達を倒して、巻き上げた名刀も全て取り返すわ‼」
「覚悟しなさい‼」
二人が向かってきた。
「来るぞ‼ 八郎‼」
「分かっている‼」




