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09話 異世界で初遭遇する人間が運命の相手とは限らない




 無事にケツァルコアトルを撃破し、俺達は再び悠々とした空の旅に戻ったのであった。

 一応、地上にはあんなのが居ると言う事が判明したので、警戒レベルは上げているけども、だからと言って旅を諦めた訳では無い。むしろ、ドラ子達にも育てる幅が出たという事だ。

 強くなったと言っても、うちの子達はまだまだリトルドラゴン。立派なドラゴンになるには、まだまだ時間も経験も必要だという事だ。


 そんな感じで適度な休憩をとりつつ、適当にぶらぶらと集落でもありそうな場所めがけて飛んでいる。

 ……別に飛んでいる方角に集落があるとか、そういう根拠は無い。完全にあてずっぽうな気ままな旅である。


 でも、俺達の旅はこれでいいのである。

 特に目的がある訳でもないし、是が非でも集落に辿り着きたい訳では無い。というか、あったらいいな~という感覚でいる。

 そんな事を思いながら飛んでいると、唐突な出会いがあったのであった。


 ……まぁ、出会いというレベルのものではなかったのだが。


 バッサバッサと羽ばたいて飛ぶセラフェイムの背に寝ころびながら周囲を見渡していると、ピキーンと俺の中のアラームが点灯したのだ。

 ケツァルコアトルの件があったから俺は膨大な魔力でもって周囲500メートル程度に薄いレーダー網みたいなものを張っている。そのレーダー網に反応があった。


 1キロ以内だから、目視でも確認可能。

 ささっと視力を強化してその方向を睨み付けると―――


『……人がいる!』


 そう、それは俺の知る知的生命体……人間であった。……あくまで見た目は。

 ただし、その服装は俺の知る時代背景のものとは違い、鎧……ローブ……剣……盾……杖……まるでファンタジーゲームにでも出てくるような格好の者達であった。


 うん。

 ドラゴンとかいるから予想はしていたんだけど、この世界って某国民的RPGみたいな世界観だったのね。

 人がいたという感想よりも先に、それが出るあたり俺も大概だな。


 とは言え、人間である。

 頭と胴体と二本の腕があり、ちゃんと二本の足で歩いている。ファンタジーな服装は目を瞑るとして、きちんと文明もあるみたいだ。

 そこは非常にホッとしました。


 改めて確認してみると、ファンタジー服の者達は四人組。外見だけで判断すると、軽装な鎧を身に着けた剣士の男が一人、全身鎧を纏った体格の良い戦士風の男が一人、僧侶みたいなだぼっとした服を着た女の子が一人、次はとんがり帽子にマントといういかにも魔法使いですという女の子が一人。

 ……実にオーソドックスなパーティ編成である。まぁ、顔はイケメンや美女という訳でもなく、普通と言った感じか。この辺は好みにもよるだろうけど。


 が、気になったのはそこではない。

 彼等が対峙している存在が問題なのである。


名称:???

性別:♂

種族:魔獣

   ゴブリン

HP:18/20

MP:1/1

筋力:N+

魔力:P

耐久:N

敏捷:N++


 うん。見た目は緑色の角の生えた猿っぽい生物。イメージ通りのゴブリンなのはいい。

 ただ、なんだこのステータス。

 Nって何なの、Nって!?


 確か、浮島で最底辺の魔獣のステータスがGだったんすよ。それよりも更に下ってどういう事よ。


 そして、その対峙している人間達のステータスも問題であった。


名称:???

性別:♂

種族:人間族

HP:10/15

MP:1/1

筋力:N

魔力:R

耐久:O

敏捷:N


 とりあえず、チームリーダーっぽい剣士君のステータスです。


 弱ぇぇ!!

 ゴブリンより弱いとか、どういう事よ!! 


 ちなみに、四人組のステータスはコイツよりも多少上下するくらいで、ほぼ変化は無い。

 ひょっとしたら、そもそもの基準が浮島の生物達とは違うのではないか……と思って見ていると、戦い自体も非常にもっさりとしていて、全然強そうに見えない。

 なんというか、ゲームの戦闘画面とかでスピードレベルが最低になっているとか、そういう感じと言うべきか……。見ていて、イライラする。


 この四人に対して、対峙するゴブリンは二体。つまり、数では勝っているのだが、戦い自体は劣勢である。

 試しに声を拾ってみると……


「くそぅ! なんてすばしっこい奴等だ……攻撃が当たらない!! ケン、お前なら当てられるだろう!!」

「ゴラム! お前は下がるんだ。マリエとソフィの防御を頼む!! それとマリエ、早く援護してくれ!!」

「うええん! 詠唱の集中が出来ないよ!!」

「お、落ち着いてマリちゃん! はい、深呼吸!!」


 剣士が振るった剣はスカッと空振りし、戦士が振るった斧はそもそも届いてない。

 魔法使いは必死で魔法を発動しようとしているが、そもそも既にMPが0である。詠唱も何も、魔法を撃つ事すらできんだろうアレ。ちなみに、MP自体はこの世界の生物なら全員最低“1”はある。魔法使いとなると、さすがに10程はあるみたいだが最底辺の魔法を数回使用したら打ち止めだろう。

 俺のマジックガンは最低の威力のヤツで10を使用するから、比較するのは無理だ。


 どうも普通に言葉が分かるみたいなので、そこは良かったとするが、なんなんだこのへっぽこすぎる戦いは。

 話を聞く限り、剣士がケン、戦士がゴラム、僧侶がソフィ、魔法使いがマリエとのことだ。

 ……なんかどうでもいいけど。


「がうー」

「きゅー」

「ぐうー」


 ドラ子達も戦いが見えたのか、この様子に戸惑っている。

 ちょいと試しにレーダーの範囲をぐっと広げてみると、いくつかの魔獣が探知に引っかかる。

 それによると、大体の平均がL~N。たまに強いのがJ~Kクラスだったりするが、それでも浮島のキラーバグより弱い。つーか、赤ん坊の頃のドラ子達より弱い!

 ……ちょっと前のケツァルコアトルとの戦いって何だったんだろうか? あのレベルがうようよしているのではないかと警戒していたのが馬鹿みたいである。


 愕然としながら戦いを見守っていると、なんか負けそうになっている。


「く……くそぅ、ここまでか」

「ちくしょう仕方ない! 俺が囮になるからお前らさっさと逃げろ!」

「そ、そんなゴラム!?」

「へっ! 楽しかったぜ。お前らとの旅……だが、どうも俺の旅はここまでだ」

「そ、そんなぁゴラちゃん嫌だよ!」

「アタシ……本当はゴラちゃんの事……」

「え……マジ?」

「お前だけを犠牲にはしない! 俺も残る! マリエとソフィは早く逃げるんだ!!」

「アタシ……本当の本当はケンの事が……」

「実は私も……」

「おい、どっちが本当だ!?」


 とまぁ、こんな感じで茶番が繰り広げられている。

 茶番と言いつつも、やっている本人たちは本気なんだろうけどね。


 ……もういいや。

 初めて会った人間がいきなり殺される瞬間なんて見たくないし、手を貸すとしましょう。


「がう?」

『いや、お前らは待機してろ。俺がササっと終わらせる』


 ドラ子達を手で制すと、俺はその場からふわっと浮き上がり、上空からへっぽこ剣士たちに襲い掛かろうとしているゴブリンに照準をつける。


『リボルバー』


 人差し指を銃口に見立て、BANGと魔力の弾丸を撃ち出した。

 ただのマジックガンであるが、名前を言った方が格好良いので、言うようにしている。何よりなんかスッキリするし。


 撃ち出された魔弾は、一瞬で頭部を消し飛ばし、その背後の地面に大穴を空ける。……うん、やり過ぎた。

 突然今まで襲い掛かろうとしていた相手の頭が無くなり、ポカンとしている様子のへっぽこ剣士たちはほっといて、もう一匹に狙いをつける。

 もう一匹は危機を感じ取ったのか慌てて逃げ出そうとしているが、もう遅い。


『ブーメラン』


 魔力をくの字に曲がった刃物状にして、それを逃げようとしているゴブリンに投げつける。別にカッターでもナイフでもいいんだけど、投擲する刃物という事でこれが浮かんだのだ。別にブーメランは刃物じゃないんだが、子供の頃に見た赤い巨人の頭に付いているアレが原因だろう。

 だが、ブーメランと名付けたのは伊達では無い。一見大きく外れたように見えた魔力の刃であるが、そのまま大きく旋回して命中。スパっとゴブリンの身体を両断する。ついでに付近の木々もスパっと両断されて、時間差でドカドカと倒れていく。


 ……うん、やり過ぎた。




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