No.3 シテン
どうも鬼無里です。
今日はなんとかその日のうちに投稿ができました。
今回は前回のようなバトルものとは違い恋愛系?です。
なお、推敲を全く行っていないのでかなり読みにくいかもしれません。
駄文をどうかお許しください。
オーガを倒した後、俺は索敵範囲を1,000mにまで広げていた。
集中して気配を探っていると、
「……ワーオ。何人いるんだ?少なくとも三十人以上いるな。」
魔物とは違う気配を放つ存在。つまりはヒューマン、ビースト、まれにエルフなど。
そんな気配ばかり。
しかし、その全員がかなり気配を薄めている。
さっきオーガを倒す前に、かなり強めの殺気を放ったから多少の揺れはあるが、これだけのスキルを持っているのは間違いなく暗殺者。
……とうとうあのギルドは俺を殺しに来たか。まあ、喧嘩は結構売ってたし、危険人物ではあったからな。
「……人を殺すのは、あんまり好きじゃあないけれど。」
まあ、でも。これだけの人数相手なら虐殺しか選択肢はないかな。
「ああ、そうだ。――シテン。時間切れだ。」
忘れていたことを今更思い出した。少しばかりオーガや暗殺者どもに気を取られ過ぎていたようだ。
ちなみに、オーガは剥ぎ取った後、その辺りに放置しておいた。血溜まりを作ってしまっているので正直これ以上は汚れるから近づきたくない。
俺はそのオーガに突き刺したナイフを再び手に取った。
もっとも上手に気配を隠し、最も俺に近づいているシテン――そいつのいる木を目掛けて、オーガの血がべっとりと付いたナイフを二本とも投げつけた。
「!!」
「お~いい切れ味。流石は『斬魚』のヒレと『切り裂き狼』の爪から生産しただけの価値はあるな。」
結構な金がこの二本のナイフにつぎ込まれていたりするが気にしない。
『斬魚』。魔物としてのランクはA。特徴的な大きなヒレは、そのあまりの切れ味で巨木すらも斬り倒してしまうといわれている。
『切り裂き狼』。ランクはA~SS。冒険者が出遭ったら身に纏っている鋼の甲冑ごと真っ二つに切り裂いてしまうとおそれらる爪を持っている。
あれだけ筋骨隆々だったオーガの肉体を、ていうか首筋の筋肉――を易々突き刺せたことから分かるように、俺が投擲した二本のナイフは、有象無象に伸びている木の枝を紙テープを切るが如く伐採していく。
俺もそれが目的。
シテンを直接狙うのではなく、その足場と為り得る枝を全て切り落とす。
すると、黒いローブのような布を纏った大きな人影が気の上から降りてきた。
――というか、枝を切り落としたので落ちてきた。
まるで何事もなかったかのように静かに着地をするあたりはさすがのシテンというべきか。
顔はさらけだされており、特徴的な丸耳が片方だけ頭についている。髪の毛は月の出ていない闇夜のごとく黒く、後ろでポニーテイル気味にまとめられている。表情は無表情。
黒い布の切れ間から見える中の服装は軽くて動きやすい革でできた軽装備の類に入る鎧を身に着けており、武器の類は隠しているのか表面上は見当たらない。
そして俺はシテンと相対する。
「“ヨウ”さ――」
「――シテンさん。今回はどういった経緯で僕を尾行したのかを詳しく説明してもらえると助かるんだけど。」
先に口を開こうとしたシテンを遮って質問をぶつける。
最初の呼びかけで姿を現さなかった時点で、もう無駄な応答する意味は失せた。
相手のペースに合わせる必要もない。
だから、こっから先は基本ずっと俺のターン。
「“ヨウ”さん。どうか私の話を聞いてください。」
「……あのさ、別に僕は脅しているわけじゃないからね。ちゃんと話は聞くつもりだったか安心してね。それに、シテンさん。僕に敬語は使わなくていいからね。シテンさんの方が年上だし、身長も高いし、冒険者としても先輩だし、何より僕よりランクが高い。だから、呼び捨てで構わないし敬語なんてつかわないでもっと気軽に話しかけてください。」
「……いえ。今回は、今回ばかりはそういうわけにもいきません。」
うん?これは何かしら後ろめたいことでもあるのだろうか。シテンは俺よりも無表情でいるのが上手いので今何を思っているいるのかは、表情からは読み取れない。
しかし、いつもよりも若干シテンの雰囲気が落ち着かない。
気配が揺らいでいる印象を受ける。
そうだな。最も近い感情は……興奮か?
「“ヨウ”さん。」
どこかたどたどしい。
「――いえ、”ヨウ”様。」
「様?」
「今回は“ヨウ”様にお願いしたいことがあり、このようにして森の中まで尾行いたしました。」
“お願い”ねぇ。
「……それは、B+ランク冒険者、『片耳の剛獣』シテンとしてのお願いですか?」
多分違うな。
「いいえ違います。」
ほらね。
「暗殺ギルドの一員、『闇夜の猛獣』シテンとしてのお願いです。」
やっぱりね。……だけど内容はさっぱりだな。
思いつくこととしたら……自殺命令か。
しかし、だとしたら。そこまで危険視されているのならこんな風に話すことはせずに、いきなり背後からでも襲い掛かるはずだ。
じゃあ、いったい何なのだろう。
不意に嫌な予感がした。
それはなんとなくとしか言えないような不確かなものだったが、このお願いがロクでもないものだと思った。
「――“ヨウ”様。」
そんな俺の心境を知ってか知らずか、――いや絶対に知らないだろうが、シテンが神妙な雰囲気で口を開いた。
「どうか、私たちの暗殺ギルドのギルドマスターになってもらえないでしょうか?」
「は?……え!?」
絶句した。それはつまり。ていうか何故に?
そんな言葉を言おうとしたが上手く口にできない。
「――なんで――」
「そしてこれは私の個人的なお願いなのですけれど」
やっとのことで質問しようとした俺を遮って話を続ける。
あれ、ずっと俺のターンは?
「私のご主人様になっていただけないでしょうか?」
シテンは顔を赤く染めてそう言った。
その言葉を聞くと同時に俺は反射的にシテンのことを蹴り飛ばしてしまった。
それはもう木にぶつかるほどに。
かなり思いっきり。
混乱した頭では仕方がないことだろう。
いやな予感は当たっていた。
暗殺ギルドのギルドマスター。
そんなものになれと言われる異世界人がいるか!!
お粗末さまでした。
次回の投稿は少し遅れます。申し訳ありません。
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黒い布の切れ間から見える中の服装は軽装備と呼ばれる、軽くて動きやすい皮でできた鎧を身に着けており、
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黒い布の切れ間から見える中の服装は軽くて動きやすい革でできた軽装備の類に入る鎧を身に着けており、
に改稿。