ep16-4 激闘! 意地と意地とのぶつかり合い!!
最初は手を抜き力を温存しつつ勝てると思わせる!!
「ダークスティックウィップモード!」
計算をしつつあたしはダークスティックを振るう。
襲い掛かる鞭をブリスはステッキを使って弾くとそのまま後ろに飛び距離を取る。
いつもの、そして当然の流れという感じであたし対ブリス、ヴァーンズィン対カレッジという組み合わせで戦いは始まった。
二対二、互角の戦力……ふふふ、その均衡が崩れる時こそあいつらの最期よ!
「無駄よオプファー、あなたではわたしに勝てない、それはあなたが一番よく知っているはずよ?」
ムカムカッ! 作戦のため今日は舐められている方がいいのだけど、どーにもこうあからさまに『あなたよりわたしの方が上ですけど何か?』的な態度を取られると腸が煮えくり返る!!
「調子に乗ってんじゃないわよ、ブリスぅ!!」
カチンと来たあたしはそのままダークスティックを振るう、が、その攻撃も容易く防がれてしまう。
「なによ! ちょろちょろ避けちゃって! 臆病者の卑怯者!!」
「あなたが遅いだけよ! ふんっ!」
「あうっ!」
ブリスはあたしのダークスティックを手刀で弾き飛ばすと同時に体を回転させ鋭いハイキックを繰り出す! 咄嗟にガードするも衝撃に耐えきれず吹き飛ばされ地面を転がる。
痛たた……。ブリスもなかなかどうして、格闘能力は高いのよね……。でも、おかげで再び冷静にはなれたわ、よし、このままかなりのダメージを受けたふりして――
「ってちょおおおっ!」
うずくまるあたしの顔面(!)めがけて、追撃を加えるべく繰り出されたブリスの足が迫っていた。あたしは慌てて体を起こすとなんとかそれをかわす。
危なっ! ブリスってば容赦ないでやんの。これは手を抜いてる場合じゃないわね……本気でやらないとファウルハイトが介入してくる前に致命傷貰っちゃうかも。
「戦いたくないみたいな態度してた割にはそういうことしてくんのねあんたは! やっぱりあんたは本質的にあたしと同類、敵を甚振り倒して快感を得たいサディストなのよ!!」
「わたしは……、あなたみたいに他人を傷つけて喜ぶ趣味なんてないわ!」
ブリスは否定するけどその表情は明らかに快感を得ているものだった。わかるわよ、ええわかるとも! 正義の魔法少女として悪の魔女を叩きのめす。あたしがどれほど夢見たことか! 楽しいわよね? 楽しくないわけないわよね!? ブリスに変身してるどっかの誰かさん、あんたもそうでしょ? 『マジカルブリス』に選ばれる前、あたしと同じように魔法少女に憧れていたのでしょう? 違うとは言わせないわ!!
「嘘つき! あんたを倒し、化けの皮を剥いでやるわ!!」
あたしはダークスティックを構え直すとそのまま突進する。
「させないっ! ステラシュート!!」
ブリスのステッキから放たれた光の波動があたしの動きを阻害する。
「くっ……!」
予想以上の威力に一瞬怯んでしまうが、すぐに体勢を立て直すと、あたしも負けじと魔法を放つ!
「ダークネスウェイブ!」
「バリア!」
衝撃波はブリスを捉えるも、彼女が張った防御壁によって防がれてしまう。
ちいっ! でもこれでいい。攻撃に、防御に、魔法を使えば使うほどあいつの力は減っていくのだから。
「何度やっても無駄よオプファー、いい加減負けを認めなさい!」
ブリスがそう言いながら再び突っ込んでくる、けど、こっちだって、これまでの戦いを通じてある程度は慣れてきたのよ!
「そっちこそ! いい加減に負けを認める頃合じゃないの!?」
あたしはブリスの蹴りを紙一重でかわすとダークスティックを振るう。だけどまたしても簡単に避けられてしまう。そこから繰り出される反撃をあたしは地面を転がるようにして回避する。
「あなたがわたしに勝つことはできないわ。どれだけ努力しようと、絶対に」
余裕を見せているつもりか、あるいはポリシーでもあるのか追撃を加えてくることもなくブリスは言い放つ。
「さっきから何を根拠にそこまで自信満々に言えるわけ!?」
吠えるあたしにブリスはふっと笑って髪をかき上げると、「あなたは悪の魔女、わたしは正義の魔法少女よ? 正義は必ず勝つ、それは普遍の真理だわ」と自信満々に言い放った。
こ、こいつ! 正義が必ず勝つですって? 冗談じゃないわ! 確かにアニメの世界ではそんな風に語られてることが多いけど、現実にはそんなの全然通用しないのよ!? 結局のところ強者だけが生き残る。どんな綺麗ごとを並べようとそれこそが真実だわ!!
しかし、あたしが反論の言葉を口にする前にブリスはさらに続けてくる。
「それに、そうじゃなければ悲しすぎるじゃない。だからわたしは負けられないの、いつも言ってるでしょ? マジカルパワーで幸せ守る、それがわたし魔法少女マジカルブリス!」
ぶわっと一瞬ブリスの髪が広がる、それと同時にその身体から眩い光が放たれた。
これ……は……!
ブリスが時折発動させる未知の力だ。E作戦の時、カレッジが瀕死に追い込まれた時、ブリスはこの力を使いピンチを乗り越えてきた。しかし、今はそこまで追い詰められているわけでもないのに、どうして……。
「どう? これがわたしの特訓の成果、ずいぶん驚いたみたいね?」
あたしの表情から思考を読んだらしいブリスが不敵な笑みを浮かべる。
あたしは出来うる限り平静を装いつつ答えた。
「た、確かに少しは驚かせてもらったわ、だけどそんなの想定済みよ!」
そうよ、わかってたことじゃない! 何をビビってんのよあたしは! それにこれは大チャンスよ? 今ブリスは手持ちのカードをほぼ見せている状態、対するこちらは……。
「あたしの糧はあんたへの憎しみ! あんたがそうやって輝きを増せばあたしも比例して強くなる!!」
あたしの身体からドス黒いオーラが溢れ出る。そうよ、“想い”の力ならあたしにだってあんのよ! 我ながらなんてネガティブなパワーアップの仕方なのかしらね……。でも、今はそんなことどうでもいいわ、大事なのは……。
「殺してやるわ、ブリス!」
初めて――無意識にではあるけれど――あたしは、その言葉を口にした。
「……!!」
あたしの言葉にブリスが目を見開く。そして、何かを言おうとするも、それより早くあたしの突き出した腕がブリスの眼前へと伸びていた。
「んあっ!」
どこか喘ぎ声にも似た声を上げ何とか状態を逸らしブリスは攻撃をかわす。やる……! そう思った瞬間腹部に衝撃! ブリスはブリッジの要領で手を地面に付き、がら空きになったあたしの腹に蹴りを入れてきたのだ!
「ぐぶぅ……!」
しかし、あたしは苦痛に耐えながらもう片方の腕でブリスの脚を掴むとそのまま彼女を空中へと放り投げた。「きゃああ!」悲鳴を上げるブリスだが、彼女はすぐに体勢を立て直すと空中で一回転して着地する。
「オプファー、あなたの憎しみ、その根源がどこにあるのかわからない。あなたがどうしてそこまで正義を憎むのか……。ただ一つだけ言えることがあるわ、あなたは暗黒魔力に蝕まれ飲み込まれている、あなたのその殺意それはどこまでがあなたのものなの!?」
こいつ、何を……!? 問いかけられあたしは一瞬戸惑うがブリスが云わんとしていることは分かる。要するに、あたしもオドモンスターみたいなものじゃないかと言っているのだ、暗黒魔力に操られ本来の意志に反して悪事を行う悲しき怪物、あれと一緒だと……!
ふざけるな……! ふざけるなぁぁ!! 怒りと共にあたしの身体が闇の力で満たされていくのがわかる、それと同時に理性が失われていく感覚も。
「あたしは飲まれてなんていない! 勝手に人を可哀そうな被害者扱いしないでちょうだい!」
そうよ、これは確固たるあたしの、あたし自身の意志! 確かに最初のきっかけはクリッターに騙されたこと、正義の魔法少女との戦いなんて嫌々ながらだったわよ? だけどマリス様があたしにこの世の摂理と真理を教えて下さった、そしてブリスとの戦いの中で分かったのよ、正義を気取るブリスだって結局は同じ穴の狢、敵を痛めつけることに悦びを覚えている醜い獣だって。あたしが悪だというのなら、ブリス、あんたも正義の仮面を被った悪魔なのよ! この世界に正義も悪もない、強者が弱者を踏みにじるだけ……。
でも、そんな現実をあたしは変えてやる! マリス様の導きによりアントリューズが支配すれば、世界は変わる!
今魔法少女と呼ばれ正義を語るブリスたちが暗黒魔女と呼ばれるようになり、逆にあたしたちが魔法少女として秩序側、正義側へと変わる。その日が訪れるのはそう遠い未来のことではないわ、あたしはそう確信しているのよ。
だけどその前にまず、最大の障害であるあんたを排除しなくては……。あんたがいるとあたしたちが正義の味方になる未来なんて永久に訪れないわ。あんたはあたしにとって大きな希望であり、同時に恐るべき脅威、あんたさえいなければ……、そう考えて幾夜泣き腫らしたかも分からないわ……。あんたのことが好きなのに、大嫌い、矛盾に満ちた感情があたしの心を乱し続けている。
でも、もう終わりにする。あんたを倒し、それまでは悪として生きてゆく覚悟を決める……!!
「それが本当でも嘘でも強がりでも、これでわかるわ! 行くよ、オプファー! マジカルパワー全開!!」
グゴゴゴゴとブリスの周囲に光が渦巻く。これは、お得意のマジカルバニッシュシュートね……、最大の攻撃であたしの暗黒魔力を消し去ろうということね。しかし、これこそまさに想定通りの展開! これを凌ぐことさえできれば……!
「う、うあっ……」
あたしはブリスの魔力に気圧されたふりをしつつ(演技半分本気半分というところだけど)口の中で呪文を唱え全身の魔力を一点に集中し幾重もの魔力の盾を形成する。そして。
「あなたの闇、払ってあげる!! マジカルバニッシュシュートMAXIMUM!!」
まるでそこに太陽が出現したかのような輝き! ブリスのステッキから放たれた今までとは規模も威力も明らかに違う魔力光線が真っ直ぐにあたしを捉える!
「センパイ、これはマズいですよぉ!!」
カレッジと手合わせ中のヴァーンズィンが手を止め叫ぶ。演技ではない本物の焦りだ。それほどまでにこの一撃は強烈なものなのだ。
だけど、ふふふ、ヴァーンズィン、あんたまであたしを甘く見ないで頂戴……!
次の瞬間――カッ! ドオオオオオン!! 光はあたしへと突き刺さり、大爆発を起こした。
「センパアァァァァイ!!!!」
轟音の中、ヴァーンズィンの絶叫が響き渡った――。
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