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桃色の想いを君に捧ぐ

 〜モモ〜

「私ね、ナギのこと想ってるよ。昔も今もこれからも、ずっとナギのこと想ってる」

「うん⋯⋯」


 背中にまわされたナギの手のチカラが弱まるのがわかる。


 ナギの心はあの日からずっとあの子のことでいっぱいだ。

 知ってるよ。

 今だって私よりあの子のほうがナギの心を占めてること。


 でも私はそんな君さえ大好きなんだ。

 あぁ⋯⋯涙がでちゃうや。


「君は男の子で」

 グスッと鼻がなって涙で視界がぼやけていく。


「これから強くなっていくんだね」


 ナギが私の服をギュッと握っるのがわかる。


「私は女の子だけど」

 私はギュッとナギの服を握った。


「全然女の子らしくなれないや。けどね」

 通り過ぎてゆく人々は皆忙しそうにしていて、私達が有名人だなんて気づかない。

 私達は隠れるように互いの肩に顔をうずめて泣いた。


 ナギ、あの子にはこんなことしないよね。

 気心が知れてる幼なじみだから⋯⋯。

 そういうの全部、わかってるんだけどね

「私はナギのことずっと想ってる。今までも、今も、これからも。だから、付き合って欲しい」

 『好き』といえないもどかしさ。

 けど、想ってること全部伝えられた。

 もう、後悔なんてないよ。だから⋯⋯


「うん。⋯⋯僕も⋯⋯」


 そんな言葉に喜びが胸に溢れる。

 ⋯⋯はずなのに⋯⋯⋯⋯


「ぐふっ」


 見事なブローをくらってケホケホと咳をするナギ。


 苦笑を浮かべて自分の拳を見つめる。

 つい、反射でナギに腹パンしてしまった⋯⋯。そのことにショックを受けながら、たった今気づいたこの想いを、口にする。


「自分の心に嘘をついてるナギなんて大っ嫌いだから」

「え⋯⋯」

 腹をおさえながら驚いた表情でこちらを見るナギ。

 私がナギの嘘に気づかないとでも思ったのかしら。

 かれこれ十五年も幼なじみをやってるんだから、気づかない訳ないのに。


「嘘つかないでよね。」

「でも、僕はほんとにモモを⋯⋯」


 そんな言葉に心が揺れる。



 このまま彼の手をとって「なんて全部冗談よ。今日から私達カレカノね。うふふ」なんて言えてしまえたらいいのに。


 こんな時に、あの女の笑顔が浮かんでくる。その隣には幸せそうに笑うナギ。

 なによ。私の方がナギのこと想ってるのに私よりナギとお似合いなんて、ほんとに腹が立つ。


 お似合いのカップルって相思相愛だからお似合いなんだろうね〜。昔、ソラがいっていた言葉が頭をよぎる。


 ⋯⋯そうかもしれない。

 相思相愛だから、お互い心から好いているから、お似合いなんだろうね。


「私は嘘をついてるナギと付き合うつもりないから。⋯⋯はやく、あの子のとこに行きなさいよ」


 ソラに話すみたいな冷たい声でそういう。

 好きな人に冷たくするってこんなに辛いものなんだ。

 初めて知った。


 他にも、ナギのことを好きになって初めて知ったこと、たくさんある。

 だから、良かったな、って。たとえ、こんな結果でもナギを好きになれたことは私の人生のなかで宝物だ。


「⋯⋯ありがとう」

「⋯⋯別に」

「ありがとう」

 もう一度そういって顔を上げたナギは吹っ切っれた晴れ晴れとした表情をしてる。

「もうこんなふうに諦めようとしたり、逃げようとしたりしたらダメだからね」

 そっぽを向いてそういう。

「うん!」

 そう元気よくいうナギ。

「はやく⋯⋯」

 もうこれ以上は強がることも出来そうにないから。

「じゃあ」

 切なげな瞳でそういうとためらうことなく、走っていくナギ。


 また涙がこぼれてくる。

 明日仕事中あるのにこれじゃあ目元が腫れちゃうじゃない。


 でも⋯⋯これで良かった。

 不思議とそう思えた。












 〜莉音〜

「⋯⋯し⋯⋯ぬ⋯⋯」

 宿題終わらん⋯⋯。

「れん兄、ごめんね。こんな時間までお邪魔させてもらっちゃって⋯⋯」

 そういって時計をみれば、もう夜の十時を過ぎている。

「大丈夫だよ。うち、一人暮らしだしね。気兼ねなく宿題に集中して。ラストスパート、頑張れ」

 それかられん兄の顔がフッと近づいてきておでこに柔らかいものがあたる。

 な、ななな、これが世でいうデコチューですか⋯!

 恥ずかしすぎるんですけど。

 なんて返せばいいの、これ。

「じゃあ、莉音が頑張れるようにコーヒーいれてくるね」

 余裕のある大人の微笑み。

「う、うん。お願いします⋯⋯」

「そう、固くならないでよ。慣れないならもう一回⋯⋯」

「いやいや、いいよ!はやくコーヒーを!⋯⋯その、コーヒーをいれてきてください」

 そういう私の顔はゆでダコみたいに真っ赤だろう。

 大人なれん兄は穏やかな微笑を浮かべているのに対し、私はゆでダコ⋯⋯。

 恥ずかしくて下を向く。


「じゃあ」

 れん兄が部屋を出ると辺りを静寂が包む。


 なんでこんな時にあいつのことを思い出すんだろう。

 れん兄と話してる時は全然なのに。

 こうやって静かになると、どうしても、考えてしまう。


 あぁ⋯⋯そういえばあいつらはどうなったんだろう⋯⋯







 莉音がそう思っていたその頃。

 某ファミレス店。

「もう、こんなの捨てちまおうぜ。俺達、こんなのがなくたってやれるさ」

 そういって白い歯をみせるユータ。

「あぁ、そうだな。いっそのこと焚き火にでもしようか。っておいユータ、気を確かにしろ」

 そういうネクも相当やつれている。

「ネクがノリツッコミしてるとこ初めてみたかも〜」

 そういうヨウは目が死んでいる。

「はあ⋯⋯。バカなの?お前ら。とっとと手を動かせよな」

 そういうキールは目に涙がたまっている。

「なっ⋯⋯お前なに泣いてんだよ」

 そういってユータが乾ききったお手拭きを手渡す。

 しかしキールはそれをはねのけ

「うるさいな。ほっといてよ。⋯⋯眠いと⋯⋯涙が出ちゃ⋯⋯ヒック⋯⋯出ちゃうんだよ⋯⋯」

という。

「へえ〜。意外と可愛いとこあるね〜」

 ヨウがニヤリと笑う。

「もう十時だ。そろそろ⋯⋯」

 と腕時計を見つめていうネク。

「キールはいつも何時頃に寝てるんだ?もうこんな時間だが」

「六時にご飯。七時にお風呂。八時にはねる!当たり前でしょ」

 眠気のピークで機嫌が悪いキールは怒鳴るようにそういう。

「ぷっ。ワハハハ。ウケ⋯⋯アヒャヒャヒャ」

 もう、みんな眠さと疲れで相当きている。

「ねえ、それってあれ?モモにいわれたからとか?」

「わっ、悪いか⋯⋯」

 そういうキールの顔は真っ赤。

 そんな様子にもうがたがきている四人は盛大に笑い転げる。

「お前ら⋯⋯!」


「お客様方、ほかのお客様の迷惑になりますのでお静かに願います。なお当店はあと数分で閉店となりますのでお早めに退店してください」

 強い口調でそういってきたのはこのファミレスの店員さんだ。


 五人は慌てて店をでた⋯⋯。



 その後このファミレスに「一日滞在禁ず」という張り紙が貼られていたとか貼られていなかったとか⋯⋯





 〜莉音〜

「もう十一時か〜⋯⋯」

「泊まってく?」

 そういうれん兄はやっぱり大人で、私はすぐにゆでダコみたく真っ赤になってしまう。

「えーと⋯⋯それは⋯⋯」


 ピンポーン


「こんな時間に誰だろ⋯⋯」

 そういってれん兄は立ち上がる。

 先ほどの質問から逃げられたことに心のどこかで安堵しながら

「れん兄、気をつけてね!」

 という。

 こんな夜中に訪ねてくるなんて不審者みたいだもん。

「うん」

 そういって優しくニコリと笑むとれん兄は部屋を出た。

 シーン

 また静かになってしまった。

 まぶたが重い⋯⋯ドリル消えろ⋯⋯そもそも学校潰れろおおぉ。

 もう疲れと眠気で頭も正常に働かなくなってくる。

 そんな矢先、携帯がなる。

 エロからだ。

〈莉音ちゃ〜ん♡♡宿題終わった?(๑´•ω• `๑)??

 僕らはファミレス追い出されて今大ピンチだよ〜(٭°̧̧̧ω°̧̧̧٭)莉音ちゃん家すぐそこだし、行ってもいい?(*´З`)〉

〈来るな〉

 私が返信メールを打ったのはわずか三秒のこと。我ながら最速記録が出せたと思う。

「ふう〜⋯⋯」

 またシーンとした空気が私を包み込む。

「うわあぁ、もうっ」

 立ち上がり、部屋を出る。

 廊下の冷たい空気が身にしみて先ほどよりかは気持ちが落ち着いてくる。


 あぁ、私は、やっぱり⋯⋯⋯⋯






 〜れん兄〜

 階段をおりながらどうせフウガあたりだろうと思っていた。

 こんな時間に来るなんてどういうつもりだよ、とイラついた気持ちでいる一方で⋯⋯

 自然と頬が緩んでいく。


 一度は手放してしまったけれどもう絶対に手放さない。

 手放してわかった。

 彼女の存在が自分の中でどれほど大きいか。

 だから、彼女は駒だけれど、隣にいたい。

 誰よりも、そばにいたい。


 小さい頃からいたこの莉音の隣という場所を誰にもゆずるつもりはない。


 鍵をあけ、ドアノブをひねる。


「こんばん⋯⋯」

 言葉も思わず詰まる。

「なんでお前がここに⋯⋯」

「莉音を迎えに来ました」

 そういうのは強い瞳をしたナギだった。

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