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忍者の末裔は忍ばない ~ダンジョン産のアイテムで一般人が化け物みたいに強くなったから、俺も本気を出して良いらしい~  作者: 木塚 麻弥
第4章 新たな階層

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第54話 沙霧 刃

 

 俺はここ1カ月くらい海外のS級ダンジョン攻略を支援していた。とりあえず中ボスを倒すことが出来たから、久しぶりに外へ出てきたところ。


 日本ではシノヴァーズっていう攻略者パーティーが活躍してるってことを配信のコメント欄で教えてもらった。なんでも日本じゃ俺以外唯一のTier 1(ティアワン)、アークナイツのスイが参加したらしい。


 そりゃ活躍できるわな。

 俺と同レベルの最強が加入してんだから。


 シノヴァーズは4人パーティーってことも視聴者が教えてくれた。きっとスイが魔法を詠唱する間、彼女を守るサポーターが3人いるだけ。つまり俺が率いるクロノス・ゼロの脅威にはならない──そう考えていた。



『91階層、突破っすね』


 ……おい、奏多。

 お前、なにをやってんの?


 ダンジョン攻略の様子を配信するサイトでシノヴァーズを検索してみたら俺の妹、沙霧(さぎり) 奏多(かなた)がメンバーにいた。


 顔を隠し、体型を少し変化させる装備を身に着けているが声で分かる。


 間違いなく俺の妹だ。


 ちなみに奏多は政略結婚させられるのが嫌で、男装している。そんなことしなくても俺が何とかしてやるって言ってたのに……。


 装備は男物だし、俺って自称してる。

 まだ男装を続けてたんだ。


 そういえば奏多は、じいちゃんが経営してる富嶽学園に入るって言ってたな。今更何を学ぶことがあるんだって感じで俺は止めたけど、そうか。同じ年に入学してくるスイを仲間にするためだったのか。


 なかなかやるじゃねーか。

 さすが俺の妹だな。


 てことは、残るふたりも奏多が選んだ仲間ってことかな。


 どれどれ──



『シールドバッシュ!』


 ガタイの良い男が大剣を盾にしてモンスターの攻撃を受け止め、そのままスキルを発動させて群がって来ていた小型の飛竜たちを吹き飛ばしていた。


 ほう。コイツいいな。

 盾役も攻撃手もいけそう。


 名前は、ハヤテか。

 なかなか良い人選だぞ、奏多。


 ……ん?


 このハヤテってやつ、魄勁のオーラ出してね?


 忍者なのか?

 いや、足運びは素人だな。


 攻撃の所作にもまだ無駄が多い。でも魄勁は10年以上訓練をした中忍かそれ以上のオーラになってる。なんなんだコイツ。


 誰かに丹田の鍵を開けられた?

 奏多に頼まれて、じいちゃんがやったとか。


 でもそれだけじゃこうはならない。

 かなり上品の丹薬を飲みでもしないと。


 仮にそうだとして、なんでこんな一般人に?

 マジで意味がわからん。



『ハヤテ、足運びが悪くなってる。あと攻撃する時は踏み込みをもう少し強く、地面からの反発を剣に乗せるイメージで』


 シノヴァーズ最後のメンバー。

 ハヤテに指導するこの男も忍びだ。


 それもかなり強い。


 ぱっと見ただけでは強そうに思えない。だけど上忍並みに洗練された歩法と、攻撃時に身体の軸が全くブレていないのを見ると、彼が強者だと分かる。


 こんな奴がまだ日本にいたんだ。

 ちょっとネットで調べてみるか。



 ……えっ。まじ?


 このレンってやつ、深淵《アビス》ダンジョン1階層をソロで踏破したの!?


 複数のSランクパーティーがレイドを組んで深淵に挑戦した時、数体のヘルハウンドに襲われて全滅しかけたという話を聞いて俺は挑戦を躊躇していた。


 俺だけなら敵がどれだけ強くても逃げきることが出来るけど、それじゃ仲間を見殺しにすることになる。かといってソロで攻略なんて……。


 いや。今の俺なら行けるかも。


 忍びの技量としては、たぶんこのレンってやつの方が上だ。でもダンジョン適性を考慮すればどうだろうか。俺の適性率はスイと同じく上限を突破している。


 なんで俺、今までソロで挑戦しなかったんだろう?


 忍びなんて単独行動が基本なのに。

 もしかして俺、ぬるくなってる?


 悶々としながら、俺はシノヴァーズの快進撃を眺めていた。



 ……こいつら、良いな。


 互いが支え合ってるように見えて、実は違う。ひとりひとりがこのダンジョンをソロで踏破できるだけの実力がある。そんな強者たちが完璧な連携をして、最高効率でダンジョンを突き進んでるんだ。

 

「ここに混ざりてぇ」


 本音が漏れた。


 俺の仲間だって弱くない。完璧に俺をサポートしてくれる、素晴らしい仲間たちだ。でも彼らは俺のサポート要員でしかない。


 肩を並べ、共に進む。

 そんな強い仲間がいることを羨んだ。

 

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