第14話 サジタリウス! 起動!①
「よし! じゃあ、潜りますか」
「あぁ! 行こう!」
「行きましょう!」
「じゃあ、索敵始めるから、ついてきて!」
翌日、俺たちは雅を加えた四人でDランクダンジョンに来ていた。
雅はすぐに武器と防具を作ってくれて、装備も万全だ。
一度肩慣らしにEランクダンジョンに潜ろうかと話をしたのだが、雅に「僕の武器が信用出来ないのかい?」と言われてしまったら、もうDランクダンジョンに潜るしかないだろう。
「Dランクダンジョンに潜るのは久しぶりだな」
「そうなんですか?」
「あぁ。今まではDランク探索者のパーティに入れてもらっていたんだけど、僕が入るためにパーティメンバーが一人かけるから、一つランクを落としてEランクダンジョンに潜っていたんだ」
「へー」
「そうなんですね」
確かに、Dランクに普段潜ってたとしても、パーティが一人抜ければランクを下げる必要があるよな。
Cランク探索者を雇うにはお金がかかりすぎるし、雅が今上げている鍛治師のジョブはEランクでも問題なくレベリングできるため、Eランクダンジョンに潜っていたのだろう。
「ふふふ。これでやっとこの子のことが試せるよ」
雅はそう言って愛おしそうに自分の車椅子を撫でる。
「この子? その車椅子のことですか?」
「そう。この子は僕の最高傑作なんだ。名をサジタリウスという」
「サジタリウス! カッコイイね!」
「そういえば、それは自分で作ったって言ってたっけ?」
初めて会った時に雅はそんなことを言っていた。
見た目も普通の車椅子よりもゴツいし、明らかにオーダーメイド品だ。
実際、めちゃくちゃ重かったし。
それに、なんというか普通の車椅子よりメカメカしい。
ロボットアニメとかに出てきそうな感じだ。
名前までつけてるんだな。
「あぁ。タイヤからパーツの一つ一つまで一人で作り上げた僕の最高傑作さ。流石に動力部とかの電気製品は自作できなくて既存品を流用したけどね」
「へー」
「Eランクダンジョンではコスパが悪くて使えなかったが、Dランクダンジョンなら十分に元がとれるし、使ってやってもいいだろう」
コスプレの一環なのかと思っていたが、どうやら、理由があってこんな車椅子に乗っていたらしい。
「そのサジタリウス? は何ができるんだ?」
「あぁ、実はね……」
「三人とも! モンスターがこっちに向かってきてる!」
俺たちの会話を遮るように朱莉の声が響く。
その直後、通路の向こうからモンスターが顔を出した。
犬をデフォルメしたような外見のあれは多分醜犬だろう。
ここは無念のダンジョンだから、無念の醜犬(D)か。
「グギェギェギェ!」
醜犬はこっちに気付き、向かってくる。
犬系は索敵能力が高くて向こうから向かってくることが多いんだよな。
今日は戦闘回数が多くなりそうだ。
(望むところだな)
今日はいつもと違い、雅の武器を装備している。
いつもみたいに簡単には壊れないはずだ。
だから、収入が増える分、戦闘回数が増えるのは願ったりだ。
俺は武器を取り出して近づいてくるモンスターに備えた。
「三人とも、悪いんだが、ここは僕に任せてもらえないか?」
「雅に?」
「あぁ。サジタリウスがどれほど使えるか試しておきたい」
確かに、今まで使ったことがないということはどれほどの結果が出るかわかっていないということだ。
もしかしたらEランクダンジョンでは使って見ていたのかもしれないが、DランクのモンスターとEランクのモンスターでは文字通り格が違う。
Eランクモンスターを一撃で倒せても、Dランクモンスターでは百発当てないと倒せないとかザラだからな。
ダメージ計算がどういうふうになっているのやら。
「「「……」」」
俺は京子と朱莉の方を見る。
強く止めるつもりはないようだが、二人も少し不安そうだ。
そりゃそうか。
雅がどれだけ強いかわからないのだ。
最悪、雅が大怪我を負ってしまう恐れだってある。
雅は今非戦闘職の鍛冶師なんだから。
だが、雅が戦うつもりなら、早いうちにどれだけ戦えるか確認しておいた方がいい。
ダンジョンに突入した直後のこの場所が一番モンスターが弱いはずだしな。
「わかった。でも、危なそうになったらすぐに助けに入るからな」
「おぉ! サグルに助けてもらうっていうのも女の子として少し惹かれるシチュエーションだね」
「おい!」
「だが、心配はいらないよ。この程度の敵なら軽く一捻りさ。サジタリウス! 起動!」
『サジタリウス起動します』
「「「へ?」」」「!!」
俺たちは間抜けな声を出してしまう。
心なしか、敵のモンスターもびっくりした顔をしているように思う。
さっきから俺のことばかりを警戒していたモンスターが完全に雅の方を向いているのだから、驚いたのは間違いないだろう。
それも仕方のないことだろう。
雅のセリフと同時に、車椅子の中から複数のアームが出てきて、ディスプレイを雅の前に展開したのだ。
雅の車椅子が一気にロボットアニメのコックピットみたいになってしまった。
「ターゲットロック! A1からA5、ファイア!」
『発射』
「ギェギェェ!」
雅がそう言うと、車椅子の背もたれの両サイドがカパリと開き、そこからミサイルが飛び出してモンスターへと突き刺さった。




