第11話 一度、俺たちのパーティに入ってみないか?②
「正式に加入できるかどうかは京子と朱莉と相談してからになると思うが、どうだ? 仮加入でもしてみないか?」
「え? 待って待って待って。ウチ、生産職やで? 本気で言っとるん?」
いつものロールプレイが剥がれている。
それに、若干方言が混じってるな。
相当動転しているみたいだ。
いや、そこまで動転するようなことを言ったつもりはないんだが。
「黒鍛冶師になって戦闘もできるようになる予定なんだろ? それじゃあ、大丈夫だろ。それに、気の合う相手がいたら誘った方がいいって言ったのは雅じゃないか」
「それは、そうやけど」
「それとも、雅にとって俺は気の合う相手じゃなかったか?」
もしそうなら、かなり悲しい。
いや、悲しいよりも恥ずかしい。
午前中は時間も忘れて楽しくアニメの話をしたつもりだったが、楽しんでいたのは俺だけだったってことじゃないか。
ぼっちはたまにそういうことがあるから、メンタルへのダメージはかなりのものだぞ。
想像しただけでも少しダメージが。
「そ、そんなことあらへん! サグルくんは話題も合うし、話してて楽しいし、こんなウチでも……こほん。こんな僕とでも普通に接してくれるからね」
やっぱりこのロールプレイで結構周りから浮いているみたいだ。
将来黒歴史になること確定だな。
「じゃあ、どうだ? 雅がいいっていうなら、今日、二人に相談してみようと思うんだけど」
「……じゃあ、お願いします」
雅は深々と頭を下げた。
***
「サグルさん……」
「サグルっち」
俺が生産職を見つけたというと、二人は喜んでくれて、その人がレベリングのためにパーティに加わりたいと言っていると言うと、二人とも二つ返事でOKしてくれた。
正式に加入するかは実際に一緒にダンジョンに潜ってみてからということになったが、とりあえず、武器製作の件もあるので雅の工房で顔合わせをしようということになった。
そこで、雅と一緒に二人を待っていると、やってきた二人はジト目で俺の方を見てきた。
心なしか雅の視線も痛い気がする。
え? 俺なんかやっちゃいました?
「とりあえず、紹介するよ。こちら、生産職の雅さん」
「初めまして、大槌雅だ」
「それで、こっちがヒーラーの京子と斥候の朱莉」
「初めまして。矢内京子です」
「初めまして、有村朱莉です」
「と、とりあえず、こうなった経緯を話すと……」
俺は重い空気を払拭するためにもこうなった経緯を話した。
きっと話せば今の空気はどっかに行ってしまうはずだ。
特に、朱莉は感受性豊かだからな。
***
「う゛ぇーん! み゛や゛びざーん゛! 大変だっだね゛ー!!」
「本当に大変でしたね。一緒に偽エリクサーを探しましょう」
「こらこら二人とも、そこまで大袈裟なことじゃないよ」
話を聞いた朱莉は雅に抱きついて泣き出してしまった。
京子も雅の手をとってしっかりと握りしめている。
この様子なら三人の相性も良さそうだ。
「じゃあ、とりあえず、三人の武器を作ってしまおうか。武器を見せてもらえるかい?」
「あぁ」「はい」「ずび。わかった」
俺は小太刀を机の上に出し、京子はいつも使っている杖を、朱莉は短剣を机の上に出した。
「ふむふむ」
雅は俺たちの武器を手に取って一つずつ鑑定していく。
色々な角度から見てみたり、触ってみたり、その真剣な眼差しからは一角の職人の雰囲気が窺えた。
「ちゃんと使いこなせているみたいだね。やっぱりDランクダンジョンで武器が壊れてしまうのは武器の性能が足りていないからみたいだ」
「そういうのもわかるのか?」
「あぁ。武器の歪み方とかを見ればわかるんだよ」
そう言って雅は芸術品を撫でるように俺の小太刀に手を滑らせる。
「ちゃんと使えていないと一箇所に歪みが偏ってしまうんだ。そしてそこから武器が崩壊する。でも、この小太刀は全体的に歪みが発生している。武器を使う度に少しずつ蓄積したものだろう。これは、モンスターと対峙する以上、どんなに上手く使っても逃れ得ないものだ」
「「「へー」」」
「ここまで均等に歪んでるのは久しぶりに見たね」
「「「おー!」」」
職人さんからそう言われると少し嬉しい。
なんか、自分がすごく強くなったみたいな感じだ。
今までできるだけ上手く戦うようにしてきたが、武器の歪みという形でそれが証明されたってことだ。
これまでやってきたことは正しかったってことだな。
「そういえば、私の杖ってどうして壊れるんですか? これでモンスターを殴ったりはしていないんですが」
「ん? あぁ。杖の中には魔力を増幅させる機構みたいなのがあるんだけど、その中を大量の魔力が流れていくと段々とその管が傷ついていってしまうんだ。だから、自分の魔力に対して弱すぎる武器を使っていると壊れてしまうんだよ」
「……そうなんですか?」
「あんまりわかってないみたいだね。……そうだな。川をイメージしてみたらいいかもしれない。川は普段は適量の水が流れているので、静かに流れているだろ? でも、大雨が降って川の水量が増えたりすると決壊してしまう。京子くんの魔力量が増えたせいで、この杖にとっては常に増水状態ですぐに決壊してしまうって感じだ」
「なるほど!」
「まあ、なんにせよ。これだけの力があるなら武器を作ってあげても大丈夫だね。今持っているドロップアイテムを全部出してもらってもいいかい?」
「はい!」
俺たちは雅の指示に従ってドロップアイテムを取り出していった。




