35 入学試験・三次試験③
入学試験は三次試験からが本試験となり、能力ごとに分かれて試験を受ける。
Aブロックは攻撃を得意とする者達。
Bブロックは補助や回復を得意とする者達。
Cブロックは使役を得意とする者達。
Dブロックは薬学や魔法陣構築などを得意とする者達。
受付で自分の得意分野を申告し、試験を受けることになる。
もちろんティナはそんなことは知らない。
「今回のテイマーは5組か、多い方だな」
「そうだな」
ニックの感想に隣にいたハロルドが頷く。
AブロックやBブロックには百人以上の受験者が集まっているが、Cブロックにいるのは5組だけだった。
それでも例年よりも多い。
毎年3~4組集まればいいほうだからだ。
テイマーは少ない。
テイマーになることは、それほど難しくはないが、魔獣を御して共にあることが難しいのだ。
テイマーは魔獣に命令をすることで、魔獣の持つ特性や能力を使うことができる。それはとても有益なことだ。
人族の使う魔法や魔術は魔獣に比べると格段に弱く、魔石や魔法陣に頼らなければならない。それに人族の持つ魔力は少ない。
もし、魔獣を従えて入学試験に来ることが出来るならば、その時点で試験には合格したようなものだ。
まあ、試験は受けてもらう必要はあるが。
参加しているテイマーは5組だが、実際は4組だ。
1組目はブルーウルフのトムを連れたカイ。
2組目はサラマンダーのランダーを連れたタイリー。
3組目はスライムスーと妖精ちょうちょを連れたティナ。
4組目はカーバンクルを連れたエリオット。
グリフォンのグリファスを連れたクライブは5組目のはずだが、試験に参加はするが受験するわけではない。
クライブはテイマーではないからだ。
グリファスは従魔ではなく王家を守る守護聖獣だ。人に使役されることはない。
クライブはグリファスに命令することなど出来ない。なぜなら王子であるクライブや国王よりもグリファスの方が位は上なのだから。
クライブの先祖が、このザイバガイト王国を興した時、グリフォンの加護があったからこそ、それが可能だったと言われている。
その時のグリフォンとグリファスが同一なのかは分からない。
ただグリフォンが寄り添うのは王家、それも国王と次代の国王となる者だけだ。
現在の国王であるシルベスト=ザイバガイトはまだ若く、その座を譲ることはまだまだ先だと考えられているが、グリファスがクライブに寄り添ったために、次代の国王はクライブだと思われている。
クライブは、まだ正式にステータスを調べてはいないが、次代の王になる天恵 “国を統べる者” を持っていると考えられている。
そんなグリファスが、なぜ試験に参加しているのか、それは試験をする側としてだ。
Cブロックの試験参加者達は気づいていないが、すでに三次試験は始まっている。
神獣のグリファスの登場で、従魔達はどう動くのか。
テイマーと従魔との関係がどのようなものかを見定める試験だ。
トムとランダーはグリファスを見た瞬間に、その威圧に気圧され、逃げるどころか失神したようになり、動けなくなってしまった。
主を守るどころか、主から介抱されていた。
ブルーウルフのトムとサラマンダーのランダーは共にランクの低い魔獣だ。別格の神獣相手では、それは仕方のないことかもしれない。
カーバンクルは身構えるように身を低くしたが、それだけだった。逃げもしないが向かっても行かない。動くことすらしなかった。
自分の主を守るような行動をとることはなく、グリファスの威圧に、ただ耐えていた。
テイマーと従魔の関係がどのようなものか、要観察といえる態度だった。
「我はスライムを取って喰おうなどとは、思いもしておらんのだがな」
他の従魔達とは違い、まるでグリファスが皆殺しをしに来たのだとでも思ったのか、スーとちょうちょは最初から戦闘態勢だった。
失礼な奴らだとグリファスは笑う。
彼らは自分の主を守ろうと躍起になっていた。
まさか命令をされてもいないのに、主を守るために自分を犠牲にしようとするなんて……。
グリファスは驚きと共に強く興味を引かれた。
本当は従魔達のグリファスに対する対応を見たら、クライブは残るがグリファスは役目を果たしたからと、会場を後にすることになっていた。
だがスー達のことに興味を引かれたグリファスは、このまま残ることにした。
「従魔は、もう大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」
「ご心配をおかけしました、大丈夫です」
ハロルドが、試験を開始することができるのか、動けなくなった従魔の主達に声をかけている。
今もこの場にグリファスはいるが、威圧を消しているため従魔達は回復してきている。
「クライブよ、我に向かって来たスライムと妖精が元気だと思わんか」
「そうですね。あれほど暴れて体力を使ったでしょうに」
グリファスとクライブは、少し離れたところにいるスーとちょうちょを見ている。
ティナの足元で元気そうに跳ねているスーとスーの頭の上から落ちないように頑張っているちょうちょ。
共に疲れは少しも見えない。
「ん?」
グリファスの視線に気づいたのか、スーがこちらに向かって、中指を立てている。
わざわざ触手の先を人族の手のように5本指にしている。器用な奴だ。スーの頭上では、ちょうちょがファイティングポーズをとっている。
二匹共にチンピラ感満載だ。
「ハハハハ」
グリファスが楽しそうに笑っている。
テイマーに従属している魔獣は、テイマーに魂が繋がれる。
だからテイマーのレベルが低いと、自分の持つ最大の能力を使うことができなかったり、魔力や体力の回復が遅くなったりする。
テイマー自身も魔力を従魔に渡すことになり疲弊してしまう。
だがスーやちょうちょに疲労感は感じられないし、ティナの体調も悪くはなさそうだ。
ティナのテイマーレベルが高いのか? 従魔に対する態度や指示の出し方から、熟練のテイマーには見えない。
それに、いくらレベルの高いテイマーでも、2体も使役するとなると、魔力が賄いきれるものではない。
試験が始まれば、それを知ることができるだろう。
長い時を生きてきたグリファスは、興味を引かれることや感情が動くことは少なくなっていた。
ティナ達に興味を引かれ、久しぶりに心が高揚することに自分でも驚くのだった。




