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天界からきた少女~王立魔法学園転入編~  作者: 鈴城伊織
第1話 舞い降りた天使
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11 宣戦布告


「あれ?外しましたか。」


呑気な声に、やる気のないような言葉。

何処からともなく現れたそれは、黒いロープを翻しながら、退屈そうな視線をサラと黒い男に向けていた。


《サラ、あいつが攻撃してきた人間だ》



「わかってるわ」



異様な空気を漂わせながら、その人間はサラと黒い男を見比べる。

チラッと黒い男を見たサラは、彼の手に剣が握られているのに安堵した。

彼の周りに氷の刃が集中しているのを見ると、その剣で全てを薙ぎ払ったのだろう。



「それにしても…その獣は何です?見たことない、魔獣ですね。」



ローブの男は、サラが乗っているシルヴァに興味津々な様子で、見上げてきた。



「あなたこそ、誰。突然攻撃してきて」



シルヴァの毛をギュッと握ったサラは、警戒を露わにローブの男を睨みつけた。



「僕は、アルカ。そこにいる狂戦士のリオンに用があったのですが」


アルカと名乗った男は、深くかぶっているフードの隙間から僅かに見える黄色い瞳で、黒い男を見据る。

すると、黒い男…リオンは、全くの無表情でアルカに剣を向けていた。



「俺は用などない。消えろ」



「相変わらず、背筋が凍るような視線ですねぇ。僕も、あなたに関わりたく無いんですが…役割なので仕方ありません。」



「なら殺す」



カチャリと剣を握り直したリオンは、今にも襲いかかりそうな殺気を漂わせながら、冷たい言葉を放つ。

全く話が付いていけないサラは、これからここで戦闘が起こる予感に冷や汗がでた。



(なんて物騒な学び舎なの!?…これって、日常茶飯事…!?)



「シルヴァ。戦闘の前に止める」



《承知した》



この背中がピリピリする威圧感は、サラにとっては初めての体験。

それでも中庭が綺麗なままでいられるとは思えなかったサラは、辺りにいる精霊に心の中で退去するよう話しかけていた。


「流石の僕でも、一対一だと死にますねぇ。ただ、次の対抗戦のお誘いをしに来ただけなのですが」



「対抗戦?」



「はい。来週の対抗戦、僕たちのチームと戦いませんか?」



「俺は、チームなどないし、対抗戦も興味ない」



「いや、チームならそちらのお嬢さんがいらっしゃるじゃありませんか。」



上から様子を見ていたサラへ、ニヤッと笑ったアルカは不意に左手をサラの方向へを向ける。

その仕草を見たリオンは、ハッとした表情でその場から勢いよく跳躍した。


それは一瞬の出来事だった。


アルカの左手から、先ほどより大きな氷の刃が作られたかと思うと、風に乗る速さでサラへ向けて放たれていた。

しかし、それより前にサラの目先まで飛んできたリオンは、見えない速度で全ての刃を薙ぎ払う。


ほんの数秒の出来事だったが、サラは自分の前にある大きくて広い背中をしっかり見ていた。


(風のように速く剣を振るうことが出来るなんて…)


魔法を使った様子は見られない。

だが、リオンと呼ばれた黒い男からは、人間の身体能力を超越した戦闘技能が備わって見えた。

呼吸も乱れず、無表情のまま相手を葬れる。

成程、これでは身体に傷を付けるのは難しいのかもしれなかった。



「あなたが人を庇うとは驚きです。やはり、そのお嬢さんはチームメイトですね。」


大袈裟に驚いた声が、これは明らかな挑発だと、物語っていた。


「今のは、怪我では済まない。殺傷性が高い攻撃だ」


しかし、そんな挑発には乗らないリオンは、変わらず無表情で淡々な声を出す。



《…こやつ、今サラのことを殺そうとしたな》



「シルヴァ、大丈夫だから」


毛を逆立て、怒気を含ませたシルヴァの体をそっと撫でながら、サラは冷静にこの様子を見守っていた。攻撃されたことよりも、黒い男が庇ってくれたことの方が驚いていたからだ。

先程まで、明らかに警戒されていたのに、自分を守るような行動を取る彼がわからない。

そして、そんな彼を挑発して、対抗戦とやらに出場させたいアルカの言動も読めない。


(ここは、慎重に見定めなければならない場面ね)



「そのお嬢さん?魔力を感じませんが、本当にここの生徒ですか?」



「…明日から入学予定なの。か弱い乙女なので、どうぞお手柔らかに」


にっこりと笑みを浮かべて堂々と言い放ったサラに、アルカは明らかに引き攣った様子で「態度が全くか弱くないのですが…」と呟く。

しかし、サラの心中は決して穏やかでは無かった。


(魔力と言うのは、やはり持ってないとすぐわかるのね。)


入学試験で使用したブレスレットを周りから見えないように、スッと腕に嵌める。

先程は咄嗟の事だったらからシルヴァが出てきてしまったが、彼が魔物では無いとバレるのも時間の問題だろう。

精霊の存在は、人間界の神話や神殿の中でしか伝わっていないと認識しているサラは、敢えて堂々と振る舞うことでこの場を逃れようと頭を動かす。

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