幼き光
2020年夏より連載スタート
長い夢を見ていた気がする。
「サラ、僕は行ってくるよ」
自分と同じ、陽の光を集めたような金色の髪、静かに波立つ湖のような藍色の瞳。
どこか中性的な雰囲気を醸し出す、双子の弟を見つめながら、私は瞳に溜まる涙を零した。
「どうしても?お父様の傍に、いてあげないの?」
ふわりと優しく笑った弟…ノアは、母譲りであろう柔らかい眼差しを私に向けた。
「父様には、サラがついているから大丈夫。僕も、家族の為に行ってくるよ」
「…私が今、ノアと離れることを悲しんでるのに?」
ノアがどんな決意を持って言っているか、わかっている筈なのに、高まる感情を抑えられない私は、駄々っ子の様な口調になってしまう。
「僕とサラは、二人で一人。どんなに離れていても、僕たちはずっと一緒だよ」
「…それは、そうだけど…。」
「それにね、サラ」
スッと垂れ下がっていた私の手を握ったノアは、静かな瞳を細めながら覗き込んでくる。
「僕は、知りたいんだ。母様のことを。家族のことを。自分で確かめて、自分で考えて、これからどうするかを生きていきたい。父様に守られてばかりの毎日は、嫌なんだ。」
「だって、私たちまだ子供なのに…。」
「うん。この世界で子供のうちに、行動したいんだ。一人前になる準備をする時なんだよ」
その気持ちはわかる。私はずっと、お父様に守られているから。
毎日、緩やかな幸福の日々を、作ってくれる存在がいるから。
でも、一人で先に行っちゃうのは、やっぱり寂しい。
「…本当に、気を付けてね。手紙も出すからね?定期的に連絡してね?」
ノアの気持ちがわかるように、ノアも私の気持ちが手に取るようにわかるだろう。
繋がられた掌は、ギュッと強い力で握られた。
「もちろんだよ。サラに、父様と母様の物語を、うんと聞かせてあげるから。」
「約束だよ!絶対だからね!」
ボロボロと落ちる涙を、慣れた手つきで拭ってくれたノアは、私の大好きな笑みを浮かべて頷いた。
「じゃあ、サラには父様の秘密を少しだけ教えてあげる。…人間界での父様はね…---」
不定期更新となります。
※フィクションであり、現実のものと一切関わりはありません。




