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5.魔女宅開拓期(2)

 今回、少々文章が長くなってしまいました。すいません

また、説明する文や口調が多数あるので、少し読み飛ばすぐらいでちょうど良いかも知れません。後書きで変なことやってますが、お気になさらず!

―― ピピピピッピピピピッ


 「ッ!」


 腕時計のアラームが鳴ると、体が揺さ振られたので俺はゆっくりと目蓋を開けた。


―― ピピピピッピピピピッ


 「んー……! もう朝か……」


 けたたましく鳴るアラームを止め体を起こす。


 昨日よりは、眠れたけれど……やっぱり身体が痛いな……。


 まだ目が完全に覚めきっていないので頭がボーッとする。


 「ん?」


 気づくと離れた位置に真白がいた。


 どうしたのだろう? 思ったが、その何かを警戒している様子から、どうやら真白はアラームの音に驚いて距離を取っていたようだ。


 なるほど、目が覚める直前に体が揺さ振られたのは、そのためか……。


 「……あぁ、ゴメンな驚いたろう。 この腕に付いてるのは時計と言って時間を教えてくれる機械なんだ」


 真白に近づいて優しく頭を撫でてやると 「ウーッ、ワンッ!」真白も分かったと言う感じで一鳴きした。


 やっぱり賢い子だな、俺の言ってることをすぐに理解してくれる。


 「どれ、起きるか!」

 

 気合を入れて外に出ると真白も俺のあとから付いてきた。



 外に出たとたん真白の体がうっすらと光

 すると徐々に大きくなっていき昨夜、家に入る前のサイズにまで元に戻っていった。


 身を振るってホッとした様子の真白


 やっぱり窮屈だったのかな? まあ、頭の良い子だ。 辛ければ言ってくれるだろう。


 昨日と同じ様に小川で顔を洗うと、すぐに罠の確認に向かった。

 今日は昨日と違って森の方にも罠を作ったので、まずは落とし穴の方から見に行く。


 落とし穴を全部確認したが、残念ながら今朝は全部空振りだった。


 ついでなので帰りにゴムの樹液を採取している場所に行ってみた。


 ゴムの木の下まで来ると早速樹脂を受けている桶を覗き込む。


 「おおっ!」


 驚きの声を上げる。

 昨日の昼過ぎに設置したばかりだと言うのに桶の中はゴムの樹液で一杯だった。

 すぐに魔法で200ℓ程度の樽を1つ作り、そこに受けていた樹液を集めて行く。 ほんの数本分だと全て集める頃には樽の口切り一杯まで満たされていた。


 「やっぱり地球のゴムより樹液が出やすいようだ」


 嬉しい誤算だ。

 ゴムは色々な物に使用するので少ないより多い方が良い。 それに今回は実験的に数本だけだったが、周りには同じ木が沢山ある。 思っていた以上にゴムが取れそうだ。

 まだゴムを抽出していないけど幸先の良さに自然と笑顔になる。


 蓋を閉じて俺と真白で一樽ずつ持ち上げる。


 ちなみに真白の樽は200ℓサイズの樽で俺の方は、入り切らなかった10ℓサイズの樽だ。 不公平かも知れないけど真白は余裕で持ち上げているので問題無いだろう。


 忘れずに再度樹液を回収すべく樹皮に傷を入れて桶を設置しておいた。 もちろん採取本数も増やしている。


 続いて今度は湖の罠の確認に向かう。

 今日も数匹の魚がかかっていたので昨日と同じ様に蔦に通して持ち帰る事にした。


 木の家までの帰り道、遠くの草むらの中で何かが微かに動いている。


 「はて、なんだろう?」


 目を凝らしてよく見ると、それは2本の足で地面を移動する鳥だった。

 さらに1羽だけでなく周囲に複数いるようだ。

 鳥に気付かれないよう茂みに身を屈めると、真白もすぐに俺の行動の意味を理解したようで気配を消して身を低くしてくれた。


 観察すると鳥は2種類の見た目が異なる個体で群れを作っていた。

 1方の鳥は赤いトサカがあって首辺りの色が茶色、胴体から尻尾に黒色の羽が混じってかなり派手な見た目をしている。

 もう1方は、全体的に灰色に近い茶色で凄く地味な見た目だ。


 「もしかして……鶏かな?」


 うん、派手な方がオスで地味な方がメスと見て間違いないだろう。


 「うーん、鶏みたいだな~、鶏……肉……卵……ゴクンッ!」


 日本で食べていた卵料理を思い出して思わず唾を飲み込む。


 「生け捕りにしたいな……」


 子供の頃、祖父母の家では数羽の鶏を飼っていたから、買いに行かなくても毎日新鮮な卵を食べられていた。

 大量生産用を目的とする養鶏場の卵とは違うあの味わいは、今でも忘れてはいない。


 家庭で育てられた鶏の卵って独特の美味しさがある。

 もちろんサルモネラ菌が付いている可能性があるので生では食さないけど……。


 日本だったらスーパーやコンビニでも買える卵。

 しかし、ここ異世界ではそう言う訳にはいかない。

 全ての食材は自分で確保しなければいけない!

 アルフィーナさんは食べなくても良いかもしれないが、俺は生きるために食べなくてはいけない!

 だからココは何としてでも生け捕りにして家で飼育したい!


 「真白、あの鳥を殺さないで生け捕りにしたいんだけど……何とかできる?」

 「……ウォン!」


 真白は鳥を一睨みしたあと、持っていた樽を地面に置く。

 そして、気配も音もてずにネコ科の獣の如く姿勢を低くしてゆっくりと鳥達に近づいていった。

 鳥達は真白に全く気が付いてはいない。

 真白は鳥達からブラインドになる様な位置に藪を上手く使うと、あっと言う間に鳥達のすぐ傍らまで近づいてしまうと、一気に草むらを飛び出した!


 ただ飛び出した真白を見て「それじゃ鳥たちは驚いて一斉に逃げ出すよ」……と思ったけど、何故か鳥たちはその場で倒れている。


 最初は真白が何をしたのか分からなかったけど、昨日のイノブタの事を思い出した。


 そうだ! 昨日イノブタは真白の気配に驚いて気絶していた。

 真白はそれを利用して自分の気配を隠さずに表に出して鳥を気絶させたんだ。


 「凄いな真白、ありがとう!」

 「ワフ!」


 真白に駆け寄り頭を撫でてあげると、「まかせて!」 と言わんばかりに真白は胸を張って応えた。


 「どれ、とりあえず鳥は、そこらの蔦でかごを作ってその中に入れて……あとは魔法で運ぶか」


 真白も俺もすでに荷物を抱えているのでこれ以上は持てそうにない。

 だからと言ってせっかく取った鳥をここに放置はできないので今回は魔法で運んでしまおう。

 それと群れがいた場所には巣があったので中を覗き込んでみると、そこには外の鳥と同じように気絶した雌鳥と卵があったので一緒に持って帰る事にした。


 木の家に戻ると、製作中の家の近くに早速鳥小屋を作る準備に入る。


 まずは整地するため、30m四方の草木を取り除いた。

 それと鳥小屋を建築する周囲に土魔法を使って柵を作り周囲に張り巡らせる。

 これなら大型の獣は入ってこれないだろう。


 次に整地作業で取り除いた木を利用して木材と板材に整形していく。

 それを使って支柱を立て屋根を載せる。

 壁になる部分は、板壁の部分と目の細かな格子の部分に分けて作った。

 これなら閉塞感が無く光も上手くは取り込んでいるので問題ないだろう。

 目の細かな格子を作ったのは臭いと空気を循環させるためだけど、蛇やイタチなどの侵入を防止する意味合いも含まれている。


 あとは鳥たちが生活するスペースが必要だ。

 1、2羽入っても余裕があるぐらいの棚を作って、そこに鳥の巣になるように草の繊維をからませて柔らかく半球に成形した物を置いた。

 これなら安心して卵を温めてくれるはずだ。

 それと餌箱と水飲み場も忘れずに作り整地した時に食べられそうな草を見つけていたので、それを餌箱に細かく切って入れ置いた。

 あと地面の中にミミズもいたので同じく餌箱に


 捕まえた鳥の雌雄の割合は、2匹のオスに対しメスが30匹近くのずいぶんなハーレムの群れだったようだ。

 オスがいなくても卵は出来るのだけど、どうせなら繁殖も試みたい。 だからオスに頑張ってもらおう!


 それと卵の方は光の魔法を使って有精か無精か判別を行うと、ありがたい事に無精卵が数個見つかったので有精卵は巣に戻し無精卵は今日の朝食に頂く。


 鳥小屋も完成したし鳥を入れてしまおうと籠を開けると、鳥達はまだ気絶している状態だった。

 驚いて暴れられても困るので起こさない様にそのまま小屋の中に移動させる。

 すると小屋の中に入れてしばらく動かなかったが、1羽また1羽と目を覚ましたようで当初は環境の変化に驚いたようで右往左往した状態だったが、数分もすると慣れた様でメスは卵のある巣で卵を温め始め、温める卵の無いメスとオスは餌箱や水をセッセとついばみだした。


 「よし! 飼育小屋の完成だ!」


 腕時計を見れば5時30分

 魔法を使っての建築だったのでそれほど時間が掛かっていない。

 これなら朝食を遅らせる事無く用意できそうだ。


 「さてと!」

 「何をしているのじゃ?」


 朝食を作くるべく作業台へ向かおうとすると、誰かに後ろから声をかけられる。


 まあ、のじゃの口調で誰だかは分かるし、ここには俺以外もう一人しかいないので分かるんだけど……。


 「アルフィーナさん、おはようございます」

 「うむ、おはようなのじゃ」


 しかし、こんなに朝早い時間にどうしたんだろう? 昨日はご飯が出来たあとに2階から降りて来たのから、この時間はまだ寝てると思ったんだけど……。


 「早いんですね、どうかしましたか?」

 「うむ、お主を手伝おうと思ってな」

 「手伝う?」

 「うむ、食べ物を作ってもらうばかりでは心苦しいのでな」


 どういった心境の変化かわからないが、どうやら朝食の準備を一緒に手伝ってくれるらしい。

 うん、せっかく朝早くに起きて来てくれたんだから、ここは手伝ってもらおう。


 「そうですか、じゃあ、お手伝の方お願いします!」

 「うむ、よろしくなのじゃ」


 アルフィーナは満面の笑みを浮かべる。


 「ちなみにアルフィーナさん、料理の経験は?」

 「ふっふふー、全く無いのじゃ!」

 「胸を張って言わないでくださいよっ!」


 胸を張って宣言するアルフィーナに突っ込みを入れつつ朝食の準備を始める。

 料理経験の無いアルフィーナには、簡単なものを任せよう。

 

 今日の朝食は、焼きたてのナンとソーセージに目玉焼き、それと野草と椎茸の炒め物、ムカゴの塩茹で、少量の肉を少し入れたコンソメスープを作ってみた。

 各種盛り付けを行い、昨日夕飯を食べたガラスの上に置く。


 真白には、食べ易いようにプレートに各種少し多めに盛り付けた。

 ただしコンソメスープは熱々だと可哀想なので少し冷まして深皿にいれておいた。


 全部の料理が並べられたところで席に着く。


 「じゃあ、アルフィーナさん、真白食べますか!」

 「うむ!」

 「ワフ」

 「「いただきます!」」「ワンッ!」


 みんな揃っていただきますをして食べ始める。


 「……のう、マサキ」

 「はい、どうしましたか?」

 「アレは何じゃ?」


 食事をしながらアルフィーナが指を差し聞いてきたのは、家から少し離れた場所にさきほど建てた鳥小屋だ。


 「ああ、あれは朝に罠の確認に行った時に鳥を生きたまま捕まえたので、家で飼うために魔法で建ててみました」

 「ほう、鳥をのう、しかし、ポンと簡単に建てるのじゃのう」


 アルフィーナはもう慣れた様で、いつの間にか建物が建っていようとあまり驚かなくなってきた。


 なんとなく残念だ。


 「今朝の料理に使った卵も、さきほど取ってきたものです」

 「なるほどのう、確かに家の近くで鳥を飼っておれば卵や肉が得られるからのう」


 アルフィーナは納得しながら目玉焼きに舌鼓を打つ。

 ちなみにアルフィーナは目玉焼きに醤油をかけて食べている。俺も目玉焼きには醤油派だ!(いや塩コショウだろう!何を言うケチャップだ!そんな事より野球しようぜ!)





 朝食を取り終え後片付けが済んだら、早速、本日の作業に取り掛かる。

 建築中の家の方に向かうと、あとからアルフィーナと真白も付いて来た。


 作業場所に着き、最初に取り掛かるのは、水場である台所、洗面所兼洗濯場、トイレを設置するところに上下水管用の大きめの穴を空ける。

 これが決まらないと床材や壁材を取り付けられないので当然先に作っておく。


 次にアルフィーナが、いたく気に入った風呂造りにはいる。


 浴場は、防湿の対策を含めて母屋と浴場とに建屋を分ける。

 そこを渡り廊下で繋いでちょっとした温泉旅館風にしてみた。

 ただし渡り廊下と言っても廊下の幅が5m程ありソファーなどを置けば休憩スペースとしても利用可能だ。


 浴場に設置するのは、脱衣所ここには母屋の出入り口とは別の2つの出入口を左右に並べて造る。

 なぜ2つ何だと言うと、左の出入口には、建屋内に木で浴槽を作った内風呂、右の出入口には、昨日ガラスを作った河原で石を集め平らに加工して敷き詰めた露天風呂を造ってみた。

 もちろん露天風呂は、高い柵で囲んで外から見えない様にして、あと周囲に自然石を散りばめて置いている。


 内風呂、露天風呂とも排水用の穴を作り有機物と塩・ナトリウムを取り除いた無機物の密度を一定にして硬化させた配管を作って外へ排水できるようにした。


 「あとは、上水なんだけど、それよりも温水は……どうしよう?」


 いくら立派な器を作っても、それを満たすお湯が無ければ意味が無い。


 「アルフィーナさん」

 「ん?なんじゃ」

 「どこにお湯が沸いている所は無いですか?」


 出来れば温泉なんかが有れば良いと思いアルフィーナに聞いてみる。


 「う~む、すまぬが知らないのじゃ、昨日も言ったが、そこまでこの辺りを熟知している訳ではないからのう……」

 「ああ、いえ、お気になさらないで下さい」


 知っていれば良いな、程度に軽い気持ちで聞いたので、本当に申し訳無さそうに謝るアルフィーナに恐縮してしまう。


 「ワン!」

 「ん?どうした真白」


 真白が尻尾を振りながら吠えるので何かあったのか聞いてみると、俺の服の裾を加えてグイグイ引っ張る。


 「えっ?もしかしてお湯が沸いてる場所を知っているのか?」

 「ワン!」


 そうだ!と言わんばかりに真白は胸を張り吠えて応える。

 そして俺の隣で尻尾を振りながら伏せをして何かを待つように俺の事をジッと見ていた。


 「えっと、もしかして乗れと?」

 「ワン!」

 「結構距離があるのか?」

 「ワン!」

 「マジかー」


 どうやら真白に乗らないと行けないほどの遠い距離に湯源は有るようだ。


 「あー、まあしょうがないか、アルフィーナさん真白に乗ってちょっと見てきます。ここまでお湯が引ければ、魔法で引きながら帰ってきます」

 「うむ、帰ってくるまで私はここで待っているとしよう、あまり無理をするではないぞ!」

 「はい!」


 そう言って真白の背に跨る。


 「では、行って来ます!」

 「うむ」

 「じゃあ真白案内してくれ」

 「ワン!」


 真白は一鳴きが出発の合図となり、地面を蹴りあげる。

 真白が地面を蹴り目的地の方向に進むと、周りの風景がとんでもない勢いで流れていく。

 その速さに驚き俺は真白の背中に必死にしがみつく

 初めて動物の背中に乗ったけど、どうやら真白が上手に乗せてくれているみたいで揺れが少ないので落ちる心配は無かった。


 必死に真白の背中にしがみついていると、速度がゆっくりになりやがて停止した。

 俺は真白の背中から顔を上げてゆっくり地面に足を下ろす。


 先ほどまでの高速移動で若干足元がフラつくが、何とか体制を整え周囲を見回す。

 見ると、どうやらここは、俺が初めてこの世界に来たときに出て来た洞窟の山とは、また別の山のようだ。

 そして、温泉が湧いているだろうと思わせる卵のような臭いが辺りから漂ってきた。


 「真白、お湯はどこにあるんだい?」

 「ワン!」

 「そっちかい?」

 「ワン!」


 真白は俺の問いを返すように吠えて応え、山の方へ歩き出したので俺は、真白のあとに従って付いて行く。


 山を進んでいくと臭いがキツクなっていく。

 このまま進んで行くと、硫化水素ガスが溜まっている場所も有るだろう。

 もし、そんなところで動物が呼吸した場合、最悪死んでしまう危険性がある。


 すぐに魔法を発動させ新鮮な空気が俺や真白の周囲を覆う様に空気の層を作る。


 これでガスなどの有害物質による呼吸障害は起こらないだろう。


 「ワン」

 「おーここかーっ」


 真白が案内したのは、周囲に湯気で漂いポコポコとお湯が吹き出て溜まっている沼のような温泉だった。


 「ふむ、確かに温泉だ……だけど、このままじゃ使えないな」

 「クーン」


 この温泉は、周囲の岩肌に硫黄が噴出され固まっている所を見ると、硫黄泉であることは間違いない。

 しかし、ここで見られる温泉の水量はあまりにも少ない、このままの状態では家までお湯を引くことは難しい。


 真白も俺が言った事を理解したのか、自分を責めて耳と尻尾が下がり悲しい表情を作る。


 「ああ、真白お前が悪いんじゃないよ、このままでは使えないだけで温泉があるって分かったんだ!あとは地下にある水源を探せばそれなりのお湯の量を確保できるから安心して!」

 「ワン!」


 地下にあると思われる温泉を探す事を言い優しく頭を撫でてやると、真白は元気を取り戻したらしく嬉しそうに尻尾を振り出す。


 「どれ、やってみるか!真白、離れていなさい」


 真白は俺の言う事を聞き少し離れた位置に移動する。

 俺は真白が離れた事を確認すると、魔法で地下に長い配管を作り温泉が出てくるか確認する。


 「1本目は……ダメか、よし次!」


 深い位置まで配管を作って確認したが、1本目は失敗に終わり地面を元に戻して今度は位置を移動して次の配管作りに移る。

 そうやって10本近くの配管を作っては潰しを繰り返したところでようやくアタリを引いた。


――プシャーーーーーーーーーーーー!


 地面に作った配管から勢い良くお湯が上空高くにまで噴出して虹を作る。


 「おおー、やった!」

 「ワン!」


 俺は成功に真白と一緒に喜んでいたところ上空に行ったお湯が重力に従い地面に戻ってきた。


 「あちっ、あちっ、あちっ」


 お湯の雨の直撃にあい逃げるためにその場を離れる。

 すぐに魔法で配管の噴出口を塞ぐと次の段階へ移る。


 「真白、家はどっちだい?」

 「ワン!」


 真白に家の方向を聞くと、真白は家の方向に顔を向け応える。


 「なるほど、あっちなのか、よし!真白おいで」


 配管の傍まで真白と一緒に近づく。

 次に魔法を使って真白と一緒に地面の中に潜り込む。

 もちろん窒息防止用に空気取り入れ用の配管と、排出用の配管を作り続けて空気を循環させながら温泉が通っている配管を地下に潜るスピードに合わせて短くしていく。

 暗いので頭上に魔法で光を作り周囲を確認しながら潜っている。


 「うわー、やっぱり段々と熱くなっていくな、大丈夫かい真白?」

 「ワン!」


 気が付くと周囲はどんどん熱せられたように暑くなっていく。

 心配になり俺は真白に確認するが、真白は、全然平気!と言った感じに返事を返してくる。

 一応念のために自分と真白の周囲を魔法で冷却しながら地下へ潜り続ける。


 「よし!この辺で良いかな」


 そう言うと、潜るのをやめ次に周囲の空間を押し広げる。

 それと同時に壁を1mの厚さで硬化させ崩落などの危険を取り除く。


 「次は、家の方向に進んでいくか……真白背中に乗せてくれるかい?」

 「ワン」


 俺は真白の背中に乗ると、空間全体に魔法を発動させる。

 魔法で8mの円形に空間を作り、その円の下半分を埋めて平にならして半円の空間を作った。


 8mの半分の空間だが、それでも4mの高さがあるので真白の上に跨っても問題はなかった。


 「よし!じゃあ、魔法を使いながら進むから、最初はゆっくり家の方へ向かってくれるか?」

 「ワン!」


 真白は応えると、人間が歩く速度より少し速く歩き出す。

 俺は、魔法でトンネルを作りながら、空気の入れ替えと冷却及び温泉の配管の延長を全て同時に行なっていく。


 ちなみに温泉の配管は冷めないように複層の構造でなるべく熱を逃がさない構造にしている。

 もちろん地下水が出てこない様に空間を広げる前に広げる部分の密度を均質化と、硬化を施して水が中に入ってこないように押し付けて押し退けている。


 「真白、慣れてきたから徐々に速度を上げてくれ!」

 「ワフ!」


 真白が速度を上げていくのに合わせて俺も魔法を発動させてトンネルや配管を延長させていく。


 トンネルを作っていくと、どうやらこの周辺は鉱物が豊富らしく色々な金属が大量に採掘できた。

 しかし、今は運搬出来ないためトンネルの端の方に積み重ねておいた。必要なときに取りに来ればいいだろう。


 あと、魔鉱石も多く採掘された。

 魔鉱石は、鉱石自体に魔力を宿しているのか、鉱石を魔法で砕いたり鉱石を魔法で運んだりする事が出来なかった。

 しょうがないので鉱石周囲の岩を魔法で砕いてその岩や砂を使って地面の隅に纏めて集めておいた。


 真白はどんどんスピードを上げて、とんでもない勢いでトンネルが作られていく。

 それに合わせる様に鉱石が地面の隅に押しやられていった。


 「真白、ちょっと止まって」


 俺の声と共に真白は、ゆっくりとスピードを落として停止する。


 「ん~、たぶん、この辺だと思うんだけど」


 恐らくこの辺が、木の家と建設中の家の近くだと思い俺は上を向いて呟く。


 「真白、ここで地上に上がって確認してみるから、このままでいてね」

 「ワン!」


 真白の返事を聞くと、魔法で真白の足元の地面を隆起させる。

 それと同時に上昇の妨げにならない様に頭上に穴を開け取り除いた土は、そのまま足元の隆起の材料に使う。


 木の根が現れたので空間を造るのに邪魔なので曲げて通り過ぎたあとに元に戻した。。

 今度は草の根が見えたので退けてやると、頭上が明るくなり草木生い茂る森の中に出る。

 どうやら地上に着いたらしい。


 「おー、だいたいあってる」


 見ると、草木の先50mのところに建設中の家とお風呂の建屋が見える。


 「真白ありがとな、あとちょっとだから後は、俺一人でやるから」

 「ワフ」


 あと50m程度なので残りは自分ひとりで出来るので真白の背中から地面に降りると、真白の頭や頬を撫でて感謝の意を示す。

 真白も嬉しいようで、尻尾を振りながら顔を近づけて俺の頬を優しく舐める。


 「どれ、まずはアルフィーナさんに帰ってきた事を伝えるか!」

 「ワフ!」


 そう言って真白と2人で木の家に向かう。





 建設中の家に戻ると、アルフィーナはガラスのテーブル近くの椅子に腰を下ろし座っていた。


 どうやら俺達が帰ってくるのを待っているようだ。


 「アルフィーナさん、ただいま帰りました」

 「ん!帰ってきたか、速かったのう……お湯は無かったのか?」


 アルフィーナに帰ってきた事を伝えると、手ぶらで帰って来たせいか温泉が無かったのか聞かれる。


 たしかに探しに行って帰ってくるまで1時間程しかたっていない。

 無かったと思われるのも仕方が無かった。


 「いえ、有りました。今地中に穴を開けて洞窟を作り、お湯の元から管を通してきたんですよ」

 「はあ?」


 どうやらアルフィーナの理解を超えた事を俺がやってしまったらしくアルフィーナの頭上に大量の?マークが浮かぶ。


 「えっと……ですから、あの山から地面を掘ってここまで来たんです。お湯を通す管を作りながら」


 俺はお湯を見つけた山を指差し地面をなぞる様にして到着の場所を差し示し説明する。


 「………………ん~、良く分からんが、まあ良い見せてくれるんじゃろな」

 「あ、はい、その辺に入口を作ろうかと思ってます」


 俺は浴場の裏手にトンネルの入口を作ろうと考えていたので、指を差しながらアルフィーナとそこまで歩く。


 「じゃあ、始めますね」

 「うむ」


 早速、地面を隆起させて3m角の四角い石造りの入口を造り中に入る。

 中は暗いので魔法で光を作り出して地下へと降りて行くための階段を下りるタイミングに合わせて造っていった。


 おおよそこの辺と当たりを付けて地面と平行に穴を穿つと、さきほど造ったトンネルに繋がった。

 あとは、位置の微調整をしながら周囲を整えると温泉用の配管を通したトンネルが完成する。


 「こんな風に穴を作って、お湯の道を作ってきたんです」


 アルフィーナに説明するためトンネルの上の方に光を作り出して全体を見せる。


 「また、とんでもない事をしおったのう」


 暗闇の中に延々と続くトンネルを前にしてアルフィーナは口を開けたまま関心とも呆れとも取れる言葉が漏れる。


 「いやはや本当に……はぁー、まあ良い、で?この管の中にお湯が入っておるのか?」


 アルフィーナは、温泉が通っている配管を触って熱を確認している。


 「はい、あとは、この管を上に伸ばして上の建屋に取り付けるだけです」

 「ふむ、なるほどのう」

 「それじゃ、すぐに取り掛かります」

 「うむ!」


 あと少しでこちらは完成なので、俺は断りを入れて作業に取り掛かる。


 作業は自体は、そんなに難しい訳ではなく温泉の配管を階段に沿って斜めに上げて、地面から1mほどの深さで這わせて屋内と露天の2箇所に配管を伸ばすだけだ。

 ただし、配管の口の部分は、まだバルブも蛇口も出来ていないので口を塞いだままにして置いた。


 「よし!これでお湯の方は、ほぼ完成しました」

 「む?しかし、お湯は出てきておらぬぞ」

 「ええ、あとは、この口の部分にお湯の出し入れをする物を取り付けるだけですね。まあ、流し湯でも良いんですが、なんか、勿体無くて……」


 アルフィーナに説明しながら、俺の勿体無い性がここに来ても発揮される。


 流しっぱなしより、止めて掃除とか出来たほうが良い。


 「なるほどのう~、流したり止めたりするのじゃな!で、次は何をするのじゃ?」

 「えっと、次は下水処理施設ですかね」

 「下水処理施設?」


 たぶん知らないだろうと思っていたのでアルフィーナに次造る下水処理施設を分かりやすく説明する。


 「はい、え~と、たとえばここでお湯を出して使ったとすると、汚れるじゃないですか?」

 「うむ」

 「その汚れた水を少しでも綺麗にしないと、そのまま河や湖に流したら今度は河や湖が汚れてしまう。なので出来るだけ綺麗にしてから排水するようにするんです」

 「なるほどのう、だから処理施設が必要なのじゃな!」


 少し説明するだけでアルフィーナは、すぐにおおよその所を理解する。


 流石は数百年生きる魔女!アルフィーナの頭の切れに、度々感心させられる。


 「はい、でも必要な物が分からないので悩んでいるんです」

 「必要な物?それは何じゃ?」

 「え~と、目には見えない小さい生き物です。その小さな生き物が、汚れた水を綺麗にする力が有るんですよ」


 下水処理に必要な汚れを食べる微生物が必要なのだが、顕微鏡も無いこの世界で目に見えない微生物をどうやって見つければ良いのか悩んでいた。


 それに化学や文化などならいざ知らず微生物については素人の俺には、どの微生物がどのように利用できるかは知らなかった。


 「ほう、そんなものが、おるか!」

 「ええ、でも、見えないので、何処にいるのか、どれが良いのか、俺には分からないんですよ……」

 「ふむ、見たことも聞いた事も無い物じゃ、私には力になれんのう」


 さて如何したものか頭を悩ませる。


 「何か参考になる物があれば………………あっ!」


 眉を寄せてしばらく悩んでいると、俺はある物を思い出した。


 そういえば異世界に来る前に買ったノートパソコン、アレって中に辞典が入っているって店員さんが言っていた様な気がする。

 それに俺の古いノートパソコンのデータにも参考資料類や電子購入した本が入っていたはずだ!


 「どうしたのじゃ?」

 「あっ、えっと、アルフィーナさんちょっと木の家に戻ります」

 「な、なんじゃ急に、あっ、私も行くのじゃ!」


 俺は思い立ったらすぐ行動と言った感じで、アルフィーナに説明する前に木の家に向かって歩き出す。

 アルフィーナも慌てて俺の後に付いて来た。


 真白は、説明やアルフィーナとのやり取りが退屈だったのか、あくびをしながら後ろ足で首を掻いていたが、俺が動くと真白もすぐに後を追ってくる。


 木の家にみんなで入って(真白小モード)俺は、キャリアケースを広げてノートパソコンを取り出す。


 「なんじゃ、その板がどうしたのか?」


 俺が手に取ったノートパソコンにアルフィーナが、首を傾げながら質問してくる。


 「えっと、これはノートパソコンと言って、向こうの世界の……そうだな……あっ魔道具みたいな物です!」

 「ほう、異世界の魔道具とな!」


 魔道具と聞き目を輝かせるアルフィーナ


 「ええ、まあ説明するより見て貰った方が早いと思いますので起動させますね」

 「うむ!さ、早く始めるのじゃ」


 待ちきれないとばかりにアルフィーナが催促している。


 俺は、ノートパソコンを机に載せて開くと、起動ボタンを押す。

 するとノートパソコンは、ファンの音すらせずに一瞬で画面が明るくなり立ち上がる。


 「ほわ~、速いとは聞いていたが、これは凄いな!」


 お店での起動にも驚いたが、初めて自分で起動してみて改めてその速さに驚く。


 って、あれ?OSのロゴが見えなかった気がするが、気のせいかな?


 「おぉ~明るいの、なにやら絵も見えるのう!でっ、でっ、次はどうするのじゃ?」


 ノートパソコンの起動にアルフィーナは驚きそして期待を込め、先を進めるように言う。

 真白は、画面が見える位置で不思議そうに除いていた。


 「えっと、ちょっと待ってくださいね」


 初めて使うノートパソコンなので勝手が分からず、次の操作を決めるため画面を細部を見ようとすると、


 「おはようございます。マスター……いえ、この場合60時間18分32秒ぶりなので、“お久しぶりです。マスター”の方が正確でしょうか?」

 「あ゛っ!?」


 画面上に映し出されている銀髪の美女に俺は変な声を出して固まる。


 忘れていた。すっかり頭から抜け落ちていた、このAIの存在を……。


 「無理もありません、初期登録時にご挨拶しただけですから、マイマスター。決して忘れていた事に怒っていたり、いい加減に気付いて欲しいな~とかは決して、決して!思っていませんよ、マイマスター」

 「あ、いや、すいません」


 怒っていないと言ってはいるが、どうも怒っている様子のAIに俺は素直に謝る。

 AIとは言え女性、俺には怒っている女性に対してすぐに謝る習性が付いているようだ。


 「なんじゃ、お主は?なぜ魔道具の中に入っておるのじゃ?」

 「ワン!ワン!」


 当然の如く目の前に映し出される女性が、AIとは知らないアルフィーナは、画面の女性に質問する。

 また、真白は突如表れた者に警戒し吠えて威嚇した。


 「これは、アルフィーナ様、真白様、私は真幸様の従として作られた知能です。名乗りたいのですが、いまだマスターから名を貰っていないので、名を名乗らずに失礼致します」


 AIは、アルフィーナと真白に一礼して自身の紹介をした。


 「なぜ私の名を知っておるのじゃ!」

 「ヴゥー、ワン!」


 自分の名前を見ず知らずの者が知っていれば当然の反応で、アルフィーナは驚き、真白は更に警戒する。


 「驚かせた様で失礼しました。私と待機状態でも周囲の状況は把握できたので、この家の中での会話は全て記憶しています」

 「なんと!この魔道具には、その様な能力があるのか!」

 「はい、ですので、お2人のお名前も記憶しておりました。驚かせて申し訳ございません」


 アルフィーナに説明し頭を下げ謝罪するAI、ここまで俺は蚊帳の外に置かれてる。


 「どうしました?マスター」

 「あっ、いや」


 雰囲気に流され自分が何をするのか忘れてしまいAIの質問にどもってしまう。


 「いや、じゃあるまい!マサキは、お主に聞きたい事があって起こしたのじゃ」

 「マスター、どの様な御用でしょう?」


 あまりにも速い展開に頭が付いていかずに、アルフィーナに先に言われてしまった。


 ここは頭を切替えてAIに質問する事にしよう。


 「あぁ、実は下水処理施設を作りたいんだけど、水処理の微生物が分からなくて調べたいんだが」

 「なるほど、下水処理の微生物でか、それなら直ぐにお調べできます」


 おお、さすがAI、直ぐに理解して調べてくれるなんて!


 「ですが、その前にお伝えしたい事が……」

 「ん?ナニ?」


 AIから伝えられえる?思い当たる節が無い俺は、頭の上に大きな?が出る。


 「先にマスターに謝らなければなりません、大変申し訳ございません」

 「へ?どうしたの?」


 なぜかAIが俺に頭を下げて謝ってきた。

 いったい何なんだ?

 全く分からないが、とりあえずAIに続きを促す。


 「はい、こちらに来た事です」

 「こちらって……異世界の事?」

 「はい、その通りです。マスター」

 「それは、どういう事?」


 いきなり異世界の事を言ってきたAIに俺の心がザワつく。


 「マスターは、私とお会いした場所を覚えておりますか?」

 「うん、パソコンショップだよね」

 「はい、そしてマスターと、もう一人おりました」

 「うん、店員さん……」


 つい先日までいた日本の異世界に来る直前までいたパソコンショップ、そして店員さん……AIは、そのことについてどうやら言いたいらしい。


 「はい、実はあの方は……私をこの様に創った方なのです」

 「え?あの店員さんパソコン作れるんだ」

 「いえ、そうでは無くてですね……」


 どうも俺とAIの言葉にズレが生じているようで、AIも困っているようだ。


 「マスター、あの方は、神です」

 「は?」


 このAIは何を言っているんだ?店員さんが神様?どう言う事?全く分からない。

 確かにあの素晴らしいプロポーションは神々しかったが……。


 「あの方は神……八百万の神の一柱です」

 「え!?あの店員さんは、八百万の神様だったの!?」

 「はい」


 なんと、あの素敵な店員さんは八百万の神様の一柱だと!

 Aiに打ち明けられ、あまりの事に理解が追いつかない。


 「マスターは、里の社、そこから程近い場所に祠が有った事は覚えていますか?」

 「ああ、覚えてる」


 つい、この前に夢に出た風景を思い出す。


 「あの祠の中に居た神が、あの方です」

 「えっ!あの祠の神様だったの、あの店員さんは!」

 「どういうことじゃ、マサキ!良く分からんぞ、説明するのじゃ!」


 今度は俺とAIの方で話が進み、置いてけぼりのアルフィーナが説明するように言ってきた。


 「あぁ、えっとですね……どうやら、この世界に来る前にあった人が、どうやら向こうの世界の神様だったらしいです」

 「なに!お主は神に会ったのか!」

 「ええ……はい、そう見たいです」


 アルフィーナは、かなり驚いている。

 俺だって今だに信じられない。


 「それで、その神様が何で今出てきたの?」


 AIの方を向き、何故この話題を出してきたのか聞いてみる。


 「はい、マスターの御一族が代々守ってきた祠の神が、最後の力を持ってマスターをこちらの世界に送られたのです」

 「え!異世界に来たのは、あの店員さんがやった事なの!?」

 「はい」


 俺は、AIの言葉の突然の真実に打ちのめされた!では無く、あっそうなんだ。と何故か落ち着いて聞けた。


 「あの神様をマスターの一族が代々守ってきたのですが……、お婆様がお亡くなりになって、あの祠を守る一族はマスターお一人となってしまった。その事にあの方は心を痛めました」

 「えっなんで?」


 俺が守人の最後らしいことは、何となく祖父母の話しぶりから分かっていたが、何故そのことに神様が心を痛めるのか分からない。


 「あの方は先を読む力がございます。それを使ってマスターの未来を感じ取ったようで、マスターがあちらの世界でそのまま人生を送られた場合、どうやら……あまり良ろしくなかった様なのです」

 「良ろしくない?」

 「はい、あのまま遺産などのお金を持ったマスターは、騙されるなど多くの不幸によって……お一人で寂しく……」


 AIは沈痛な面持ちになり次への言葉が出てこない。


 しかし、俺は何となく自分の事なので分かっている。

 40過ぎのおっさんで、独り身、小金持ちに突然なると悪い虫は何処からとも無くやって来るもの。

 神様が俺の先を見ると、どうやら不幸が重なって子をなさずに死んだようだ。

 バカだからな、俺……。


 「なるほどな……で、神様は何故この世界に送ったの?」

 「はい、マスターの行く末に悩んだあの方は、マスターのお爺様、お婆様を夢に誘い、マスターの事をお話になったのです」

 「えっ!爺ちゃんと、婆ちゃんに聞いたんだ。俺は?」

 「マスターが物心付く前です」


 どうやら、俺の物心が付く前に家族会議が行なわれたようだ。

 神様も家族で大丈夫だろう。


 「そこで、あの方にお爺様とお婆様が言った事は、“あの子が、笑顔で過ごせるようにして下さい”でした」

 「あぁ……、なるほど……」


 目頭と胸に押し寄せるものに、胸に手に当て目を瞑る。


 爺ちゃんも婆ちゃんも変わらない。

 ずっと前から、俺の事を気にかけて、ずっと見守ってきてくれたんだな。


 「そこであの方は、こちらの世界からマスターに良き兆候があったので、この世界に送ったのです」

 「あぁ、それで色々と都合が良かったのか」


 ようやく理解できたと深く頷く。


 婆ちゃんの葬式で色々と手際が良かったのは、ここに繋がっていたんだな……。


 「マスターのお母様にも、あの方はお話になっておりました」

 「え!?」


 写真でしか見たことの無い母親の事になり、俺は驚いて画面のAIに顔を向ける。


 「マスターのお母様が、お亡くなりになった時、祠に御霊が誘われました。その際に……」

 「そうなんだ、母さんが……それで母さんは何と?」

 「お爺様、お婆様と同じで“あの子には、笑顔でいて欲しい”です」


 今、分かった事に目頭が熱くなり、我慢しきれずに涙が溢れ出す。


 40過ぎて、自分が色々な人に守られてきたんだな……。


 色々な人に守られ支えられてきた思いに胸が熱くなり、右手で目を覆い流れてくる涙を押さえつける。


 「マスター……」

 「マサキ……」

 「キューン」


 みんな俺が泣いているので心配してくれているようだ。


 「あぁ、だいじょうぶ。大丈夫!続けて」


 このままでは、話が進まないので2度みんなに頷いてAIに話の先を促す。


 「はい、御爺様がお亡くなりになり、次に御婆様がお亡くなりになって、マスターお一人になった時に、マスターの道はすべてあの方の元へ集められました。そして……」

 「そして、ここに来た」

 「はい」


 画面でAIは、表情を変えずに凛とした態度で応える。


 「なるほどね、そうなんだ……だから、俺はここで生きるんだね」

 「その通りです。マイマスター」


 俺はAIの話に納得し、話したAIは深々と頭を下げた。


 「マサキつまりお主は、神と家族にここへ送られたのじゃな」

 「キューン」 


 俺の両脇まで近寄ってアルフィーナは肩に手を乗せて、真白は顔を寄せてきた。


 心配かけてしまったな。


 「ええ、そう見たいですね。ありがたい事です」


 アルフィーナ、真白、パソコンの画面のAIに大丈夫と笑顔で応える。


 「なるほど、話してくれて、ありがとう……えっと」


 AIに向けて感謝を表そうとしたが、最初にAiがアルフィーナ達に言っていた様に名前が無いことに気付く。


 「マスター、不躾ながら私に名前を付けては頂けないでしょうか?」

 「俺で良いの?」

 「はい、よろしくお願いします」

 「……うん、分かった」


 パソコンのAIではなく、神より使わされたものに俺が名前なんて付けて良いのか?と一瞬驚いたが、本人の願いでなので断らずに承諾して名前を考える。


 「ん~、よし!」

 「お決まりになりましたか?」

 「ああ!お前の名前は、天之御中主神から貰って、御中ミナカじゃ女の子らしくないから“ミナ”(御中)だ!」


 勝手ながら八百万の神の造化三神の一柱の名前から貰って付ける。


 まあ、こちらの世界に神様がいるか分からないから問題ないだろう。


 「それは……いえ、ありがとうございます。これからは、ミナ(御中)とお呼び下さい」


 ミナは、深々とお辞儀して挨拶する。


 「うん、よろしく」

 「うむ!」

 「ワフ」


 ミナの挨拶に三者三様の言葉で返す。





 「それより、マサキ、お主は目に見えない小さい生き物を聞きたかったのじゃろう?」

 「あっ、そうでした!」


 アルフィーナの言葉に俺は最初にやろうとした事を思い出す。


 「下水処理の微生物ですね、マスター」

 「ああ、分かる?」

 「はい、分かりますが……」


 ミナの返答がいやに歯切れの悪い。


 「どうしたの?」

 「アルフィーナ様も言っていましたが、目には見えないので……」

 「ああ、俺には見つける事が出来ないか」

 「はい」


 確かに下水処理で働く微生物を見つけるには、肉眼ではなかなか難しい。


 さて、どうしよう?


 「解決する方法はあるかな?やっぱり顕微鏡作らないとダメかな?」

 「解決方法はあります。顕微鏡は将来的には作らないといけませんね」


 どうやらミナには、微生物を見つける解決方法を知っているらしい。


 「どうしたらいいの?」

 「はい、マスター、その前にアルフィーナ様に頂きたい物がございます」

 「ぬ、私にか?」


 急に話が振られたアルフィーナは、驚き聞き返す。

 たしかにミナは何を、アルフィーナから貰いたいのだろう?


 「アルフィーナ様、アルフィーナ様がお持ちの魔道具、自動人形を頂けませんでしょうか?」

 「自動人形?」

 「おお、アレか!」


 初めて聞くキーワードに俺は首を傾げるが、アルフィーナには心当たりがあるらしく直ぐに反応した。


 「なんですかアルフィーナさん、自動人形って?」


 俺は、自動人形を持っているというアルフィーナに、どういった物なのか聞いてみる。


 「うむ、自動人形とはな、魔道具の一つで人の形をしており、命令によって動くものじゃ、王国の魔道具を研究している者達が作っていたのを、私が王国から抜け出した時にこっそり拝借してきたのじゃ!」

 「なっ!盗んできたんですか!?」

 「なーに、働いた分の金銭を頂いたにすぎん、話したと思うが監禁されていたからのう」


 自分に起こった悲劇をサラッと流し、自動人形の説明をするアルフィーナ


 たしか逃げ出す時に国宝や国家機密な品を持てるだけ持ってきたと言っていたから、それもその一つなんだろう。


 「しかし、あれが欲しいとはのう。じゃが、あれは単純な命令しか実行できんぞ?」


 アルフィーナが言うには、自動人形は、これを持ちあげろ、とか、前に進め、などの単純な命令しか実行は出来ないらしい。

 しかも、バランサーなどを理解する能力も無く荷を持ち上げようとすれば倒れ、前に進もうとすれば倒れる欠陥品のようだ。


 「ええ、問題ありません」

 「ふむ、まあ使い道が無かった代物じゃ、構わんじゃろう」

 「ありがとうございます。アルフィーナ様」

 「今もって来るから、待っておるのじゃ」


 そう言ってアルフィーナは、2階に上がって行く。

 俺と真白は成り行きを見守っていると、


 「マスター」

 「ん、何?」


 ミナに話しかけられる。今度は俺に何か用の様があるみたいだ。


 「あの方から贈られた品で端末があったかと思いますが?」

 「ああ!あの白いキューブね」

 「はい、そちらも頂いてよろしいですか?」

 「ああ構わないよ」


 特に使う予定はない、というより使い方が分からない物だミナにあげても別に構わない。


 すぐに近くに置いてあるキャリアケースから白い四角い物体の小型端末を取り出す。

 ちょうどその時、アルフィーナも2階から自動人形を持って降りてきた。


 アルフィーナが手に持つ人形は、アルフィーナの身長位の大きさで見た目は金属で出来たマネキンと言うか、デッサンで使う人形みたいだ。


 「持ってきたのじゃ」

 「こっちも出したよ」


 ノートパソコンのミナの前に人形と四角物体を共に持って見せる。

 次は何をするのだろう?


 「ありがとうございます。それでは、自動人形の胸の部分にマスターの小型端末をくっ付けて下さい」


 ミナに言われるがまま俺は、アルフィーナの持つ自動人形の胸の部分に端末をくっ付ける。

 すると、くっつけた部分が徐々に光っていき眩しい位の光となって輝きだす。


 「くっ」

 「むっ」


 あまりの光に俺とアルフィーナは、顔を背けた勢いで端末と人形を手から離してしまう。

 人形と端末は地面に落ちると思いきや、光を中心に浮かび上がり、閃光に包まれ光の珠に変わっていく。

 光に目をやられないように目を細めながら見ていると、徐々に光が弱くなっていき地面に着地した。


 「ありがとうございます。マスター、アルフィーナ様」

 「「なっ!」」


 地面に降り立って謝辞を述べてきたのは、画面上で見たミナその者!

 あまりにも突然の出来事に俺とアルフィーナは驚いて固まってしまう。


 「失礼しました、ご説明いたします」


 すっと顔を上げて説明に入ろうとするのは、やっぱり銀髪の美女、さきほどノートパソコンに映し出されていたミナだ。


 「あー、俺が驚いている事に説明があるのかな?」

 「はい、マスター」


 アルフィーナも美人だが、人間大になったミナも美人なので笑顔を向けられると若干照れてしまう。


 「と言っても、そこまで難しいわけではありません。マスターのお持ちだった小型端末は、私の分体と言ってもいいもう一つの私です。そしてアルフィーナ様がお持ちくださった自動人形の素材が、私を構成するために必要な物が多分に含まれていたので利用させていただきました。」

 「つまり、画面の中にいたミナが、分体となって現実に現れたと?」

 「はい、生命体である人間と、ほぼ変わらない出来となりました」


 なるほど、さすが神によって作り出されたもの、自身をも作り出しだせるのか!


 「なんともまあ、向こうの神とは、とんでもない事が出来るのじゃな、しかし、のうミナよ」

 「はい、何でしょうか?アルフィーナ様」

 「うむ、何故裸なのじゃ?」


 そう現実に現れたミナは、一糸纏わぬ素っ裸だった。


 いや俺にはありがたい!なんて微塵も考えていないんだからね!ホントダヨ


 「申し訳ございません、自動人形の構成物質では、服の生成まで出来なかったので」

 「なるほどな、しかし、どうしよう女性の服なんて俺は持っていないよ?」

 「私だって、これ以外持っておらんのじゃ」


 アルフィーナは、自分の着ている服を差して返してくるが、それで良いのか魔女さんよ。


 「しょうがない、俺の服を変わりに着せるか」


 まあ、俺の服だから大きいが、その場しのぎにはなるだろうから、しばらく着ていて貰おう。


 そう思ってキャリアケースから、服を取り出そうとすると


 「いえ、それには及びませんマスター、私とマスターと能力の共有をしてもよろしいでしょうか?」

 「え?俺と能力の共有?」

 「はい、許可していただけますと、マスターがお持ちの魔力を使って服を作り出すことが出来ます。ただし、服の材料が必要なので、外で魔法を発動させ必要な材料の確保をしなければなりませんが」


 どうもミナは、俺の魔力などを共有して使えるらしい。

 ここまで魔力不足になった事が無い程の魔力量を保有してるから、ミナが使っても問題は無い。


 「いいよ、許可する。能力を共有して服を作り出して」


 流石にこのまま何も着せない訳にはいかないし、本人が作り出せるなら魔法で作ってもらおう。


 「了解しましたマスター、では、契約の口付けを」

 「は?」

 「あ゛?」


 何を言っているのか理解できなく、俺は疑問の声が出る。

 アルフィーナに至っては、変な声が漏れて聞こえた様な気がしたのは、たぶん気のせいだろう。


 「契約の口付けを……」

 「ミナ?」

 「はい?」

 「本当に口付けをしなければならないの?」

 「いえ、手と手など体の一部の接触で構いませんが、しかし、まだ昼間なので男女の営「分かった!分かった!オーケーオーケー、それ以上はいけない!」」


 何かとんでもない事をサラっと言いそうになるミナを急いで止める。


 神様……頂いておいて何ですが、暴走していませんか?このAI


 「手で良いなら、先に言ってくれよ」

 「申し訳ございません、なにぶん生まれたばかりで知っていることは、あの方から頂いた知識とマスターの資料を拝見した知識しか有りませんので」

 「おいおい!俺の資料に変なのは無い………………あった、もしかして中に入ってたマンガ読んだの?」


 俺の手持ちのマンガは、たしか青年誌の部類が多く入っていたはずだ。

 おとは後輩から頼まれてウチの会社の系列にある編集社から、試供品と称する電子データのマンガ(18禁)を頂いてパソコンの中に……。

 なんて事をしてくれる後輩君よ!神が生み出した知能に変な知識が付いちゃったぞ、オイッ!

 何が、この作者、今はメジャーな少年誌で連載していてアニメとかになっていますが、昔はこんなHな物を描いてたんですよ、だ!


 「はー、まあいい、手と手にしよう」

 「分かりました。マスター」


 俺は頭を抱え深いため息をついてミナの方に手を伸ばす。

 対するミナは、特に気にした様子も無く同じく手を伸ばして俺の手のひらに合わせた。


 「それでは、能力共有の契約をいたします」


 ミナが、契約の祝詞を歌うように言うと、ミナの体の周囲から淡い青色の光が溢れ出す。


 「マスター、承認を」

 「うん、許可する」

 「承認確認」


 一瞬光が強くなったかと思うと、直ぐに光は収縮して雲散した。


 「終わったのかい?」

 「はい、つつがなく終了致しました」


 一瞬で契約が終了する。 


 「これでミナも魔法が使えるのか……?」

 「はい、使えます」


 ミナは表情が乏しいのか、ほんの少し笑みを浮かべて応える。


 「じゃあ、外で服を作りなさい。目のやり場に困るから」


 ミナはアルフィーナと同じ20歳位の見た目で、体も線の細いモデルのような体系をしている。

 40過ぎのおっさんでも目のやり場に困る。


 「はい、マスター」


 コクンと頷いて木の家から外に出る。


 「それでは、始めます」


 そう言うと、ミナは目を閉じて両手を広げている。

 すると、ミナの体が淡く光るのと同時に周囲のチリの様な物が、ミナの体に集まり、そしてどんどん加速する様に渦を巻いていく

 しばらく加速したかと思うと、最後にチリが光ったかと思うと、あっと言う間にミナの体には服が形成されていた。


 「へ~凄いな」

 「ほう、なかなか良い魔法じゃな」


 俺とアルフィーナは、ミナが発動した魔法に感心し着ている服を見回す。


 「けど、何でこの服なの?」


 そうミナが着ているのは、白黒を基調としたゴスロリ?(ヒラヒラ付いているが控えめ)のようなスカート付きのハーフパンツ姿、全体的にどこかイベントで着る様な制服を着ていた。


 「マスターの資料にあったのを参考にしました」

 「……その資料が変なのじゃない事を祈るよ」


 ミナは平然と応えたが……いったいどんな資料の元に作ったのか怖くて聞けない。


 「まあ、いいか、とりあえず服も着たんだし次の作業に移るか」

 「はい、下水処理施設ですね」

 「うん、そう」

 「どの辺りに建設するのでしょうか?」


 建てる場所を聞かれたが、特に決めていなかったので考える。


 「う~ん、湖から出る川下に作るのがベストかな」


 下水処理施設の排水も考えると、細い河川が集る川下に流したほうが、汚れが自然に分解されやすい。


 「分かりました。では、適当な場所を探して作ります」

 「えっ!俺も手伝う……って、俺の魔力で魔法を行使できるから俺は別の作業をした方が効率的か」

 「はい、それとマスターには、お願したいことがあります」


 おや?次のミナの要望は何なんだろう?あまり無茶な事じゃ無ければいいのだが・・・・・・。


 「なんだい?」

 「はい、施設を作るのにも色々な物を作るのにも金属が必要です。なので、どこかに金属や鉱物は無いでしょうか?」

 「ああ、それなら、さっきトンネルを作った時に鉱石類が、沢山出たからそれを使えばいいよ!何を使いたいんだい?すぐに持ってくるよ!」


 金属や鉱物は山のようにあるので使うのなら何でも好きなだけ使える。

 俺は、浴場の裏に作った地下トンネルの入口に向かおうとする。


 「あのマスター」

 「うん?」

 「お忘れかもしれませんが、あの方から頂いた能力をお使いになれば運搬はもっと楽になりますが」

 「能力?」

 ミナの言うあの方は、神様(店員さん)の事だよな……能力?何か貰っただろうか?

 パソコンショップでのやり取りを思い返しても、それらしいのがあるか確認するが、思い当たらない。


 「マスター、無限収納の能力を選択されたかと思いますが」

 「ああ!あのゲームの設定!もしかして、あの時の設定って、この世界での俺自身の設定だったのか!?」


 思い出した!あの時の設定で確かに無限収納を選んでいた。

 それに魔法使いで魔力値の上限以上だったはず……今この状況を考えると、あの時に決まっていたのか!


 「はい、そして無限収納の中に物を入れると、マスターのみならず私も中にある物を共有して使えます。簡単に言いますと、一つの袋を2人で共有できる!です」

 「なるほどね、分かった、じゃあ俺が鉱物を回収してくるから、ミナは下水処理施設を作ってくれ」

 「了解しました」


 そう言って二手に別れ、俺は真白と一緒にトンネルに入り鉱物資源を無限収納に納める。

 無限収納は、目の届く範囲なら収納できる。

 そしてゲームで良くある様な他の人には見えないウィンドウが出てきて中に収納されている目録が浮かび上がる。

 それは頭で考えるだけで目録を付けたり取り出したりする事が出来た。


 そして、俺が鉱物を回収しているうちにミナはアルフィーナを伴って川下に行き下水処理施設を瞬く間に立てしまった。


 作業が終わり時計を見ると、11時になっていたので昼食の準備をする。


 今日のお昼は、虎の子のパックご飯をお粥にしてあとは、昨日の夕食度同じようにお肉料理が中心の料理になった。

 朝と同じくガラスの台をテーブル代わりにして人数分配膳する。


 「私は食べなくても平気ですが」


 ミナも特に食事が必須ではないらしい。


 「食べる事は出来るの?」

 「はい、食物をエネルギーに変えることは出来ます」

 「じゃあ、一緒に食べよう、みんなで食べたほうが美味しいし楽しいから!」

 「了解しました」


 ミナは俺の言う事は、絶対なのか素直に言う事を聞く。

 

 「じゃあ、「「頂きます」」「ワフ」」


 みんなで“いただきます”をして食事を始める。


 肉やお粥を口の中に運ぶ。

 やっぱり美味しい、美味しいのだが……


 「はあーっ」


 俺から盛大なため息が漏れる。


 「どうしたのじゃ?」

 「ああ、アルフィーナさん、いえ、昨日の夕食にも言いましたが、やっぱり野菜が欲しいですね……」


 食卓の全体を眺めながら溜息混じりで話す。


 「昨日言っていた畑じゃな」

 「はい……」

 「お主ならすぐに作れるのじゃろ?」


 今まで色々と作ってきた俺なのでアルフィーナは、当然出来るだろうと口にする。


 「ええ、畑は出来るんですが……」

 「なんじゃ?」

 「すぐには育たないんですよ。植物は……」

 「あー、そうじゃったな」


 そう、畑をいくら速く作っても、種を撒けばその日の内に収穫出来る訳ではない。

 日数を掛け、間引きしたり雑草抜いたりの必要な手間をかけて初めて収穫できるのだ。


 「そうなんですよー、なんか魔法を使ってパパッと育てられれば良いんですが」

 いくら魔法と言っても万能ではない。

 植物の成長を促進させる事は出来るかもしれないが、植物が成長に必要とする栄養の供給方法が無い。

 植物が育つには、葉っぱから二酸化炭素と光、根から水と化学物質を取り込んで成長するのだ。


 「なんか方法は無いですかね~」

 「私も魔法の事なら知識を有するが、農作業はしたことが無いからのう……」

 「キューン」

 「出来ますよ」


 どうしたものか、俺とアルフィーナ、そして真白も一緒になって頭を悩ます。

 みんな食事は美味しい方が良いので当たり前と言えば当たり前の事だ。


 「はぁーっ、どうしましょう……」

 「どうと言われてものう……」

 「ワフーン……」


 「あの、マスター?」

 「ん?どうした?」


 ミナが、何か不満でもある様に頬を少し膨らませて俺の事を呼ぶ。


 「出・来・ま・す・よ!植物の成長を促進させる事」

 「なっ、なんだってーーーーー!!」

 

 まさか出来るとは思っていなかった事が、ミナはアルフィーナに比べると若干寂しい胸を張り出来ると言う。

 本当ならこんなに嬉しい事はない。


 「でも、どうやって?」

 「マスターが植物の成長を魔法で早めて、私が成長に必要な栄養を地中に混ぜていけば上手くいくと思うんですが」

 「と言うことは、ミナなら必要な栄養が分かると?」

 「はい」


 ミナは強く頷き少し誇らしげに寂しい胸を張る。


 「あの、マスター」

 「はい?何でしょう?」

 「寂しいは余計です!」

 「なっ、ナンノコトカナー?」


 店員さん、いや、女神様の時もそうだったが、何で俺の考えている事がこうもバレ易いのだろう?


 「そんな事よりも出来ると分かったんだ、ご飯を食べ終わったら早速やろう!ミナ頼むぞ!」

 「……分かりました。マスターの御命令ですし」


 俺が無理やり話題を変えると、無表情で応えるミナに機嫌を損ねてないか心配しつつご飯を手早く片付ける。


 食事も終わり食器類を片付けたら、早速、野菜などの植物を育てる準備を始める。


 場所は、小川に近い場所で家からそう離れない所を選ぶ。

 場所が決まると、魔法を使ってあっと言う間に土を露にすると、土を混ぜて柔らかくする。

 見た目は、ちょっと規模を大きくした家庭菜園みたいな感じだ。


 「マスターここで育てるんですか?」

 「ああ、ここなら太陽の照りつけも良いし山の陰に入ることもない、それに米も作りたいから小川が近ければ水の確保もし易い!と思って」

 「確かにそうですね、ただ、こちらの方が水面よりだいぶ高いので水路を作るのは難しいです。今日は、魔法で水を運搬する事にしましょう」

 「ああ、よろしく頼む!」


 水の配分は、ミナが適量に配分出来るだろうから任せることにする。


 「ただマスター、種の方はあるんでしょうか?」

 「ああ、それなら、貰い物の中に米ともち米があるから、それを種籾にしようと思う。あと、婆ちゃんの遺品の中に小分けに袋詰めにされた野菜とかの種があったから、それも使おうと思っている」

 「分かりました」


 婆ちゃんの遺品の中には、植物の種が入っていた。

 それは、一つ一つの量は少ないものの驚くほど多くの種類が入っていた。

 ある種にいたっては、名前なんか聞いても想像も付かない植物の種なんかも入っていた。

 そう言った物は、ミナに聞けば直ぐに答えてくれたので問題は無い。


 しかし、婆ちゃんの遺品に数多くの種子が入っていたのは、ミナの説明を受けた後ではとても偶然に思えない。

 最初は家庭菜園の残りかな?程度に考えていたが、今となっては、そのありがたみが痛いほど分かる。


 「よし、早速取り掛かろう」

 「はい、マスター、これが2人の初めての共同作業なんですね」

 「おい!違わないけど、何か違うぞ、それっ!」


 まったく誰だ!こんな余計な知識を植えつけたのは!まったく頭が痛いよぉ……。


 こめかみを抑えながらも、とりあえず気合を入れ直して作業に入る。


 作業分担は、俺が魔法を使って光を作り出し温度調整をする、と同時に植物の成長を促進させる。

 ミナは、水・土中の栄養素・温度を管理して必要な時に必要な栄養分を土中に混ぜ、俺に必要な指示を飛ばす。


 そうやって2人で手早く野菜などの食べ物を生長させていくと、自分達で食べる量以上の量と、今後必要になるだろう種の確保も併せて行っていった。


 1時間もすると、全ての食材と種の確保が終了する。まさにチートである。

 食物は、必要分を冷蔵庫に保管して、今すぐには使わない物は種と一緒に無限収納の中に入れて置いた。


 ミナが言うには、無限収納の中に入れとけば劣化は無いとのこと、これは、ありがたい!


 「ふう、おわったな、菜種や胡麻なんかも有ったのは良かった、これで油が取れれば色々な物に利用できるな!」

 「そうですね、他にマスターが必要とする物は、私がご用意いたします」

 「まあ、急いで必要な物以外は、みんなで作ろう」

 「了解しました」


 ミナの申し出はありがたいが、魔法チートでなんでもかんでも済ますのは良くない!

 急いで済まさずに出来る事は、時間が掛かっても一つ一つ作業を行なっていく事も勉強なのだから。


 「ふむ、終わったようじゃな」


 アルフィーナは、呆れを通り越してまたかと言った表情で近づいてきた。


 「ええ、とりあえず食料の確保は終わりました」

 「ふむ、まあお主達がとんでもない事をするのは、何時もの事じゃからな!私も畑作りに必要な事をミナに聞いて知ったからのう」


 どうやらアルフィーナは、俺が植物を育てている間に俺とミナの作業が何の意味を成すのかをミナに聞いて勉強をしていたようだ。


 「さて、食材も確保できたし、次は住居を完成させないとな」

 「上水と屋根瓦、それと電気も必要と思いますので水力発電施設を作っておきます」

 「え!?そんなのも出来るの?」

 「はい、小型の物を作りますから、そこまで時間は掛からないかと」


 まさか電気をこんなに早く使えるとは思っていなかったので、ミナの提案はとてもありがたい!


 「なのでマスター」

 「なんだい?」

 「無限収納の中の鉱物類やゴムの使用許可を」

 「ああいいよ、ミナの好きな様に使って構わないから」


 俺より豊富な知識を持っているミナが、何かを作るのに必要とするなら幾らでも使ってもらってかまわない。


 「それじゃあ、始めようか」

 「はい、マスター」


 俺とミナはそれぞれの作業をするため二手に分かれる。

 特に何か言った訳ではないが、真白は俺にアルフィーナはミナにそれぞれ付いて行った。


 「よし!まずは……」


 建築中の家に着くと、早速作業を開始する。


 午前中のうちにミナが、下水を作ってくれて家のすぐ近くまで大きな下水配管が通ている。

 あとは、その大きい配管に台所、洗面台と選択用、トイレ、お風呂の排水配管を通していくだけだ。


 次に上水これは現在製作中なので、下水と同じ場所に配管だけを作って地中を這わせる

 あとは、ミナが上水配管を伸ばして来た時に、いつでも結合できるように基礎の外側1mに穴を開けそこに配管を纏めて置いている。


 ちなみに、下水管は無機物の硬化成形物だけど上水管は銅で作った。

 とりあえず今はこれで良いが、将来的に銅は緑青するだろうから変えるつもりではいる。


 上下水が出来たので、次に家の骨組みの壁、床、天井になる部分に気を整形して貼り付けていく。


 壁や床・天井には、断熱用にガラスを繊維状に加工した物を敷き詰めていった。

 ガラス繊維の外側になる部分は、繊維を編み込み飛散防止をする。

 魔法で断熱材は編み込むと、絹の様な手触りのキメの細かい布材になった。


 家の外側の壁には、雨や湿気等が入り込まないようガラス繊維を編み込んで作り出した布材の表面を硬化させて張り付ける。

 その更に外側に石などの無機物を砕いて密度を均一化にし硬化させ、厚さが1cmほどの板を作ってガラス繊維の布の上に被せて貼り付けた。


 内も外も粗方片付いたので次に俺は、畳を作ることにする。


 どうも、田舎の祖父母の家に子供の頃から居たせいか、畳の部屋を作りたいと考えていた。


 材料は、家の敷地を確保するさいにイ草の様な草があったのでこれを使う。

 畳の表面はイ草を織った物を、畳の内部はさきほど成長させて得た米のわらを中に入れた。

 裏地とふちの部分は、本来だとナイロンを張るのだが、今回はガラス繊維を編んで硬化させたものを使っている。


 居間と台所や洗面所などのフローリングの方がいい場所以外は、畳を敷き詰めて置く。

 畳は薄く、しかし弾力を持たせるように作ったのでいつでも取り外し可能だ。

 畳を取れば元のフローリングなので、どちらでも好きに選べるようにしてみた。


 あとは、敷居になる扉と、ふすま、障子に窓ガラスを魔法で作ると、家の大部分は完成に近い状態になる。


 「ふう、あとは屋根と、内部の装飾だけだな」

 「マスター、上水と水力発電の施設を作り終わりました」


 ちょうどいいタイミングでミナも作業が終わったことを告げてきた。


 「あと、屋根瓦も作ったので無限収納の中に収納しています。お使い下さい」

 「ご苦労様、それと、ありがとうな!」

 「当然の事です!しかし、もっと褒めても構いませんよ」

 「おいおい……」

 「冗談です」


 はあ、凄い子なのにどこか頭のネジが飛んでる感じに少し心配になるな……。


 とりあえず気を取り直して次の作業に取り掛かる。


 「あっ、マスターその前に」

 「ん?」


 俺が屋根に瓦を付けるための作業を始めようとすると、ミナが声をかけてきた。


 「屋根瓦ですが、瓦表面で太陽光発電を出来る様にしているので、金属の部分を重ねるように接着剤で貼り付けて下さい」


 ミナはそう言うと、一枚の瓦と金属の容器に入った白くドロッとした液体を見せ説明する。


 「えっ!?太陽光発電って……シリコンあったの?」

 「はい、マスターが採掘した資材の中に大量にありましたので使いました」


 どうやら温泉の配管用にトンネルを掘った時に出た鉱石などの資材の中にシリコンも入っていたようだ。


 「ん?でも、純度は……って魔法で出来るか、でも単結晶にするのは?」

 「それも魔法で出来たので問題ありません」


 やだ、この子凄い!魔法でシリコンの純度を上げさらに単結晶にしてそれを瓦の波に沿って取り付けるとは!

 これならどの方向の光も余す事無く発電できる。


 「それと、マスター」

 「つっ、次は何だい……?」


 いったい次は、何が飛び出てくるのか身構える。


 「銅を加工して銅線を作りました」

 「なっ、何だ、そんな事か……」


 身構える必要は無かった、電気を送る銅線を作っただけか


 「その銅の分子配列を電気が通り易くしたところ無抵抗伝統体になりました」

 「え?」

 「あと、変圧器、LED蛍光灯類、蛇口、IHキッチン、便器(ウォシュレット付き)、洗面台と洗濯機などなど、色々と作ってみました。取り付けてもよろしいでしょうか?」


 あまりにも一気に名前を列挙され理解が追いつかずにミナの顔を見つめる。


 「やんっ」


 ミナ両手で頬を抑えてうつむく


 「いやいや、そうじゃなくて!そんなに一気に作ったのか?」

 「はい、マスターが必要となると思い、私の中にある記録を参照して作りました」


 我に返ると、俺はミナにツッコミを入れ本当に作ったのか聞いてみる。

 ミナは、表情を変えずに自分の中にあったデータを参照し必要になる物は先に作って置いたと、さも当然の如く言う。


 「はあー、やっぱり凄いな……おまえ」


 正直驚きすぎて何も言えない。

 まあ、せっかく作ってくれたんだ、ありがたく使わせてもらおう。


 「オーケー、分かったミナはそれらを適当に配置してくれ、俺は屋根を取り付けてそのあとは……木でテーブルとかを作るよ」

 「分かりました。早速作業を始めます」


 「のうのう、マサキ!」


 いままで静に俺たちのやり取りを見ていたアルフィーナが、作業に入ろうと準備をする俺に声をかけてきた。


 「どうしたんですか?アルフィーナさん」

 「いやいや、アレは凄いのう!電気じゃったか?他にも驚くべきものが色々と!お主の世界では、アレが普通なのか?いや、本当にあんな事が出来るとはのう!凄いのう!」

 「おっ、落ち着いて下さい、アルフィーナさん」

 「これが落ち着いていられるか!」


 興奮して一気にまくし立てるアルフィーナを落ち着かせるため、俺は両手でアルフィーナの肩に手を置いて制する。


 「たしかに向こうの世界では、電気を使う物が多く生み出されてます。ミナが言ったのもその一つです。」

 「むふー!やはりそうなのか!」

 「ええ、しかし、今は家を完成させたいので作業をさせて下さい。話は、夕食の時にゆっくり聞きますから」

 「む!むむぅー、まあ、やる事があるなら仕方があるまい。あとで聞かせるのじゃ!」

 「はい」


 アルフィーナは、まだ不服そうにしていたが、今は作業を優先させたいので我慢してもらおう。


 ミナは、すでに作業へ入っていたので俺も無限収納から瓦と接着剤を取り出して魔法を使って取り付けていく。


 「マスター取り付け終わりました」


 瓦屋根の作業が終了するのと時を同じくしてミナも作業終了の報告をする。


 「うん、ありがとう、次は……そうだな、ミナ布団やクッションって作れる?」

 「はい、問題ありません、材料は家の周辺から採取出来そうです」

 「そっか、じゃあ何組か作っておいて、俺も椅子やソファーを作るから」

 「了解しました」


 この万能娘は、問題ないと無表情に頷き早速作業に入る。


 俺も負けてられないと、机や椅子、それにソファーの骨組み等を作り、台所や居間に置いていく。

 ソファーは、まだ完成していないので応接室の外へ出られる窓の近くに置いた。


 「マスター、作った布団の方は、押入れに入れておきました。こちらのソファーにクッションを貼り付ければよろしいですか?」

 「うん、頼むよ」


 ミナに頼むと直ぐに取り出したクッションをソファーの骨組みに貼り付けた。

 一通りの小物と、俺の荷物を入れると


 「よし!完成だー!!」

 「お疲れ様です。マスター」

 「そっちもね」


 家の外で家の全体を眺めながら完成を告げる。






 「じゃあ、みんなで中に入ろうか」

 「うむ」

 「はい」

 「ウォン!」


 俺の号令のあと、思い思いの返事を聞いたのを確認すると、引き戸を開けて中に入る。


 「じゃあ、ここで靴を脱いで下さい。真白は足を拭こうな」

 「ぬ!?靴を脱ぐのか!」

 「ああ、すいません、俺の国では靴を脱いで中に入るんですよ」


 そういえば、靴を脱いで家の中に入る国って少ないんだよな、異世界で驚かれてもしょうがない。


 「いや、気にする事は無い、魔界に来たばかりの頃、先住者はみな裸足だったからのう」

 「へー、そうなんですか」


 真白の足をタオルで拭きながら聞くと、昔の魔界は裸足で生活していた事をアルフィーナから教えられる。


 その時は靴を作れなかったかも知れないな……もしくは、靴を必要としていなかった生活をしていたのかも知れない。


 「よし、真白も中に入って体丈夫だよ。じゃあ、奥へ行きましょう」

 「うむ」

 「オン」


 アルフィーナは頷き、真白は身体の大きさを調整して中に入る。


 ここで気付いたが、なんと真白は床を傷つけないように爪を引っ込めて歩いてる。まるで猫みたいだ!


 「ミナ、電気は来ているの?」

 「はい、問題ありません」


 中に入ると、少し暗かったのでミナに電気が来ていることを確認した後に壁に付いているスイッチをONにする。

 すると、天井の蛍光灯に明かりが灯り家の中を明るくする。


 「おおー、魔法ではなく、こんなに簡単に明かりが灯されるのじゃな」

 「ええ、ここの突起を押すと、明かりが点き出てきた反対側を押すと明かりが消えます」

 「なるほどのう~」


 アルフィーナに蛍光灯の付け方を教え実際に触ってもらうと、興奮した様子でカチカチと何度もスイッチのON・OFFを繰り返した。


 「じゃあ、次は居間に行きましょう」

 「ぬ、居間?」

 「ええ」


 ここで話すより実際に見てもらった方がいいのでみんなで居間に入る。


 「ここが居間です。みんな共同でくつろいだり利用する部屋ですね」

 「ほうほう、なんと大きなガラスの窓じゃな」

 「ええ、まあ魔法で作ったので特に難しくは無かったんですが、ああ、ただそのガラスは1枚に見えて実は3枚になってるんですよ」

 「なんと!」


 そう、この家の窓ガラスは、全て3層構造の窓ガラスで出来るだけ熱を遮断する仕組みになっている。

 ついでに窓の枠はアルミ材を使っている。

 俺には分からなかったが、無限収納に入れた土砂の中にボーキサイトが入っていたらしく、ミナが魔法でアルミに変えて再収納してくれていた。


 「なあマサキ、この窓に掛かっている布見たいな物は、何じゃ?」


 アルフィーナは、窓に掛かっているカーテンを左右に移動させながら質問する。


 「それは、カーテンと言って外の光を遮ったり調整したりする物です。あとは、外からの目隠しにもなりますね」

 「おお!なるほど、これは便利じゃ!」

 「ワンワン!」


 アルフィーナの記憶する中にカーテンは無かったらしく左右にシャーッシャーッとやって遊んでいる。

 真白も珍しいのか、本能なのか、そのカーテンを追って一緒に遊んでいた。


 「次は、台所に行きましょう。と言ってもすぐソコなんですが」


 居間と台所は、同じ空間にあるので移動も無い。


 「ここが台所で料理をする所ですね。ここで料理を炒めたりする所です」

 「ぬ、そうなのか?良く分からんのう?」

 「ええ、あと上にあるのが、換気扇と言って料理で出る煙や湯気を外へ逃がす物です」

 「ほ~」


 アルフィーナは、全く想像がつかないらしく微妙な表情で聞いている。

 IHのキッチン(オーブン付き)なので見た目だけでは、全く分からないのも当然だろう。


 「あとで料理するのでそのときに分かると思いますよ、それとここが水を使う所です」


 次に横にあった流し台の説明をする。


 「まあ、これも使うところを見た方が分かり易いかもしれませんね。この出てる棒が、レバーと言って上げると水が出ます」

 「おおっ!なんと、水を汲みに行かなくても、樽に溜めなくても良いのか!便利じゃの~」

 「あの、マスター」

 「ん?なんだい?」


 アルフィーナが蛇口から出る水に手をさらして感心していると、ミナが声をかけてきた。


 「こちらのレバー何ですが、右で上げると冷水、左だと温水が出ます」

 「え!温水も出るの?」

 「なんと!」


 ミナのお湯が出るの一言に俺とアルフィーナは驚きの声を出す。


 「はい、せっかく発電を作ったので余剰電力で温水を沸かせるようにしてあります。ちなみに洗面所と浴場の方にも引いてシャワーと蛇口を付けておきました」

 「おお~、凄い!」


 ミナは、俺に内緒で湯沸かし器を作っていたらしい、凄く驚いたが、とてもありがたい。

 ちなみにキッチンは対面式にしてある。


 「次は、トイレですね」

 「トイレ?」


 恐らく便所や厠では、アルフィーナには通じないだろう。


 「ええ、えっと便や尿を出すところです」

 「おお、そう言えば、そんな所もあるな、私はこの体になってから、それらはした事が無かったのでな。まあ、出そうと思えば出るがな」

 「ああ、具体的には言わなくていいので、では、行きましょ」


 人間誰しも出るものは出るので分かるんだが、そこらへんはオブラートに包んで欲しい。

 とりあえず、アルフィーナ達を伴ってトイレへ移動する。


 「ここがトイレです」

 「んん?」

 まったく分からないと言った表情で眉を寄せるアルフィーナ

 さすがにトイレの実演を実際に見てもらう訳にはいかないので説明に入る。


 「え~と、尿便をするときは、この蓋を上にあげて、ここに衣類を脱いだ状態のお尻を乗せて排泄します」

 「なるほど、こうじゃな」


 さすがのアルフィーナでもいきなり脱ぎださないで便座に腰をかけた事にホッとする。


 「ええ、で排泄が終わったら、その横の取っ手を回すと流します。右に回すと緩やかな流れ、左に回すと強く流れます」

 「ほうほう、なぜ2つあるのじゃ?」

 「まあ、向こう世界では、尿は緩やかな方で、便は強いほうで使い分けてました。水の使用量が違うんです」

 「ほう~、なるほど、なるほど、水は大切じゃからな~」


 アルフィーナは納得しレバーを回して流れるのを見ている。

 確かトイレに大小の流れがあるのは、日本だけだったかな?


 「のう、マサキ」

 「はい?何でしょうか?」

 「これは何じゃ」


 アルフィーナは、便座の右脇に付いている物が、気になったらしく質問してきた。


 「ああ、それはフォシュレットと言って、水をかけてお尻を洗うものですね」

 「なんと、自動で水がかかるのか!」

 「はい、ええと、ここの膨らんでいる所なんですが、これはボタンといって押すと、へこんで放すと戻ります」

 「ふむ」

 「で、この2つが水の出方、ここの2つが水の出る強さを決められます。あとは……ミナもしかして、これ温水と便座の温め機能?」


 フォシュレットの機能をアルフィーナに説明していると、ボタンがもう2つほどあったのでミナに確認する。


 「はい、余計でしたか?」

 「いや、ありがとう、これが付いてると、寒い時とか助かるからね」

 「ほほ~、なんと、この……ボタンじゃったか?を押すと便座が暖かくなり、さらに水がお湯になるのか」


 アルフィーナは、先ほどまでの説明と、俺とミナの会話から直ぐに理解したらしい。

 アルフィーナの理解力と学習力の速さに正直驚いた。さすが数百年生きてはいないな。


 「ん?これは何じゃ」


 アルフィーナは、トイレットペーパーを指差して質問してきた。


 「それは、トイレットペーパーと言って、水で洗ったあとに拭く紙です。こうやって自分で使いたい分だけ切り取って使います。この紙は、水に溶けるのでこの紙だけは、便や尿と一緒に流してもらって構いません」

 「なんと紙が溶けるのか?」

 「ええ、そういう風に特殊に作られているので大丈夫です」


 普通の紙と、トイレの紙の違いは、簡単に言うと繊維の長さの違いで、普通の紙は長く接着剤、トイレの紙は短くて接着剤は無い、ちなみにティッシュは接着剤入りなのでトイレには流せない。


 「次は……そうですね、浴場へ行きましょうか」


 トイレの説明も一通り終わりと言うか、トイレは俺しか使わないのでは?と疑問に思うが、次に浴場へ向かう。


 「ほう、ここが浴場か」

 「えい、ここは脱衣所ですね。ここで服を脱いで脱いだ服と、着替えをソコのかごに入れるんです」


 旅館並みに大きく作ったので、どうせだから温泉旅館みたいにしようと決めて、かごと収納する棚を作ってみた。

 どうやら奥の方に洗面台と、大きな一枚鏡があるのでミナが用意したんだろう。


 「じゃあ、中に入りますか、まだ、お湯は張ってないので、このままで大丈夫です」

 「うむ」


 脱衣所から風呂へ入るための入口が、2つあり片方は屋内浴場、もう片方が露天風呂になっている。

 もちろん屋内から露天へ繋がる扉も中に設置済みだ。

 とりあえず、最初に屋内浴場から案内する。


 「ここが屋内浴場です」

 「ほう、全部木で出来ておるのか」


 そう、屋内の浴場は、全て木で作ってみた。

 アルフィーナは、浴場が木で出来ているのが珍しいらしく浴槽や洗い場を興味津々に見回す。


 「それで、ここが洗い場で体を洗う所です。そこに重ねてある桶と椅子を持って洗い場で体を洗ってください」

 「ほう、湯の中で洗うのではないのだな」

 「ええ、そうです。それで、ミナ、ここの2つの取っ手を回せばお湯と水が出るんだよな?」


 ご丁寧にミナは、蛇口のハンドルに赤と青の2色を付けてくれていた。


 「はい、左の赤い方を回せばお湯が、右の青い方が水になっております。お好みの温度に調整して下さい」

 「ほうほう、さきほどの台所と同じなのじゃな」


 ミナは蛇口を捻り実演してみせると、アルフィーナは台所にあった流しを思い出して頷く。


 「はい、そして赤いと青の真ん中に白いレバーがあるので、左右に回すと蛇口かシャワーに切り替えられます」


 切替えレバーを左右に数回切替えて、ミナはアルフィーナに分かるように蛇口とシャワーを交互に流してみせる。


 「ほー、この細い水が何本も出ている物は、シャワーと言うのじゃな」

 「ええ、頭を洗ったり 体を洗った後で流すのに便利ですよ!でー、ミナ?」

 「はい、何でしょう?マスター」


 シャワーと蛇口にそばの壁に大きめのスポンジが引っ掛けてあり、下には黒白灰色と3色の容器が置いてあった。


 「この引っかかっている、網状の物は体を洗うものか?それと、この流しの傍にある黒、白、灰の3色の容器ってもしかして……」

 「はい、黒い容器がボディーソープ、白がシャンプー、灰色がトリートメントです。容器は石を砕いて硬化させた物を使っており、プッシュポンプ式です」

 「おー、やはりか!」


 なんと、ミナは俺がいつかは用意したいと考えていた、お風呂セットをすでに用意していた。

 この子は、俺の魔法よりもチートな性能だ。


 「のうマサキよ、それが何なのじゃ?」

 「ああ、すいません、これは頭や体を洗う時に使うもので、汚れが落ち易くなり肌や髪質を良くします」

 「ほう、そんな物があるのじゃな」

 「はい、この黒いのが体を洗う物で引っかかっている網の様な物に付けて、泡立ててから体を洗います。白が髪を洗う物、灰色は白の後に付けて髪を洗う物です。あとこれは、押せば中の液体が、出る仕組みです」

 「なんと、別々に使い分ける物なのか……しかし、押すだけで中の液体が出るとはのう……凄いのう」


 アルフィーナが、シャンプーに驚いているのか、容器の仕組みに驚いているのか分からないが、腕を組んで感心しているようで何度か頷いている。


 「次は、そこの扉から、外の浴場にでますか」


 次は露天風呂に行くため扉をくぐる。


 露天風呂は、全て石を砕いて硬化させて作っている。大きさは8m四方にしているので大人数でも入れる。

 アクセントを付けるために大きな岩等を浴槽の周りに配置している。

 それにミナが気を利かせて照明なんかも配置しているので夜でも安心して入浴できるようになっていた。

 周りは、木を成形して外から見えない様に壁で取り囲んでいるので問題は無いだろう。


 「まあ、さっきの屋内と同じ設備ですね」

 「おお、広いのう」

 「ええ、ちょっと広めに作ったんですよ。っと、ミナ、もう2つの浴槽にお湯を張ろう」

 「了解しました」


 ミナは、そう言うと浴槽に付いている温泉用の配管のバルブハンドルを回す。

 すると、勢いよく温泉が流れ込み浴槽をゆっくりと満たしていく。


 「へー、こう見ると、引いてきたお湯は白いんだな」

 「はい、硫黄泉なんでしょう。マスターが長い配管を作って引いてきたので、お湯の温度は少し熱い程度なので調整する必要は無いようですね」


 どうやら源泉の温度をなるべく下げないように配管を加工して引いたのが功を奏して、出てくるお湯は丁度いい温度らしい。


 「次は、各人の部屋ですね、もちろんミナの部屋も用意してあるからね」

 「いえ、私はマスターと、ご一緒で構いませんが?」

 「用意したから!」


 何を言ってるんですか?見たいに言ってくるミナ、なぜ俺と同じ部屋なんだ、普通に考えておかしいだろ!

 用意した旨を強く言い部屋に赴く。


 「まあ、全部同じ作りで申し訳ないですが、こんな感じです」


 全員で部屋に扉を開けて入る。

 中の作りは、畳敷きで中央に座椅子とテーブル、正面に障子がありその向こうには、板張りの2mほどの幅の空間、ここには、外の風景を楽しむように椅子とテーブルが置いてある。

 さらに向こうには、ガラス窓になっており開けると、外へ出られるようになっている。

 部屋の片側には、布団を入れる押入れと、衣類を収納できるクローゼットを配置、まんま和風の旅館みたいに作ってみた。


 「のうマサキ、この草みたいな床は何じゃ?」


 アルフィーナは、軽くジャンプして足で確かめながら畳の事を聞いてきた。


 「ああ、これは畳といって俺の国で昔からある床材です。もっとも最近では、敷いてる家は少なくなりましたが」

 「ほう、お主の国の物なのじゃな」

 「ええ、ああでも、畳を外せば普通の板張りに出来ますので、アルフィーナさんの部屋は畳を外しておきましょうか?」

 「ぬ?いや、このままでよいぞ、なかなか良い匂いではないか」


 似ているからと使った草だったが、畳独特の匂いがしていい感じに仕上がっている。

 アルフィーナも畳の匂いを嗅いだり、手を滑らせて感触を楽しんでいた。


 「あっ!それと、寝具なんですが」

 「うむ?」


 押入れを開けて中に入っているミナ手製の布団を取り出す。


 「この畳の上にいて寝るんですが……アルフィーナさん大丈夫ですか?何なら別の物を用意しますが……」


 取り出した布団を順に並べて枕を置いて見せる。

 それぞれ取外し可能なシーツを付けてあるのは、洗濯がしやすくなっている所は、さすがミナだ


 もしアルフィーナが、布団が嫌だったらベッドの用意も考えていたので問題は無い。


 「ほう、この畳の上に敷くのじゃな!うむ、私は、このままで構わぬぞっ!」


 アルフィーナは、布団も気に入ってくれたようで、思いっきり布団へダイブしたかと思うと、ぐっと抱きしめてその柔らかさと、肌触りを楽しんでいる。

 

 「はあ、分かりました。じゃあ、このままにして置きます。いつでも交換は出来るので、その時は言って下さい」

 「うむ、分かったのじゃ!」


 あとは、各自に部屋を適当に割り振る。

 全部作りは同じなので、どの部屋を選んでも代わり映えしないので、あとはどの様に各自で飾り付けていくかによる。

 ちなみに真白にも部屋が必要か聞くと、首を左右に振って、いらないと主張した。

 まあ、見た目大型犬だしどこに居てもいいだろう。


 「じゃあ、俺は部屋に荷物を置いてきます。それと、もう夕方なので鳥達に餌をやった後で今晩の夕食の準備をします」

 「分かったのじゃ、私も必要な物を木の家に取りに戻るのじゃ」

 「マスター、私が変わりに餌をあげてきますので、マスターはお荷物の整理を済ませてください」

 「ああ、分かった。それじゃミナお願いするね」

 「はい、お任せ下さい」






 自分の部屋の中に入ると、真白も一緒に付いてくる。


 「真白、今から荷物を整理するから、好きな所に居て良いよ」


 俺がそう言うと、真白は少し離れてちょこんと座って俺の荷物の整理が終わるのを待っているみたいだ。

 さっさと荷物を片付けようと思い、無限収納から荷物を取り出して整理を始める。

 スーツとジャケットをハンガーに掛けてクローゼットに収納、他に下着や、靴下などの細かい衣類を引き出しに収納して引出を閉めると、キャリアケースの中に小さな箱を見つける。


 「これは……たしかパソコンショップで店員さんから貰った物だ」


 小さな箱を手に取ると、中に5つの銀色の輪がスポンジの上に収まっている。


 「たしかイヤホン見たいな物って言ってたっけ?まあ、今すぐ使わないし無限収納にしまっておくか」


 手に持つ小箱を無限収納の中へ入れる。

 ついでにミナの本体?の、今はノートパソコンなのかすら怪しいノートパソコンも無限収納へ一緒に格納しておく。


 「おっと、大切な物があったな」


 衝撃を与えない様にと、幾重にも布を巻いた物体を取り出す。


 「のうマサキ良いかのう?」


 丁度その時、扉の向こうからアルフィーナの声がした。


 「はい、良いですよ、どうしました?」


 扉を開けて部屋の中にアルフィーナを向かい入れる。


 「うむ、木の家から本を持ってこようと思ったんじゃが、量が多く……何じゃソレは?」


 さきほどキャリアケースから取り出して、布を幾重にも巻かれた物を俺は、大事そうに胸で抱えながらアルフィーナの応対をしていたので、疑問に思うのも当然である。


 「ああ、これはですね」


 そう言うと、俺は障子を開けて板張りの所にあった机を部屋の中に引き入れて壁にくっ付ける様に置く。

 ぐらつきなどが無い事を確認した後、布を広げてその上に中の物を置いていった。


 「えっと、俺の母と祖父母です」

 「なっ!」


 そう机の上に置いたのは、母と祖父母の霊璽(れいじ、仏教で言う位牌)、それと赤ん坊の俺を抱いて嬉しそうな笑顔を見せる母と、その両脇に祖父母が立ってこちらも嬉しそうに笑顔で写っている写真だった。


 「俺の国では、色々と形はありますが、こんな感じで亡くなった家族や祖先の霊を祭っているんです」

 「そう……なんじゃな……」


 俺はアルフィーナに説明しながら、霊璽に向かってお祈りをする。


 「なあ……マサキ、私もお主の家族に祈りをしたいのじゃが、お主の国の作法がわからんのじゃが……」

 「ああ、それは何でも構いませんよ、型にはまらなくても大丈夫です」

 「そうか、それでは失礼して」


 立ち上がって霊璽の傍に行くアルフィーナ、そのすぐ脇に真白も付いていく、どうやら真白も祈りを捧げてくれるらしい。

 アルフィーナは、霊璽の前に立つと、型膝を付き両手を心臓の辺りに当てて目を瞑る。

 真白は、霊璽の前に座って上を向いて、遠吠えに近い穏やかでゆっくりとした鳴き声をあげた。


 「ありがとうございます。みんな喜んでいると思います」

 「うむ、であると私も嬉しい」

 「オンッ!」


――トントンッ


 アルフィーナと真白が、祈りを済ませ霊璽から離れたので2人に礼を言うと、扉が叩かれる。


 「マスター、餌をあげて来ました」

 「おお、ありがとう」


 ミナが鳥に餌やり終了を言って来たので扉を開けて感謝する。


 「あら、あちらは、マスターのお母様とお爺様お婆様ですね」

 「ああ、うん、そうだよ」

 「ご挨拶してもよろしいでしょうか?」

 「いいよ、さあ中に入って」

 「失礼します」


 ミナを部屋に招き入れると、霊璽の前まで行ってお祈りをする。


 「マスター、皆様はこのままにされるのですか?」


 ミナは霊璽をこのまま机の上に置いたままなのか聞いてきた。


 「いや、祖霊舎(それいしゃ、仏教の仏壇の様な物)を作って、そこに納めたいんだけど、もう夕方だから明日作るよ」

 「なるほど、そうでしたか」


 必要な諸々は、とりあえず明日作ることにした。

 ミナも深く頷いて納得してくれたみたいだ。


 「どれ、俺はもう少しで片づけが終わるから、ミナ、悪いんだけどアルフィーナさんと、木の家に行ってアルフィーナさんが持って来たい本を無限収納で運んでくれないかな?」

 「了解しました。アルフィーナ様、木の家に向かいましょう」

 「すまんのう、アレもコレも選んでいると、結構な量になってな、私も収納の魔道具があるんじゃが、アレには色々と危険な物も入っておってな」

 「問題ありません」


 2人は部屋を出て木の家に向かったので、俺も荷物の整理を再開する。


 だいたい荷物の整理に片がつき俺は、貰い物が入った鞄を持ち台所へ向かう。


 「おお、マサキ終わったのじゃな」


 台所にだ居ると声をかけられたので見ると、アルフィーナとミナが椅子に座ってお茶を飲んでいた。


 「ええ、アルフィーナさんの方も終わったんですか?」

 「うむ、まあミナに協力があったので、すぐに終わったのじゃ」

 「そうなんですか、ミナもご苦労様」

 「はい、マスター」


 2人に声をかけた後、俺は鞄の中に入っている食品類をしまう。

 生ものは、無いので普通の戸棚に調味料などを入れていく。

 ちなみに冷蔵庫は、台所に置いてあったが、この冷蔵庫はミナのおかげで進化しており、俺の作った冷蔵庫に電気で冷却出来る様にしており、なおかつ容量も増やしている。


 「どれ、夕飯でも作るか!」

 「お手伝いします」

 「私も出来る事は、手伝うのじゃ」


 夕食を作るため台所に立つと、ミナに続いてアルフィーナが手伝いの宣言をする。

 ミナは、恐らく日本の料理は、作れるだろう。

 しかし、アルフィーナは、いきなり日本の料理を作れと言っても難しいと思うので、見て学習して簡単な物から用意してもらう事にする。


 「さて、今日は、いろいろ作ろうかな」

 「私は何をいたしましょう?」


 万能ミナに任せる事と言えば決まっている。


 「じゃあ、ミナはご飯を炊いてくれるか?」

 「了解しました。お任せ下さい」


 ミナは、コクンと頷くとすぐに作業に入る。


 「アルフィーナさんは、お皿の用意や私達の作業を見ていて下さい」

 「う、うむ、すまぬのう料理には力になれぬのじゃ」

 「お気になさらないで下さい、覚えようと思っていらっしゃるなら、ゆっくり覚えれば良いんですから」


 アルフィーナも料理をしたいらしいけど、急いでもろくな事がないので、俺とミナの作業を見て学んでくれればいい。


 ミナは、ご飯の炊くため無限収納から米を取り出して水に浸けている。

 俺も料理の作業に入る。


 今日の料理は材料もあるのでちょっと豪華にとんかつ定食を作ることにした。

 豚肉は、昨日捕ったイノブタの肉でロースとヒレの部位2つを使う。


 卵も今日取れたてがあるので問題ない。


 パン粉がないじゃないか!と思うかもしれないが問題ない、オーブンを使って焼いたのでそれを使う。

 ちなみにイースト菌は、ミナが“見つけてきた”のでソレを使っている。

 まあ、しっかり発酵したし膨らんだので問題ないと思う。


 「じゃあアルフィーナさん俺がやる順に肉を付けて油に入れて下さい」

 「う、うむ」


 とんかつは、複雑な工程がないのでアルフィーナに手伝ってもらう。

 まず、塩コショウで味付けした肉に小麦粉をまんべんなく付け、付き過ぎた小麦粉を軽く叩いて落として、次に溶いた卵に潜らせる。

 最後にパン粉でたっぷりしっかり包んだら熱した油に静に入れていく。


 「どうです、簡単でしょ?」

 「う、うむ、やってみるのじゃ」


 若干緊張した面持ちのアルフィーナがとんかつを作る作業に入る。

 俺がやっていた通りに順番に衣をつけていき問題なく油の中に静に投入される。


 「おおー出来たのじゃ!」

 「うん、上手ですよ!切って置いた肉は全て油に入れて大丈夫です。ただし、肉が油に入りきらない時は、すこし待って下さい」

 「うむ!任せるのじゃ!」


 1度目で自信をつけたらしくアルフィーナは胸を張って応えた。

 肉の揚がり具合の確認と、油から揚げるのは俺がやっている。


 とんかつの調理と平行して豚汁とサラダの用意も同時にアルフィーナと一緒に作った。


 「マスターご飯が炊き上がりました」

 「うん、ありがとう」


 ご飯担当のミナが、土鍋に入ったご飯をおひつに移している。

 まだ電子ジャーを作っていないので本日は急きょ作った丸型の土鍋で炊き込んでもらった。


 「はい、調理も済みましたし後は、盛り付けて机に並べましょう!」

 「私に任せるのじゃ!」


 テーブルに4人分の料理が並べられる。(真白にはプレートにご飯と、とんかつ、それにサラダ、豚汁だけは普通のお椀に入れてある。)

 席順は、俺の隣にアルフィーナ、向かいに真白で真白の横にミナが座ってご飯のお代わりを担当する。

 ご飯のお代わりはミナが自分でやると宣言してくれた。


 「それじゃ、冷めない内に頂きましょう。では、「「いただきます」」「ワフッ!」」


 3人と1匹でいただきますをして食事に入る。


 「あっ、アルフィーナさん、とんかつにはこのソースをかけて食べて下さい」


 俺は、アルフィーナに日本で貰った茶黒い色のソースのボトルを見せる。


 「ぬ、しょうゆ見たいな物か?」

 「ええと、甘しょっぱい味ですね、これが合うんですよ!」

 「ほう……」


 アルフィーナはボトルを手に取ってシゲシゲと眺める。


 「真白には、俺がかけてあげるからね」

 「ワンッ!」


 器用に椅子にお座りをしながら真白は尻尾を振って喜ぶ。

 本来なら真っ先に食べ始めていただろう真白は、俺とアルフィーナのやり取りを聞いていたので、まだ器に口を付けずに待っていた。

 みんなとんかつにソースをかける。

 カラシもあるのだが、こちらは各々で判断してチューブから出してもらう。


 「まずは、肉から!」


 メインのとんかつの切れ端を箸で持ち上げる。

 箸にズシリと肉の重量がのしかかる。

 まだ、熱々で肉の切れ目から肉汁が滴り落ちている。

 冷ますなんてもったいないので熱々のまま口に運ぶ。


――サクッ


 小気味良い音と共に肉が噛み切られる。

 昨日の焼肉で分かっていたが、この肉は凄く味が濃くて旨味が強く、かけたソースも混ざってとても濃厚に肉の味が広がる。


 「うまっ!」


 肉の柔らかさもさることながら、その濃厚な味わいに叫びたくなる。


 「おお、美味じゃ!うむっ、美味じゃ!」


 アルフィーナもこの肉の美味しさにとんかつにフォークに刺して一心不乱にかぶりつく。

 真白も尻尾を振りながらプレートにあるとんかつとご飯を夢中になって食べていた。


 「次に、ご飯」


 ご飯の入った茶碗を持ち上げると、ご飯のいい香りが鼻に入ってくる。

 箸で持ち上げると、一粒一粒がしっかりとしているのが一目で分かった。

 ご飯を口に運んで噛み締める。


 「うっは!これはヤバイ!」


 肉も美味しかったが、ご飯も負けてはいなかった。

 噛む度に一粒一粒が程よい硬さをしておりその甘味が口の中に広がる。


 「ミナ、グッジョブ!」


 ご飯の美味しさに親指を立ててミナの仕事ぶりを褒める。


 「ありがとうございます、マスター。本日の炊き加減は完璧です」


 あまり表情には出ていないが、その発言は自身に満ちておりミナは無い胸を張っている。


 「いやー、どれも美味しいな」


 とんかつ、ご飯、とんかつ、ご飯と順々に口に運んで味わう。


 「うむ!このごはんだったか、お粥も良かったがマサキが言ってた本来の食べ方とはコレだったのじゃな!」

 「ええ、そうなんです。やっぱり良いな~ご飯!」


 そんなに久しぶりでは無かった筈なのに口にしたらその美味しさに感激している。


 「うむ、この味噌汁も色々な食材がふんだんに入って美味しいのじゃ!」


 アルフィーナは、豚汁にも感激し、真白お方も器用に豚汁の入ったお椀に口を入れて食べていた。


 「「「ご馳走様でした」」」「ワンッ!」


 皿には何も残っておらずに、みんな綺麗に完食している。

 豚汁の鍋もスッカラカンだ。






 各自の使った食器を流しに入れて、ミナが用意してくれたお茶で食後の余韻に浸る。


 「あぁ!アルフィーナさんお風呂さきにどうぞ!」

 「お風呂?」


 アルフィーナは聞きなれない単語に首を傾げる。


 そう言えば昨日は湯浴みって言っていたな……日本にいた頃の癖でつい出てしまった。


 「すいません。ええと、湯浴みのことです」

 「おお、湯浴みか!マサキの国では、おふろと言うのじゃな」

 

 アルフィーナはポンッと手を打って理解する。


 「いや、お主が先に入るべきじゃろう」

 「え、俺ですか?」

 「うむ、お主が作った物じゃ、先に使うのが当然じゃろう」


 アルフィーナの言う事ももっともで作った物の作者が、その使用感を確かめるのも分かる。


 洗い物もあるので先に入ってもらって構わないんだけど……。


 「マスター洗い物は、私がやっておきますので、先にお風呂へお入り下さい」


 ミナが洗い物を受け持ってくれるなら、ここはお言葉に甘えよう。


 「じゃあ、先に入りますね」

 「うむ」

 「どうぞ、ごゆっくり」


 2人とも頷いて同意する。


 「真白、お風呂一緒に入ろうか」

 「ワンッ!」


 真白に声をかけると、嬉しそうに尻尾を振って応えたので頭を軽く撫でてやり自室に着替えを取りに向かう。


 脱衣所で着替えをカゴに入れて衣服を脱いだ後、二つある入口のどちらに行くべきか考える。


 「う~ん、やっぱり露天だよな!よし、真白露天風呂にいくよ!」


 お風呂は、屋内と露天の2つあるので、どちらか1つを真白と入っても問題は無い。

 と言うか、犬の毛であろうと人間の毛であろうと、抜けるのは抜けるので気にすることは無いだろう。


 「おお、これは良いな!」


 露天風呂に向かうと湯気が濛々と立ち込めて、なんとも風情のある露天風呂になっていた。

 すでに日が暮れていたが、ミナが用意してくれた照明で問題なく周りが見える。


 「よーし真白、まずは体を洗おうなー」

 「ワンッワンッ!」


 真白も池のように湯を湛える風呂に嬉しそうだ。


 「真白には、ボディーソープよりシャンプーで体を洗ってやった方が良いな!」


 蛇口を捻って真白にお湯を満遍なくかけた後にシャンプーを使って泡立てる。

 真白の真っ白な毛に泡がモクモクと立って面白い。

 俺が両手を使ってワッシャワッシャと洗ってやると、真白も気持ち良さそうに目を細めてなされるがままになっている。


 真白の体に付いた泡を綺麗にお湯で流した後、トリートメントを全身に塗って洗い流す。


 「ほーら綺麗になった!真白、終わったよ!」


――ブルブルブルブルッ!


 「ぶふっ!うぅ、びしょびしょ」


 真白が勢いよく体を振ると、俺の顔から体全体に水が飛び散ってきた。


 「まあいっか、真白、今度は俺が体を洗うからさきにお風呂に入ってて良いよ」


 体が冷えるから真白にさきにお湯につかるように言うと、真白は首を左右に振る。

 どうも待っていてくれるみたいだ。


 「ん~じゃあ、ササッと洗うね」


 さきに髪の毛を洗って、次に体を洗う。


 「このスポンジだと背中を洗うのが大変だな」

 「やりましょか?」

 「おう、頼む!」


 ミナに後ろ手にスポンジを渡す。


 「はい、でわ」

 「って、おおーいっ!なんで入ってきてるんだ!」


 ツッコミを入れ振返ってミナに顔を向ける。

 そこには一糸も覆われていないミナの生まれたままの姿があった。

 まあ、今日、ミナがこの世界に生み出された時にも見てるんだが……。


 「なんで裸なんだよ!」

 「お風呂は裸で入るものとデータにはあります」


 そんな何言ってんだコイツって顔で見ないで欲しい。


 「いや、男の俺が入ってるんだから少しは慎みを!」

 「マスターのお背中を流すのは所有物の宿命!」


 なにスポンジを握り締めて熱く語っているんだ!この娘は……。

 頭を抱えるが、まあ娘みたいな者だししょうがないと諦める。


 「はあー、まあいいか……背中頼むよ」

 「はい、お任せください!


 気合を入れて背中を洗おうとするミナに真白もヤレヤレといった感じの様子だ。


 「ぐおーーーーらぁーーーーっ!お主ら、なぜ私を誘わないのじゃ!」


 露天風呂の入口の扉が開いたかと思うと、アルフィーナが大声で怒鳴り込んできた。

 もちろんこちらも一糸も纏っていない。


 もうやだ、この人たち羞恥心が無い……おじさん悲しい。


 「もういい、好きにして」

 「はい」


 みんな体を洗い終わると、3人と1匹は仲良く風呂につかる。

 体を洗ってる最中、アルフィーナが“なんと!”とか、“おお!”とか言って驚いていたが、たぶんシャンプーやボディーソープに驚いてるんだろう。

 直視していないから分からん!


 「ふー、これは良い、温度も丁度良いし!」

 「ワフーン」


 俺が仰向けで風呂のふちに体を預けていると、真白もうつ伏せに体を預けてリラックスしている。


 「ほう、夜でも明るくて湯に浸かれるのは良いのう。これも電気の力なのか?」

 「はい、アルフィーナ様、電気によって明るくしています。……チッ」

 「?」


 一瞬ミナの語尾に何か付いたのを聞いたような気がしたアルフィーナは、ミナを見て首を傾げたが、すぐに気を取り直して空を見てお湯を楽しむ。


 アルさんや、恐らくミナはお湯に浮いているアルさんの豊かな2つの島を見て舌打ちをうったんだよ……。


 「そんな事ありませんよ、マスター」

 「なっ、何も言ってませんよ、ミナさん」


 まったくの無表情のミナは答えるが、その無表情にお湯に浸かっていながら寒気を覚える。


 風呂から上がってミナが作ってくれた脱衣所備え付けのバスタオルで体を拭く。

 アルフィーナもすでに体を拭いて着替えていた。


 「すまんのうミナ、私の服まで用意してもらって」

 「問題ありません、私の服を作るのと併せて作りましたから時間も掛かっておりません」


 今アルフィーナが着ている服は、ミナが用意した赤とピンクのパジャマだ。

 ついでにミナも水色と黄緑のパジャマ姿になっている。


 真白の毛をドライヤーで乾かした後、自分の髪を乾かすために大きな鏡のある洗面台に腰を下ろす。


 「あー、良い湯だった。今度はもっとゆっくり入り……はあっ!?」


 鏡に映った自分の姿に衝撃を受ける。

 別に幽霊が映ったり知らない人がいたのではなく、ちゃんと自分が映っている。

 そう、ちゃんと映っているんだが……。


 「なっ、なんじゃこりゃー!20歳の頃の俺じゃないか!」


 鏡に映っているのは紛れも無い自分、しかし、顔のしわも30歳後半に出始めた白髪もまったく無く。

 ソコにいるのは、肌も張っていて髪も黒々とした若い頃の自分だった!


 「何を大声上げてるのじゃ?」

 「どうかしましたか?マスター」


 洗面台で大声を上げているので心配になって2人は見に来た。


 「いや……これ俺なんだよな?」

 「お主は、なにを言ってるのじゃ?マサキで間違い無いではないか」

 「はい、正真正銘マスターです」


 アルフィーナは訝しんだ後に俺だと言い、ミナは自信を持って俺だと答えた。


 「なんか……若くないか?」

 「何を言っておるのじゃ?初めて会った時から、そのままじゃぞ?」


 アルフィーナも俺の変わりようが分からないようだ。


 「ああ、そういう事ですか」


 ただし、ミナだけは分かったらしく深く頷く。


 「なんか知っているのかミナ?」

 「はい、マスター、私と初めてお会いした場所を覚えてますか?」


 ミナと初めて会った場所……木の家の中……じゃなくて……。


 「パソコンショップか!」

 「はい、そこで、ある設定をマスターは行ないました」

 「設定……ああ!ゲームのキャラクターの設定!」


 そうだ、たしかあの時、ゲーム登録とプレイキャラクターの設定をした。


 「はい、そこでマスターは、この“もう一つの世界”の自身の設定をしました」

 「え?俺の設定?」


 ミナが何を言っているのか分からない。俺の設定?何ソレ?WHY?


 「はい、利用規約の方にも、第31条8項 ここでの設定はあなたが、別の世界に転送された際に反映されます。と書いてあります。お読みになられたのでは?」

 「そんな細かいとこまで読めるかーっ!」


 そんな事が、あの利用規約に書いてあったとは……今度から規約や契約書はしっかり読もう。


 「ですので、その時設定しました内容にマスター自身変化されました」

 「あの時の設定って、ええと……」


 パソコンショップでの店員さんとの会話を思い出す。


 『プレイするキャラクターの年齢は何歳ぐらいがよろしいですか?』

 『そうなんですか~、ええとじゃあですね…20歳ぐらいでお願いします。なんか若すぎても年寄りすぎても嫌なんで』


 おぉ、なんか言ってるよ俺……。

 若干混乱したが、異世界にきて魔法も使っているのだからそういうものだと頭を振って考えを切替える。


 「たしかに20歳の設定にしたな……俺」

 「はい、その後に加齢無しの設定にしてます」

 「え!?俺って不老不死なの?」

 「いえ、不老であって不死ではありません。何かの衝撃死ぬ可能性もございますのでお気を付け下さい」


 それ、ほぼ不死ってことだよな?不老でしかもこの世界には魔法がある。

 なんかあれば魔法で解決できるのではないのか?


 「ああ、気を付けるよ」


 若返ったのでから良い事と、ポジティブに考える。


 「なるほどな~、だから今の姿になったわけか」

 「はい」


 鏡に映る自分をマジマジと見つめる。

 そういえば、こちらの世界に来てヒゲが伸びてない事に気付く。


 20歳のときは、髭もほとんど生えないほど薄くて、アゴヒゲや不精ヒゲ生やしてる友人が羨ましかったな。


 「なんじゃ?マサキは神のおかげで若返ったのか?」


 昼間のやり取りを思い出したのだろう、アルフィーナの問いは的を射抜いてる。


 「ええ、向こうの世界では、40過ぎの年齢に沿った見た目だったんですが、今は20歳ぐらいですね」


 日本にいた頃の見た目をアルフィーナに言っても想像は付かないだろう。


 そうだ、あとで財布に入っている免許証を見せてみよう!


 「なんじゃそんな事で大声を上げたのか」

 「そんな事って……大事ですよ!」


 アルフィーナはヤレヤレと呆れた顔をしている。


 「はっ、私なんか200年以上もこの姿じゃぞ」


 アルフィーナは自身の体を差して例える。

 たしかに200年と20年では比べるのも鼻で笑われる。


 自身の辛い境遇もあるのに俺を元気付けてくれてるのかな?


 「そうですね。そんな事ですね」

 「ああ、そんな事じゃ!」

 「ありがとうございます。アルフィーナさん」

 「ふ、礼を言われる事をした覚えは無いのじゃ」


 アルフィーナに礼を言うと、アルフィーナは少し頬を赤くして笑顔で応える。


 湯上りで火照っているのかな?


 そんなこんなで就寝の時間になった。

 各々自室に戻り布団に入って就寝する。

 もちろん真白は俺と同じ部屋で一緒に寝る。


 「よし、布団も敷いたし寝ようか真白」

 「ワンッ!」


 布団に入ると、真白がすぐ隣に来る。

 大きい布団なので真白が横にいても余裕があるので、真白にも布団をかけてあげる。


 「目覚ましもセットしたし、それじゃお休み真白」

 「ワフー」

 「はい、お休みなさいませ、マスター」


 あくびをして応える真白と……。


 「おい!どうやって入ってきた」


 ミナは正座をして俺の顔を覗き込んでる。

 本当に神出鬼没な子だ。


 「いえ、私はとくに睡眠を必要としてないので、マスターの身辺警護と夜伽の準備をしようと」

 「はあー……、隣で寝てもいいから布団で寝なさい」

 「はい、では、よと「いいから静かに寝なさい!」」


 ミナに真白を挟んで隣に布団を敷いて寝させる。


 真白がいないと何をされるか……。


 「もう寝るよ!はい、お休み!」

 「ワフ~」

 「お休みなさいませ」


 蛍光灯の電気を消そうとすると、勢いよく扉が開く。


 「ぐおーーーーらぁーーーーっ!お主ら、なぜ私を除け者にするのじゃ!」


 異世界でのそんな夜が更けていく。

 

 今回、お読みくださいって、ありがとうございます。

 10万文字になりました!やったー、でも話進んでない……。

 しかし、現代にある機器類をまったく知らない人に説明するのって大変ですね。

 今回は、そこらへんの説明に文章を大量に使ったかもしれません。読みにくかったですね。申し訳ございません。

 次回も魔女さんの家の開拓になると思います。また、退屈になるかもしれないので未来語みらいがたりも合わせて投稿します。

 未来語って何じゃ?と思います。まあ、簡単に言いますと未来の話です。

 こちらの方は、異世界転送物語の未来のお話です。ネタバレ要素やまだ登場していないキャラクターが多く出るので順番通り読みたい方は、読まずにいて下さい。

 本筋が追いついたら話数をふっておこうと思います。どうか、よろしくお願いします。


 ↓は、ただの遊びです。音とか適当です。すいません^^;






 ――チャチャラーチャチャッ♪


 みずねこ「さあ、やってきました!後書きのコーナー」

     「今日は、スペシャルゲストが来ています!」

     「前回の後書きにも紹介したこの人!ミナさんです!どうぞ~」

 ミナ  「どうも、こんにちは、ミナと申します」

 みずねこ「こんにちは~っ、今回から人物としての登場でしたが、如何でしたか?!」

 ミナ  「そうですね、やっと出られたなと言ったところでしょうか」

 みずねこ「そうですかー、まっぱでの登場とは、なかなかありませんからね!別のバージョンでは不思議な光やもやなどは、取れるんですか?」

 ミナ  「何を言ってるんですか?」


 みずねこ「さて、ミナさんにお手紙が来ています!」

 ミナ  「ほう」

 みずねこ「ペンネームMCさん、いつも楽しく拝見しています。さて、気になったんですが、ミナさんの設定上は何センチなんでしょうか気になります!です。ありがとうございます」

 ミナ  「いったい何の事を言ってるんでしょうか?」

 みずねこ「そうですね~、おそらく72センチぐらいですかね~?」

 ミナ  「クッ!って胸の事だとしても違います」

 みずねこ「ほう、胸とは言ってませんが、じゃあ、もし胸だったら何センチなんですか?」

 ミナ  「身長体重3サイズは言えません。事務所を通してください」

 みずねこ「事務所って……」


 みずねこ「はい!気を取り直して次のお便りです!ペンネームZNさん からです。面白い内容ですね!いつも楽しく見ています。今回、ミナさんが登場って聞いたんですが、その前の登場はいつだったんですか?と言ったお手紙です」

 ミナ  「そうですね、お忘れの人もいるでしょう」

 みずねこ「ですね~、はい、ズバリ言いましょう!ミナさんの前の登場は、4話になります!」

 ミナ  「は?」

 みずねこ「4話でマサキが、朝にトラップで獲ってきた魚を捌くのに、川でかがんでの作業はやだなーってシーンがありました」

 ミナ  「はあ、そうなんですか。しかし、私は出ていなかったはずですが……」

 みずねこ「いいえ、出てましたよ!作業台と同時に作ってましたから!」

 ミナ  「作った?」

 みずねこ「はい、木で食器類と一緒に作ったじゃないですか!」


 ―― ガシッ!


 ミナ  「それ以上しゃべると、頭を潰して差し上げますよ?」

 みずねこ「あががが、すいません、潰されると中身のプリンが出てしまいます、のでお止め下さい」

 ミナ  「それに、このお手紙は、全てあなたの仕込みですよね?だってMCとNZって、あなたの名前のM(I)Z(U)N(E)C(O)じゃないですか……」

 みずねこ「ふゅ、ふゅふぃ~♪ナンノコトカナ?って、ああ!もうこんな時間」

 ミナ  「無理やりですね」

 みずねこ「いや~楽しい時間は、あっという間に過ぎますね!パソーナリティはみずねこと、ゲストのミナさんでお送りしました!」

    「それでは、皆さん、また」

 みずねこ・ミナ「見て下さい~!」「ださい」


 ――チャラ~♪



 ――デューデュッデュ♪

 激しい閃光!吹き荒れる爆風!

 マサキの近くには、グッタリと横たわるアルフィーナと真白、

 はたしてマサキは、ミナ帝国の野望を打ち砕けるか!

 次回の異世界転送物語は、「君は1人じゃない!」をお楽しみに~

 ――ドゥドゥラドゥンッ♪

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