76話 支配と優越感
「別に…?なるか?ならないかも」
「でしょ。つまり天ママは私を支配したくて。他の男に勝つ事や、優越感に浸りたくて、無駄にバル乳の私と、SEXしている訳じゃない」
「まあ、そうか?塁はストレートだろ?支配力や優越感は感じる?」
「うん、感じられない。それよりも、互いに、心配とか慰めや、生きる力みたいなものが主流かな?」
【なるほど、やっとわかって来たな】
「俺の聞き方が悪かったかも」
「塁って、どれくらい好きだった?」
「どれくらい?そんな事…。考えたこともない」
「考えろ!」
「命令形?誰に聞いている?そんな聞き方をするのなら、答えたくない」
「例えばで、いいから~」天十郎は甘え声を出した。
それを気持ち悪そうに夏梅がみながら
「なんだよ。気持ち悪いよ。そうだな。例えば、蒲が、昔よく、やっちゃうぞと言われると腹がたった。無性に腹立たしい。死ね!っと、思う。蒲だけでなく、他の人に言われても不愉快極まりないのに、塁に言われると嬉しくて、嬉しくて、自分でも可笑しいくらいに、うれしくて、あー、私って塁には勝てないな~。こんなにも好きなのだなって思う」
一人で照れてえへへと笑いだした。
「おい、何を照れて、くねくねしているのだ」
「うふ!悪い。今も思い出すだけで、嬉しくなっちゃう。こんな自分が完全お馬鹿みたいで、収拾がつかずに笑えるけれど、嬉しい!」
【歳月が過ぎても】
僕は夏梅のその嬉しそうな顔を見ると、胸が潰れるほど痛く、押しつぶされそうになる。天十郎があきれている。
「おい、夏梅、正気にもどれ、俺が言ったら?どう思う?」
「うん?言ってみれば」
「やっちゃうぞ」
「何も感じない」
「こっち見ろ。ちゃんと目を見てさ」夏梅は無関心にボーとしている。
「何も感じないのか?嬉しくないのか?」
「さっきまで、塁の言葉を思い出して嬉しかったのに、興ざめした。別に嬉しくない、嫌でもない?そう?って、感じ」
「そう?って、ちょっと待てよ。それってどうよ」
「どうって?何がどうなのか知らないけど、天ママは面倒くさいかも。何を期待しているの?」
「期待はしてないと、思うのだけど、なぜか寂しい」
「あっ?よくわかりません。何を聞きたかったの?」
「正直、夏梅を抱くときはやっぱり、どっか1本すっ飛んでいるような、気がする」
「だから、理性では治まらないって事?」
「そうだね。理性が飛んじゃうかもね。蒲と言う相手が一緒に暮らしていて、蒲が一番、嫌がる行為だと知っていて、やっているのだからね。理性でとめられるなら、止めているよ」
「ふーん、人の事は理解したくても出来ないから。蒲に殺されない程度に、許容範囲ならいいでしょ」
【で、さっきのオルガスムスだけど…】
「まだ聞きたいの?」夏梅はあきれた。
「おお、あのさ、俺とSEXした時オルガスムスに達するの?」
「しない」
「まったく?」天十郎は、ひどくがっかりした。
「しない」
「つまり、今は、塁がいないから、まったくオルガスムスに達する事がないのか?」
「だから、その時による」
「?」
僕は…。気が付いた。ひょっとしたら夏梅も天十郎も勘違いをしているのではないか?夏梅は最初から、天十郎を受け入れていた。僕が天十郎を利用する前からそうだった。対抗しながらも、自分を犠牲にして助け、頼り、身を任せるようになった。僕と天十郎を重ね合わせ、自分を誤魔化しているのか?それとも完全な勘違いなのか?
【この二人…】
天十郎が、夏梅のたったひとりの男だと、気がついていないのか?
天十郎は、夏梅の話しの意味を解せずに質問を続けている。
「愛情を分け合うSEXとストレス発散のSEXの違い?」
「どうかな?それとも違うな」夏梅は、意味深な笑いをした。
「違うのか…?」
「今までの話は、相手のある話でしょ」
「SEXは相手があるだろ?」
「いや、違うよ」
「なにが?」
「オルガスムスって、単純に自分の気持ちだから、相手は関係ないかな?」
「関係ないの?」
「逆に聞きたいよ。あんのか?」天十郎も、僕も、夏梅の新たな一面に驚いていた。
とくに僕は、いつも弱々しく泣き虫だった夏梅が、主導権を握り、
はっきり自分の意見を相手に突き付けている。何かが変わる…。いや変わったのだ。気がつかない間に…。すでに変わっている。今、僕は…。表現が出来ない脱力感の中にいる。
「怒らずに、教えてよ」天十郎はどぎまぎしながら、夏梅に聞いている。




