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終期超越 シドシワルワ  作者: 弥島真
第1章 始まりのエンドレスライフ
8/27

7 楽にさ!

 どうやら今日は、調査隊として、宇宙探査機の飛行訓練を行うらしい。ルーカスに連れられて、4階にあるトレーニング室へ向かった。

「ここは?」

「ここでは、体力づくりなんかの基礎的な訓練や、宇宙探査機の飛行訓練など、まぁいろいろな訓練が行える場所だ」

 中に入り、ルーカスについていくと、人がすっぽりと入れるぐらい大きい、謎の装置がある場所へ着いた。

「なにこれ?」

「これは、宇宙探査機を実際に動かしているように、疑似体験できる装置だ。これで飛行訓練を行う」

「ああ……ゲーセンにあったやつみたいなもんか」

「ま、詳しいことは2人に訊いてくれ」

「2人?」

 そう言うとルーカスは、トレーニング室の別の部屋に行ってしまった。少しして、その2人を連れて戻って来た。

「アンナさんと、レナード……さん?」

「そうだ。トレーニングの事に関しては、特にこの、トレーニング室の主、レナードに訊いてくれ」

「変な言い方をするなルーカス」

「主……?」

「なんでもない」

「それじゃ、後よろしく」

 ルーカスは、どこかへそそくさと行ってしまった。

「篠前、ルーカスから聞いた話だと、ある程度動かすことは出来るらしいな」

「え、あ、はい。一応」

「ならば、とりあえず入れ」

 レナードさんに促され、装置の中に入る。中は、宇宙探査機と同じように見える。すると、画面に宇宙の景色が広がり、中からアンナさんの声が聞こえてきた。

「篠前さん。聞こえるかしら」

「あ、はい。聞こえます」

「一応、もう動かせる状態にあるから、とりあえず、好きに動かしてみて」

「え? あ、ハイ。好きに動かす……」

 そう言われ、地球でテスト飛行を行っていた時のように、宇宙探査機を始動させる。

「すげぇ……本物みたいだ……」

 地球に居た頃にやっていた、ゲームセンターにあったこういう感じのやつとは、えらい違う。ってかマジで本物みたいだ。とりあえず、好きに動かしていいというので、この仮想宇宙空間を自由に飛んでみた。

「あら、いいじゃない。なにも問題は無いわね。その機械は、なるべく本物と同じような環境や動きなんかも設定出来るけど、しても良さそうね」

「え? いきなりっすか? 大丈夫っすかね」

「それは貴方次第ね。基本的には、宇宙空間を長く飛ぶということは、あまり無いけれど、感覚を覚えておかないと、大変なことになるからね。さ、飛ばしてみて」

「はい」

 言われた通り、速度を上げてみる。すると、思ったより早く加速していき、目がそれについていけず、だんだんと気持ちが悪くなってきた。

「やべぇ……一旦抑えないと……って、全然止まる気配しねぇ! え、ちょっ。エンジン切ったのに……ウッ!」

「袋は横にあるわよ」



「……あぁ」

「良かったな。本番じゃなくて」

「流石に、地球で動かすぐらいしか知識はなかったのね。さ、これから頑張りましょ」

「……はい」

 宇宙探査機の事については、それなりに熟知していると思ったが、そんな事は無かった。ゲロなんて吐いたの、いつ以来だろうか。数年前、ヤケ酒した時ぐらいか。なんにせよ、こんな訓練機械の中で吐いた、という事が、なんか凄く情けなくなった…。


 ――3時間後――


「お疲れ様。一旦休憩にしましょう」

 装置から出て、真っすぐ立とうとするが、いつまでも体が揺れている感じがして、床に座り込んでしまう。

「気持ち悪い……」

 目を閉じると、先程まで飛んでいた宇宙の風景が、嫌でも浮かんでくる。すっかり目に焼き付かれてしまった。

「最初に比べるとマシになった。まずまずだ。再開は1時間後だ。以上」

「あーい……」

 あー……昼か……。しばらく横になっていたいけど、腹減ってきたしなぁ……。しゃーない、なんか食いに行こ。

「あー気持ち悪……」

 4階のトレーニング室から、2階の食堂へ移動する。道は完全に覚えたわけじゃないが、なんとなくで着けるぐらいには覚えた。

 食堂に着くと、青いパーカーを着た、顔を知っているおっさんが居た。

「えっと……蒼史さん?」

「ん? ああ、廻か。タメでいいよ。俺も勝手にそうすっから」

「そっすか。じゃあ、ソーシ」

「うんうん。で、今から昼?」

「ああ。ここってラーメンある?」

「ラーメン? あるはず」

「サンキュー」

 いっつも昼に、ラーメンばっか食っていたためか、無性にラーメンを食いたくなってしまった。

 ラーメンを頼み、ソーシの元へ戻り、ラーメンに手を付け始める。ソーシは、なんかのパンでも食っているみたいだ。

「……なんっか物足りねぇな」

「味か?」

「よくわかんないけど。俺、いっつも『ビッグバン流星』ってところで、ラーメン食ってたんだけど、どうやらそこの味に毒されてたらしい」

「行きつけの店か……あったなぁ俺も。懐かしいなぁ」

「ちなみに、どんな店?」

「なんてことの無い、普通の居酒屋さ。よく上司と行ってたよ」

「ふぅん」

「ここに来たのはさ、その上司の勧めだったんだよね。オペレーターが1人抜けたから、優秀な人物を紹介して欲しいって、友人に言われた、って」

「その友人が、ルーカスだったってわけ?」

「そういう事。ま、10年ぐらい前の話だけど」

「10年前?」

「ん? どうかした?」

「いや、なんでも。(アイツって、いくつなんだろ……)」

「で、どうだ? こっちに来てから少し経ったけど。慣れた?」

「んー……微妙。さっきも、痛い目みたし……多分、これからも……」

「なんだか穏やかじゃないなぁ。どうした?」

「さっき、吐いた。飛行訓練中……」

「飛行訓練中? ……ああ、そういうことか。……ドンマイ」

「これからも、なにされるか……」

「と言ってもなぁ。やっぱり、いくら安全がほぼ100%保証されてるとはいえ、乗る方はそれなりに頑張らないとね」

「分かってる。分かっているけど、辛いもんは辛い」

「オイオイ。まーだ始まったばかりだぜ? 廻のエンドレスライフはよ」

「まぁ、慣れちまえばなんとも無い、ってのは散々理解してるけど……」

「(どんどんと負の感情が……)廻ぅ、大丈夫だ。そんな変に考えなくても。もっとさ、気楽に生きようぜ。出来なかったら出来ないで、図太く生きればいいのさ」

「……そう言えばさ、なんか色々と緩いよね。ココって」

「普段はな。割と自由」

「みんな普段なにしてんの?」

「そうだなぁ……。うちで言うと……って、うちはトップがアレなだけに、みんな他よりも割と自由だなぁ……」

「ルーカスか……」

「俺も、任務の時以外は、部屋でグータラしてたり、みんなと駄弁ってたり……。なんか、今思うと、真面目に働いてる時間の方が少ない気がしてきたな……」

「……マジで?」

「まぁ俺は、マシンをメンテするわけでもなく、日々トレーニングして鍛えるわけでもないからな。だから他よりは幾分か緩い」

「マジか。そんな緩いんか。……まぁ、昨日や一昨日も大してなにもやってないしな。……なんか、色々考えるのが馬鹿らしくなってきた」

「いいんだよ、そういう感じで。やるべき事をキッチリこなせば後は自由。最っ高だろ?」

「……だな。そう考えれば、めっちゃいいとこじゃん、エンドレスって。だったら、頑張るかぁこれからのトレーニングも」

「頑張れ頑張れ」

「サンキュー、ソーシ。行ってくるわ」

「おう、またな」

 食堂に来た時の重い足取りとは違い、今は軽い足取りでトレーニング室に向かうことが出来た。さ、後半も頑張るか。


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