6 「終り」は愉快に開花する
「艦長、警備隊がWSIを直接無力化すべく動いたようです」
「そうか」
「WSIを直接、強制終了させる方法は船員に伝えるべきでしょうか?」
「下手にリスクを冒させることになりかねない。だからあえて言う必要はない」
「了解しました」
「それにしても……何故WSIが一斉に制御不能に……。やはり、この前の事と関係があるのか……。シュン」
「はい」
「この前起こった、WSIが起動したという記録が残っていた日にちと、その周辺の日にちのエンドレス内の映像を、集めておいてくれ」
「了解しました」
「なにか分かればいいが……」
――4階・展望エリア――
刃を装備したWSIが、軽快な動きでレナードとアンナに襲い掛かっている。一瞬たりとも気を抜けば、その鋭利な刃に肉を抉られてしまう。
「どうするっ! このまま向こうのエネルギー切れでも待つのか?」
「それは難しそうねっ」
WSIの猛攻を幾重にも躱し続ける2人。流石に、疲労の色が見え始める。
「おとなしく隠れていればよかったかしら?」
「いずれトレーニング室の方にも来ただろう。結局は同じさ」
「でも、さすがに疲れてきたわね。私のエネルギーの方が先に切れそう」
「無駄口をたたいているうちはまだ大丈夫だな」
「困ったわ。無駄口もたたけないなんて」
2人が次の攻撃に構えた時、突如WSIに銃撃が浴びせられた。WSIは銃撃があった方向へ向き変える。
「銃?」
2人もその方向を向くと、警備隊の面々が銃を構えて立っていた。
「ターゲット、こちらを捕捉。我々の方へ向かってきます」
「オーケー」
「ですが……」
「ああ。銃を装備していない」
警備隊の1人が、レナードとアンナに近づいてきた。
「大丈夫か?」
「俺たちは平気だ」
「それはよかった。ところで、なぜあのWSIは銃撃を行っていない?」
「私たちがボタンを押したからよ。そしたらああなったわ」
「なに? 既に押していたのか!? だったらなんでまだ動いて……」
「来るぞ、構えろ!」
WSIが警備隊に突進してくる。警備隊はそれぞれシールドを構え、突っ込んでくる刃を振りかざす猛獣を受け止めるべく、力を入れる。
「ぐううっううぅ」
「くっっがぁぁああぁ」
WSIの動きが止められているこの瞬間に、レナードたちに駆け寄っていた警備隊の隊員が、ポケットから武器を取り出し、WSIのもとへ向かう。
「強制終了できないのなら、壊すしかないよなっ」
武器についているスイッチを押すと、武器の先端から数十センチの炎のようなものが噴出される。隊員は、その噴出した部分を、WSIの後方の左脚部に当てる。WSIの脚部は徐々に炎のようなものに切断されてゆき、やがて全て切断されると、WSIはバランスを失い左後方へと傾いた。
警備隊の一連の動きを見て、レナードとアンナは感嘆と羨望の声を上げる。
「流石ね。私もアレ、欲しいわ」
「ああ。俺もだ」
――2階・食堂――
食堂では、膠着状態が続いていた。
「なあ、いつまでここに隠れてればいいんだ……」
「そりゃ、アイツがどっか行くまでじゃない?」
「……こうしてんのも飽きてきたな。ちょっくら遊びに行ってくっか」
テーブルの下から出ようとするミヤカを、ユゼは急いで制止する。
「待て待て待て待て!! なな、なにやろうとしてんだ!」
「こっから出るだけだろ。んなこともわかんねぇのかお前は」
「こんな時に出たら撃たれるに決まってんだろ! 隠れてろ!」
「どうだかな。さっきからあの犬、動く気配ねぇし」
食堂を襲ったWSIは、最初の銃撃以降次の動きを見せていない。数分間、沈黙を貫いている。
「なんであれが動いてないのかは知らないけど、もう少し賢く生きようよミヤカ。今はどう考えても大人しくしてた方がいいって」
「蒼史……」
ミヤカは蒼史の肩をポンポンっと叩き、2回ほど頷く。
「年は取りたくねぇな」
そう言ってミヤカは再び飛び出そうとする。が、その瞬間、遠方から声が聞こえてきた。
「発射しろ」
WSIに銃撃が浴びせられる。WSIは銃を撃たれた方向へ向きを変え、ゆっくりとその方へ進んで行き、反撃と言わんばかりに銃撃を開始する。
「んだ? 動き出しやがった」
ミヤカはテーブルの下から飛び出し、状況を確認しようとする。
「あっ! バカ! は、早く戻れ!」
「向こう行ったぜあの犬。あれは……警備隊の連中か」
「警備隊?」
ユゼがテーブルの下から出てくるが、蒼史とルイザはテーブルの下に居たままだ。
「警備隊が引き付けてくれているのか……」
2人が遠くからその様子を見ていると、別のところから、攻撃を受けているグループとは違う別の警備隊が近くを通っていった。
「1階のWSIは対処した。援護する」
警備隊が合流し、ともに食堂を襲ったWSIの対処をする。
「どうやら、クソ犬の躾は警備隊がやってるみてぇだな」
「そうみたいだな……。みんなは……無事だろうか……」
ユゼは、エンドレスの乗員、なにより、チームメンバーのみんなの安否を願った。
<私たちの脅威となり得る 人間の1番の兵器を探している同志の 反応が消えている>
<感づかれ 消されたのか?>
<さらには ここで放ったWSIという人間の兵器も 次々と私たちの手が及ばなくなっている>
<破壊? 脅威?>
<人間には この程度の攻撃では 通用しないということか>
<やはり 警戒していて正解だった だがこれでは>
<当初の目的 私たちの脅威となり得る兵器の除外は 難しいものとなった>
<仕方がない 出来るだけ邪魔な要素は取り除きたかったが そろそろ 同志を呼ぶとしよう>
<私たちはここで終わる 同志の繁栄を願う>
「ん? これは……」
「どうした」
「艦長、前方の宇宙空間になにやら反応が……」
「反応? どのような反応だ」
「ワームホールが開く時と近い反応です」
「ワームホール? 何故ここに……」
その時、前方の宇宙空間に突如として巨大な穴が開いた。そして、どこからともなく衝撃が発生し、エンドレスはその衝撃を受け船体が激しく揺れる。
「きゃあっ!」
「なんだ! どこから……」
船体に揺らされ、視界をずらされたが、すぐさま前方の巨大な穴にもどす。が、そこに映ったのは、大きな穴だけではなかった。
「なんだ……あれは……」
コックピットに居る全員が、前方で起こっている「今」に目を奪われる。
巨大な穴より、今にも開花しそうな巨大な蕾のようなものが出てくる。
その理解しがたい光景に、その場の誰もが口を開くことが出来なかった。
蕾が完全に姿を現すと、その蕾と繋がっている「本体」が出てくる。本体は蕾よりも巨大で、本体にもまた複数の蕾が付いている。
本体が完全に巨大な穴から出終わると、数百メートルはある、その圧倒的な存在感を見せつけるかのように、その場に佇む。
「か……艦長……。あれ……は……」
「……ついにきたか。しかし、この状況で……」
しばらく、状況が膠着すると思われたが、向こうはそんなことは知らないと言わんばかりに、次の行動を始める。
ある、1つの蕾が、開いた。
「蕾? が、開いた……」
これにより、人類の新たな歴史の幕が開かされた。




