黒き扉 復活したモノは
<黒き扉が開きます。>
そうメフィストフェレスの声は伝える。
足元に巨大な円陣が出現する。
転移魔法だ。リズたちは冥府の奥へ移動する。
ドーム状の土の天井、広大な円形のコロシアム。
その中央にリズはいる。そして目の前に広がる灼熱の炎の中にタナトスはいた。
<タナトスが来ます>と、メフィストフェレスの声は告げる。
灼熱の炎の絨毯の上をまるで散歩するかのように歩くタナトスがいる。
黒い仮面を被り、その下からは赤い目が覗いている。
身体に纏うは漆黒のローブ、宵闇のローブと呼ばれる絶望で彩ったローブだ。
背中には黒き翼を広げ、3メートル以上ある背丈。
その背丈をはるかに超える漆黒の大鎌を上段に振りかぶり、打ち下ろしてくる。
<魔力全開放>と、リズは叫ぶ。
鼻が蜘蛛とムカデに。耳は蜘蛛に。心臓は破裂し、舌は千切れる。再生した右腕はフェンリルに食べられ、目もメフィストフェレスに奪われる。背中の肩甲骨はすでに黒い翼に変化している。
リズは漆黒の大鎌を左手で止める。いや、止めると同時に壊した。
これにはタナトスもひるむ。後ろへバックステップを踏み、距離を取る。
リズの服は赤いワンピースから漆黒の・・・いや、黒よりもなお暗き色・・・
まことの宵闇のローブをリズは纏う。
7人の魔王たちをそのまま纏う。
灼熱の炎の上をリズも歩く。
まるで歩ける事が当たり前のように。右腕が生える。
タナトスは動かなくなった。跪き、頭を下げる。
<おかえりなさいませ・・・ニュクス様。いえ、我が母君>
<え?どういうこと?>
<死の天使にして、最後の神、王の中の王、闇の支配者。それが母君です>と、タナトスは言う。
<私は兄さんを生き返らせたいのよ>
<その者の魂なら用意してあります。あと骨も>
<そう>用意がいいわね・・・と、リズは思った。
リズの前に骨と青白く輝く魂が現れる。
<ちょっと・・・魂のエネルギーが全然足りていないようだけど>と、リズはタナトスに言う。
<母君・・・旅立った魂を呼び戻す事は母君でさえ不可能です>
<どういうことなのよ>
<・・・答えかねます>
<わからないわよ、どういうことなのよ>
<・・・質問の意味が分かりません。>と、タナトスは言う。
<兄さんはどこに?>
<白き輝きに戻りました>
<白き輝き?>
<母君だけが使用できるレヴァンティンの表側です>
<私だけが?>
<そうです。母君>
<ああ、もう分からない事だらけだわ>
<何からお答えしましょう>
<まずレヴァンティンはどこにあるの?>
<名前を呼べば使用できます>
<わかったわ。レヴァンティン!>リズの声に応じてリズの身体から白い輝きが広がって行く。
それは広大なコロシアムそのものを埋め尽くした。
<白い輝きを兄さんの魂に代用する事は?>
<できません。魂は魂です。母君、エネルギーが少なかろうが、多いかろうが再生させるしかないのです>
<そう>リズは骨と魂を受け取り、重ねるように地面に置いた。
骨はほんの一瞬だけ人の形をとって、リルルの姿を甦らせた。
「リース・・・ありがとう」骨は崩れ、魂は消えた。
<うそよ!バカにしているの?>と、タナトスにつかみかかる。
<母君・・・先ほどの魂の生まれ変わりを呼び寄せる事はできます。しかし、母君とは初対面です>
<そう。それが生き返ると言うことだったのね。じゃあ、あのメッセージは何?>
<母君の兄上様が生まれ変わる前に残したメッセージです。つまり、母君にどうしても伝えたかった言葉です>
<馬鹿ね・・・兄さん>報われた気がした。今まで殺し続けた何かが報われた気がした。
気づけばリズは泣いていた。
その涙に白き輝きも反応する。
<ご命令を>
<兄さんの生まれ変わった・・・ううん。すべての宇宙を、地獄も、冥界も、人間界も、天上界も、煉獄に落ちてしまった悲しい霊たちも・・・白き輝きよ、その枝葉を伸ばし、救いなさい>
クジャンが来ていた。ヴァルスもいた。今まで殺して来た人たちがいた。
みんな白き輝きに包まれていく。
<どうしてみんな笑っているの?>
<みんな母君に会いたかったからです。母君は死の天使ですから>
死の天使の輝きはあなたを待っている。
完。
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