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98 趨勢は決まったようなもの

 KC36632のイントネーションはかなりおかしかったが、ニュアンスは充分に伝わってきた。

「ありがとう、KC36632」

 イコマにさして驚きはなかった。

 この調子では、そんなことだろうと思っていた。


 そして誰も、ライラはもちろん、ユウとスゥが同期していたことを知っても驚きはしなかった。




 イコマが今晩、皆を集める前に決めていたこと。

 それを話すべき時が来た。




「実は、考えていたことがある。僕はこの船に残ろうと思う」


 アヤの名が搭乗者名簿にない以上、自分がパリサイドの星に行ってしまっていい道理はない。


 部屋の雰囲気にさしたる変化はない。

 多かれ少なかれ、誰もが漠然とそう思っていたのだろう。


「どう?」


 諾も否もない。

 概ね了承という空気。


「アヤを見捨てていけるはずもない。アヤがこの船から降りない可能性がある限り」




 アヤの父母はンドペキとスゥ。

 しかし、だからといって、自分はこの船から降りてパリサイドの星に行けるものか。

 残れば命の保証はないとアイーナに言われようが、どんな咎を受けようが。


 ンドペキとスゥがどうするか。

 残るならそれでよし。

 パリサイドに行くなら、ユウに頼んで、自分とンドペキの同期を復活させてもらえばいいのではないか。

 そうしておけば、もしアヤと行き違いになり、彼女がパリサイドの星に行ったときに連絡が取り合える。

 できれば、その方がいい。

 チョットマも、彼らに預けることができるから。


 パリサイドの星と宇宙船スミヨシの間で、意識と記憶の同期はできるものかどうか、知らないが。




「この船に残って、アヤを探すつもりだ」

 力を込めて言った。

「ユウの事情がどうあろうと、元々、そう考えていた」




 事態が飲み込めてきたのか、喧々諤々の議論になった。


 ンドペキが怒り出した。

「親である俺が残らなくてどうする!」

 もっともな反応。

 当然、スゥもそれに倣う。


 スジーウォンも、隊員同様のアヤを助け出すために、残りたいという。

「強制はしないけど、隊員達もそうしたいと言うだろう」

 コリネルスも頷いたし、ライラもそうしたいという。

「チョットマは?」

「パパやンドペキと一緒にいる」



 レイチェルは悩んでいるようだった。

 彼女はアヤの親友だが、長官としての大きな役割がある。


「私は、やはり……」

 人々を見捨てることはできない。

 レイチェルにとっては辛い決断だが、上陸する方を選ぶと言った。

「お願いします。なんとか皆さんで、アヤを助けてください」



「今ここで決めなくてもいい。着陸船の搭乗まで、後二十時間ばかりある。それに、残って欲しいというつもりで集まってもらったわけでもない」


 イコマはそう言ったが、趨勢は決まったようなものだった。

 レイチェルを除き、全員の意志が居残る方に傾いている。


 結果は予想していたことでもある。


 できればンドペキには別行動をとってもらう方が好都合だと思っていたが、翻意させることはできまい。

 ンドペキにしても、ここにアヤを残していく気は毛頭ないだろう。

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