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91 呪いだな……

一部に、前作品「ノブ、ずるいやん」と「ニューキーツ」のシーンが出てきます。

それらを読んでいただいている方にはンドペキの気持ちが少し伝わると思います。ですが、読んでいただいていない方も、そのまま読み進めてくださって結構です。ミステリーを解く意味でのハンディはありません。

 聞き耳頭巾の使い手だったアヤ。

 宇宙の未知のウイルスごときに負けるはずがない。

 そう思いたいが、現実はアヤの記憶は失われてしまったかに見える。


 会って話せば。

 粘り強く話せば。

 なにかきっかけがあれば、きっと自分を取り戻すはず。

 ンドペキはそう信じていたいと思った。



 ふと思った。

 もしや……。

 あの夜、聞き耳頭巾で得体のしれない存在の声を聞いたのではないか。



 思い出す。

 その時の感触を。


 あの頭巾のパワーを己の身で感じたのは二度。

 最初は大昔、イコマとしてまだ大阪に住んでいたころ。アヤと知り合うことになった京都北部の山奥の村。

 そこで起きた連続殺人事件を解決したとき。


 そして、ニューキーツの北の森。イコマの記憶を垣間見た時。

 その二回。


 いずれの時も、自分の意識が体を離れ、宙に浮かんでいるような感覚だった。



 そんな状態の時に、ウイルスに付け込まれたら……。

 いや、まさか……。

 アヤが聞こうとしたのは、まさに、ウイルスと呼ばれる生命体の声だったのかも……。

 ウイルスの思う壺に……。



 あの村で、三人で川の字になって寝た夜のことが思い出された。

 あの時、アヤが見せたきれいな瞳と、弱気な自分の心。


 六百年経っても色褪せない思い出のひとつ。

 イコマが一人ぼっちのアギとして正気を保てたのは、そんな思い出があったから。

 ユウと、アヤと、再び巡り会うことを強く念じ、かつ信じていたから……。



 ンドペキは、自分のものとなっているイコマの記憶を弄んだ。

 アヤと話したり、アヤのことを考えるときには自然とそうなる。

 それでいい、と思えるようになっていた。

 アヤが、自分つまりンドペキこと生駒延治、を父として選んでくれたのだから。


 スゥも同じようなことを言っていた。

 彼女の場合は、ユウ、すなわち三条優として。



 そのスゥが、新しいアイデアを言い出した。



「彼女、私達の顔も見てないでしょう。でも、視覚として顔を認識するだけじゃなく、生の声や臭いや、仕草とかも大事じゃない」


 誘い出してでも、拉致してでも、それを見せないといけないのではないか、という。


「誘い出すか……」


 だが、その方法が浮かばない。



 そもそも、本当にウイルスによる病気だろうか。


「さっき、パウダー状になって人の精神を乗っ取ることができる、そう言ったよな」


 その可能性はないのか。




 ユウは思案している。

 昔よく目にしたように、唇を指先でなぞりながら。


「乗っ取るっていうと、人聞きが悪いけど、できる……。だけど……」


 ただ、そうする理由が思いつかない。

 パリサイドの誰かがアヤの精神を乗っ取る理由。そんなものがあるだろうか。



「でも、その場合……」


 ユウの言葉に愕然とするばかりだった。


「もう自分達では手の施しようがない」


 アヤが自分を取り戻せても、犯人の精神や意識は消せない。

 消すためにはその犯人に、もう一度体内に侵入してもらわなければ……。



「呪いだな……」


 呪い……、呪いと言えば……。

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