89 ここ数日、おかしなことが続いている
ンドペキは言葉が見つからなかった。
唸るばかりである。
スゥもイコマもユウも、口を堅く閉じている。
部屋に明かりはあるが、今日ほど頼りない光だと思ったことはない。
結局、アヤは……。
妙案もないまま落ち込んでいた。
元気出そうよと、スゥが淹れてくれたコーヒーも、飲みかけのまま冷めていった。
あれからアヤには、入れ代わり立ち代わり声を掛けた。
しかし、インタフォン越しに返ってくる声は、「帰ってください」というだけ。
あなた方を知らないし何の関係もない、迷惑だ、いい加減にしないと警察を呼びます、と言われて、すごすごと引き上げてきたのだ。
隊員が一人、ずっと見張ってくれている。
そこまでしてもらわなくていい、とスジーウォンには断ったが、「あなたが隊長だったら、ここで引き揚げさせる?」と言われ、甘えることにした。
スジーウォンもレイチェルも、留守番をしてくれたライラももう出て行った。
アヤの親、四人だけが途方に暮れている。
思えば、ここ数日、おかしなことが続いている。
プリブの件から始まり、二人は立て続けに眠りこけ、チョットマは未知のウイルスにやられ、アヤに至ってはこれだ。
スゥはさぞ疲れたことだろう。
そのスゥが変なことを言い出した。
「ねえ、ンドペキ。私がユウと同期したときのこと、説明して無かったよね」
ニューキーツ郊外のとある海岸で、海から上がってきたユウが記憶と意識を同期させた、とは聞いた。
そう言うと、スゥが「その方法はね」とユウに目くばせした。
気を紛らわせる話題だろうか。
イコマと自分が同期したのは、カプセルを飲んで水系に頭を浸けるという方法だった。
洞窟のホトキンの間での出来事。
「違うのよ」
「なにが?」
「私とユウの同期方法は」
そういやユウは、自分にするんだからもっと強引な方法、と言っていたな。




