89 気丈なレイチェル 指先を隠して
イコマはアヤのことを思うといてもたってもいられなくなってきた。
探してくれている隊員達からの報を待つのみというのも辛く、申し訳ない。
プリブと同じように連れ去られたのか。
チョットマと同じようなウイルスに苛まれているのかもしれない。
連れ去られたのなら、プリブの行方を追えばアヤも見つかるだろう。
しかし、ウイルスと闘っているのなら、どこで? 一人で?
ンドペキも同じ思いなのだろう。レイチェルの話に倦んで、下を向いている。
チョットマがそれに気づいて、ちらちらと目をやっている。
たくさんの人が入るには狭いンドペキとスゥの部屋は、ただ重苦しいというより、倦怠感と焦りが熱を発しているように蒸し暑くなっていた。
「そろそろ、終わりにしないとね」
レイチェルも場の空気を感じたのだろう。
「それに、もうすぐアイーナが指定した面会時刻。遅れたら、今度こそ大目玉じゃすまないかもしれないしね」
「よろしくお願いします。疲れているのに」
レイチェルの顔にも疲労が見える。
ここ数日の間に、キョー・マチボリー船長、アイーナ市長を皮切りに、軍の総指揮官、警察省長官、治安省長官、市民代表議員数人と会ってきたのだ。
気疲れもしただろうし、アポイントを取るために人伝てに多くの人とコンタクトをとったことだろう。
そしてその間、彼女が日課としている地球人類の各グループ長との面会をこなしているし、不安がっている市民には直接会って励ましたり、助言したりもしているのだ。
「スジーウォン、ありがとう。気にしてくれて。でも、これは私の仕事だから」
気丈に振る舞っているが、かなりこたえたはずだ。今の、丁寧な報告をすることも。
いつの間にか目が充血している。
震えだした指先を、レイチェルはもう一方の手でそっと隠した。




