78 ニューイヤーの祭りには間に合いませんが
十五年かかるところが、十二年ほどに縮まった、などということなのだろう。
しかし、それを教えてもらえば、みんなにひとつ報告ができる。
そう思って、私はプリブの件は後回しにしてキョー・マチボリーに付き合うことにした。
「あの、パリサイドの母星に向かっている。そういうことなんですよね?」
キョー・マチボリーはすぐには返事をしなかった。
私は椅子の背を見つめた。
ガタリとも動かないし、なんの変化もない。
後ろに立っているはずのオーシマンを振り返ろうとした時、やっと声が聞こえた。
「ふむ。何も聞いておられないようですね」
「はい。今後のことについては」
キョー・マチボリーは吐息をつくと、
「いったい、講師どもは何をお話ししておるのだ」と、呟くように言った。
「レイチェル長官。私から申し伝えておきます。皆さん、地球からのゲストをきちんともてなすようにと」
「あ、それは、ありがとうございます」
耳が痛かった。
それは、自分の仕事ではないか。
食料や住まいだけでなく、人々に明日を見せるのは。
不安を和らげ、この母船の行政当局に毅然とした申し入れをするのは自分の役割ではなかったか。
「私の計算では、十一日と十九時間後に、パリサイドの重力圏の端部に到達する見込みです」
「えっ」
「パリサイドの安定軌道に乗るまでその後五十九時間程度、地面に立つことができるのは、プラス三十時間程度というところでしょう。順調に最短でいけば、ということです」
「そんなに早く……」
「ニューイヤーの祭りには間に合いませんが」
パリサイドの母星……。
どんなところだろう。
もっと聞いてみたいことがたくさんあったが、そろそろ本題に入らなければ。
「プリブの件ですが」と、促した。
椅子の背は、また黙り込んだ。




