76 仲間を監視しているみたい
寂れた街だった。
人通りも少なく、店らしきものもない。
街路も徐々に狭くなっている。
侘しい路地。
宇宙船の中にも、こういう街がある。
エリアREFほどではもちろんないが、どことなく不潔で、陰鬱な臭いがしている。
社会の大通りから外れかけた人々が住んでいるのだろうか。
宇宙船の先端部なのか、路地はいくらも行かないうちに突き当りになっている。
空は低く、もう空というより天井と言ってよかった。
しかも、薄暗い。
「こっちだ」
路地の入り込んだところに、隊員が一人立っていた。
「普通の住宅用ビル、かな」
建物が纏っている表層は黄色がかった金属パネルだが、例によって、薄汚れている。
窓がないので階数は分からないが、七層程度だろう。
なんの看板もない。
小さな出入り口が建物の隅に開いていた。
「どうだ?」
「五階の奥の左側の部屋。五〇一です」
部屋の前に一人、エレベーターの前に一人、隊員がついているという。
「呼びかけたりはしていません。我々がついてきていることには気づいています。完全に無視されています」
「うむ」
「なんだか、仲間を監視しているみたいで……」
「いや、ありがとう。俺たちが一旦、交代する」
ンドペキとスゥを先頭に、イコマとユウ、そしてレイチェルが建物の中に入っていった。
「階段で行こう。どんな建物か、見ておきたい」
作戦があるわけではない。
アヤの記憶が本当に失われているのか。
それとも、何らかの事情で名を変え、他人の振りをすることになったのか。
手がかりさえないのであれば、まずは話しかけてみるしかない。
「ユウ、例のウイルスにやられたら、こういうことも起こりうるのか」
「……ん。それほど事例を見たわけじゃないけど……」
ユウは口ごもっているが、さっき聞いた「ウイルスに乗っ取られる」とは、こういうことではないのか。
「それからどうなるんだ?」
聞かずにはおれなかった。




