7 チリが光って、ゆっくりと拡散していくだけ
しかし、プリブが何者かに連行された今、その「一組の男女」が気にかかっていた。
まさかプリブ?
女性の方はアヤ?
そんなことはあるまい、とは思うものの、一度沸いた不安を消すことができないでいた。
アヤ、無事でいてくれ。
得体のしれない声を聴いたアヤ。
聞き耳頭巾の使い手であるアヤ。
六百年前、深夜の大阪の街をうろついては木々の声を聴いていたアヤ。
そして、ニューキーツの治安省に勤めていたアヤ。
そこで膨大な数の言葉を盗み聞きしていたアヤ。
アヤの持っているものに、アヤの脳に詰め込まれたものに、誰かが気付いたのだとしたら。
ンドペキは大きくため息をついた。
こんなことになるなら、ひとりで行かせるのではなかった。
彼女が部屋を出てから、かれこれ九時間。
心配かけるなよ……。
アヤを自分の娘と思う気持ちに揺らぎはない。
すでにイコマとの同期は切れているが、自分の脳に流れ込んできたイコマの意識が薄れることはないし、他人の意識だという感覚もなくなった。
ユウを思う気持ちも、スゥを愛する気持ちも、すべて真に自分の心の中にある。
三人で一緒に住むようになって、その思いはますます強くなっていた。
戻るか……。
このまま深夜の街を徘徊しても、無駄かもしれない。
既に、スゥが待つ部屋に帰っているのでは……。
それでもンドペキは、息を潜めた陰気な街を彷徨わずにいられなかった。
と、
ム!
暗い路地を横切る影があった。
後を追ったが、路地はひっそり静まり返っている。
アヤではない。
直感はそう告げている。
体格が違う。
アヤより、少し細いような……。
と、背中がざわついて、とっさに振り向いた。
が、誰もいない。
チリが光って、ゆっくりと拡散していくだけ。




