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8 一組の男女
実は、ンドペキはその男に好感を持っていた。
礼儀正しく博識。穏やかな口調でユーモアを交えながら話すこのパリサイドから、すべてを吸収しなくては、という思いでいた。
少なくとも、つい数時間前までは。
しかし、サワンドーレに対するこの印象は、一変した。
あの一言を聞いてから。
講義が終わった時、「ある一組の男女を探しているようです」
と、ンドペキだけに聞こえるように囁いたのだ。
「誰が?」
サワンドーレは、痩せた長身を折り曲げるようにして鞄を手にしつつ、「神が」と言ったのである。
その先を聞く気を失った。
そんな因習をまだ持っている人間がいる。これも驚きだったが、パリサイド社会の底に横たわっているドロドロした何か、を感じたのである。
やはり、こいつら、神の国巡礼教団の生き残り。
あのおぞましい思想は死んでいないのか。
関わり合いになりたくない。
立ち去っていくサワンドーレの細い背を見送りながら、ムラムラした怒りが心に灯るのを感じたのだった。
しかし、プリブが何者かに連行された今、その「一組の男女」が気にかかっていた。
まさかプリブ?
女性の方はアヤ?
そんなことはあるまい、とは思うものの、一度沸いた不安を消すことをできないでいた。




