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69 忘れるものですか
あっ、雪……?
振り仰ぐと、キラキラした光の粒は雪のように白く、ホールの上空を覆っていた。
「よく聞け! この曲が終わるとき!」
男の声が降り注ぐ。
「惨劇は始まる! 元の世界に戻りたくば、速やかにホールから立ち去れ! さもなくば!」
と言ったきり、男の声は消えた。
後に残されたものは、小さな白い光が渦巻くのみ。
ふと、EF16211892が囁いた。
「仮面を」
「えっ」
「失礼いたしました。冗談です」
むろん、仮面を外すことに躊躇はない。
しかし、ここは仮想空間。
男が、叩き出せと言った限り、何が起きるか知れたものではない。
「また、お会いできますでしょうか」
「ええ、きっと」
たとえゲストを喜ばすシナリオだとしても、コンピューターが生み出した幻影だとしても、うれしかった。
「きっと会えますわ」
「おお、ありがたき幸せ。この喜びを胸に、次の舞踏会を首を長くして待っております。どうか、わたくしをお忘れになりませぬよう」
「忘れません」
忘れるものですか。




