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62 いったい、講師どもは

「現在、当船はご承知の通り、ピークサーフ航行中ですが、ハイエッジ状態でありまた、プリミティブエナジーが極大化しています」


 意味が分からない。


「そのため、パリサイドへの到着はかなり早まる予定です」

「そうですか」


 そう応えるしかなかったが、キョー・マチボリーはその反応に不満だったのか、

「おや、嬉しくないのですか」と、聞いてくる。

「太陽フレアから救ってくださっただけで、今は満足していますので」



 それは事実。

 しかし、これからどうなるのかという不安はある。


 そもそも、地球を出てからまだ数週間しか経っていない。

 とりあえず住むところを得て、支給される通貨を利用してその日暮らしを始めたばかり、という段階である。


 中には、生きていくための仕事を見つけようとしたり、商売を始める準備をしている者もいる。


 ただ、講師から聞く話には、この先のことについての示唆はない。

 どこに向かっているのかさえ、明確にされていないのだ。


 地球から来た者にとっては、この宇宙船での暮らしが相当の年月続くのだろうという漠然とした思いがあるだけ。

 先の見えない不安。

 そんな言葉が人々の口から出ては消え、たいしてすることのない日々を送っているのだ。



「でも、早く到着するのは嬉しいことですね」

 そう返しながら、窓の外を見た。


 さまざまな色や光が、荒れ狂う嵐のように通り過ぎていく。

 船は、単に宇宙の暗闇を粛々と進んでいるのではない。

 それくらいのことはわかる。

 次元の隙間、そう一般的に言われているスペースを旅しているのだろう。



「いつごろ、なんでしょう?」


 十五年かかるところが、十二年ほどに縮まった、などということなのだろう。

 しかし、それを教えてもらえば、みんなにひとつ報告ができる。

 そう思って、私はプリブの件は後回しにしてキョー・マチボリーに付き合うことにした。


「あの、パリサイドの母星に向かっている。そういうことなんですよね?」



 キョー・マチボリーはすぐには返事をしなかった。

 私は椅子の背を見つめた。

 ガタリとも動かないし、なんの変化もない。

 後ろに立っているはずのオーシマンを振り返ろうとした時、やっと声が聞こえた。


「ふむ。何も聞いておられないようですね」

「はい。今後のことについては」


 キョー・マチボリーは吐息をつくと、

「いったい、講師どもは何をお話ししておるのだ」と、呟くように言った。

「レイチェル長官。私から申し伝えておきます。皆さん、地球からのゲストをきちんともてなすようにと」

「あ、それは、ありがとうございます」



 耳が痛かった。

 それは、自分の仕事ではないか。

 食料や住まいだけでなく、人々に明日を見せるのは。

 不安を和らげ、この母船の行政当局に毅然とした申し入れをするのは自分の役割ではなかったか。

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