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43/200

43 三分

 思わず、驚きの声を漏らしてしまった。

 巨大クッションだとばかり思っていたもの、それがアイーナ本人だった。

 その気で見れば、目もあり口もある。



「初めまして!」


 驚いたことを悟られまいと、努めて明るく声を掛けたが、アイーナは不機嫌な声で「三分」と、繰り返す。


「あ、では、早速ですが、ニューキーツの市民にプリブという……」

 行方を捜している、とまで言いかけた時、遮られてしまった。


「あたしの呼び出しに応えなかったのは、どういう了見?」

「あ、すみませんでした」

「あんたのことは、どうでもいいけど」


 アイーナは巨大な身体をこれまた大きなソファに預けて、ふんぞり返っている。


「せっかく意見を聞いてやろうとしたが!」

 アイーナの声のトーンが一気に上がる。


「もう、つべこべ言っても遅い。パリサイドの望みは、地球に帰還することだった!」

「ええ、それはお聞きして……」

「しかし! もう地球は住める星じゃない! あんたらがね! きっと今頃、火の玉よ! 生まれたての星のように!」



 気温は急上昇し、海は枯れ果て、膨大な水蒸気が地球を厚く覆っているだろう。

 厚い雲のおかげで、徐々に冷えてはいくだろうが、また人が住めるようになるのは数万年も先のことかもしれない。

 いや、もうそんな姿には戻れないかもしれない。

 巨大な雲の塊となった地球はその軌道を変えることになるかもしれない。太陽に落ちていく方向に。

 わずかでも軌道がずれれば、もう地球はおしまい。




 アイーナの恨み節が、連発銃のようにレイチェルの耳朶に突き刺さった。


「そうなったのは誰のせいだ! あんたらが、地球の内部からエネルギーを吸い出し続けたからだ!」

 結果、地球の磁場は弱った。そして、太陽フレアに対抗できなくなった。


「どうしてくれるんだ!」

 応えようがなかったが、レイチェルはとりあえず謝った。

 実際、そうなのかもしれない。




「いいか! 我々はパリサイドの星に帰還することにした。その決断をするのに、そんなに時間はかからなかった! 地球があの様子じゃ」

「はあ……」

「いいか! 地球はあんたらだけのものじゃないんだ!」

「すみませんでした……」

「市民も賛成が多数! パリサイドに引き返すことに! 問題はあんたら! あたしは、市民から選ばれた人間。道理はきちんと通してから行動するのが信条!」

「……」



 地球人類をパリサイドの星に連れていくことになるが、それでよいかどうか。

 それを代表であるレイチェルに確認したかったのだ、とまくし立てる。



「どうせ、確認したところで、それ以外に方法はないがな! どうしても地球近辺の宇宙空間に留まりたいというなら、S16号でも置いていってやろうかと考えていた!」

「そうなんですか。すみませんでした」

「ふん! 遅い! 来るのが!」


 再び、レイチェルは頭を下げて謝った。



「三分!」

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