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42 赤頭巾ちゃんの残像

 パパだ、娘だといいながら、こんな風に楽しむことは今までなかった。

 あのコンフェッションボックスの偽物の部屋で、少しだけ話をするだけが二人の関係だった。


 フライングアイ姿でチョットマに連れて行ってもらったピクニック。

 東部方面攻撃隊の作戦に紛れ込んで。

 あれだけが、唯一の「遊び」「家族としての行楽」だったのではないだろうか。


 何もしてやっていない。

 父親らしいことを。

 楽しいことを。

 そんな思いが拭えなかったのである。



 今、妙な扮装の男と踊っているチョットマを見て、仮面の中の目が潤んでくるのは仕方のないことだった。

 昔、アヤちゃんと始めて会った頃、娘を持つ父親の気持ちが少しだけ分かったような気がしたものだ。

 今も、その喜びを少しだけ感じている……。


 本当の喜びはきっともっと大きいはず。 

 それをいつかチョットマと、そしてアヤと分かち合える日が来る。

 そう思うと、胸に押し寄せたものは、さらにその熱を増すのだった。



 んっ。

 隣の貴賓席の女性と目があった。


 会釈でもすべきか、と思う間もなく、相手はさっと顔を引っ込めてしまった。

 赤頭巾ちゃんの残像を残して。

 同じようにバーチャルを楽しんでいる人だろうか。

 それとも、仮想の中の演出キャスト?


 どちらでもいい。

 イコマは、フロアでくるくる回っているアラビアのお姫様だけを見つめた。



 貴人、蛮人、美人、獣人、麗人、仙人、妖人の群れに混じって踊るチョットマ。

 はじけるような楽しさがここまで伝わってくる。

 と、そこにバレリーナ達がなだれ込んできた。

 大粒の真珠をぶちまけたように。


 転がる真珠に道を開けようと、人々が引いていく。

 レストタイム。

 パートナーを変えるチャンスだよ、と。


 チョットマは戻って来ないだろうな。

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