41 いいぞ! うまい!
三百人はいるだろう。
思い思いの格好で踊っている。
仮面をつけている者、被り物をしている者。
異国の装束を纏った者、動物や怪獣の格好をしている者。
フロアの周囲でも、グラス片手に多くの人が行き交い、いたるところに人だかりができている。
ホール係が忙しく歩き回り、あちこちでゲストとぶつかっては飲み物やお菓子を床にぶちまけている。
おかげで掃除係も忙しい。飛び切り華やかで、フワッと広がったスカートに真っ白なエプロン姿でモップを振り回している。
誰もが、顔を見られることのない開放感に支配されていた。
音楽は大になり小になり、波を打ってテンポを変えては場を盛り上げる。
得もいえぬフローラルの香りがたち込めている。
スポットライトこそないが、ろうそくの明かりが揺らめいて、幸せなひと時を照らし出していた。
稀に怒声も聞こえるが、人々は笑いさざめき、歌う者、踊る者、演説する者、抱擁する者、おどけてみせる者、とんぼ返りをしてみせる者と、渾然一体として宮殿を揺るがしていた。
二階、三階も事情は同じ。
娘達がかわいい声を上げて走り回り、恋の予感に笑い転げていた。
貴賓席から身を乗り出している狼男がいるかと思えば、遠く日本の武将の甲冑で身を固めた御仁も見受けられた。
チョットマは……。
おっ。
やってるな。
自分の娘は、こんな人ごみの中でも不思議と見つけられる。
そこだけひときわ輝いているように。
いいぞ!
うまい!
習ったこともない、いやほとんど見たことさえないダンスなのに、それなりに回っている。
イコマはチョットマを連れて来てよかった、と胸に熱いものが押し寄せてくるのを感じた。




