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26 何か、隠していやがる

「ところで、プリブの一件、どう思う?」

 スジーウォンがぶっきらぼうにライラに問いかけた。

 チョットマもその回答に期待した。

 ニューキーツ一番の物知り、サキュバスの庭の女帝と呼ばれた呪術師ライラなら。


 しかし、応えはそっけなかった。

「さあね。仲良しチョットマに聞きたらどうだい」

「おばあさん……。私、何もわからないのよ……」

 そうだ。スミソなら。

 いや、知っていることがあるなら、いの一番にスジーウォンの耳に入れるだろう。



「そういや」

 思わせぶりにライラは言う。

「あやつ、商売用の部屋を探しているとか」

「えっ、そう?」

「噂みたいなものさ」

「誰が言った?」

 スジーウォンが食い下がる。


「探偵は情報源を言わないものさ」

「そんなことを言ってる場合か! 教えてください!」

 少し声を荒げても、ライラは意にも介さず、

「噂、その情報源ってのは、得てして不明ってこと」と、突き放す。

「それ以上、何も知らないね」



 商売用の部屋……。

 プリブは何をしようとしているのだろう。


 チョットマは、REFのプリブの秘密の部屋を思い出した。

 変装用の衣装がたくさん隠してあって……。

 そういや、ニューキーツのバザールで、乞食みたいなプリブに声を掛けられて……。

 今となっては、懐かしい思い出。


 部屋探し。

 それが連行された原因?

 それとも、やろうとした商売がまずかった?

 連行した連中が、警察とか治安部隊だったとは限らないかも。

 商売敵がプリブの邪魔をしようと……。あるいはマフィアみたいな裏世界の……。

 想像はそこで行き止まり。

 乏しい発想力が恨めしい。



 スジーウォンはしばらく唸っていたが、

「隊員達に聞いてみる。ありがとう。ここは私達が居るので、もうお戻りになっても結構です」

 声を掛けたが、老呪術師は椅子から立ち上がろうとしない。


「アヤちゃんのことを、レイチェルに知らせておいた方がいいな」

 スジーウォンが独り言のように一言添えた。

 そう、二人は親友だから。

 その伝言を頼むニュアンスで。


 それでもライラは、

「スゥの奴め。もう、一緒にやっていけないね」などと言いだした。

「どういうこと?」

 チョットマは聞いてはみたが、意味はわかる。

 きっと、薬のことを説明しなかった、という類のことだろう。



「でも、おばあさん。今までも」

「そうさ」


 これまでもこんな関係でやってきたのだ。隣同士で店を構えて、喧嘩しながら。

 本当は、まんざらでもないのに。

 その証拠に、ライラはフフンと言いながら、

「どうせ、あいつのことさ。自分で探せって言うんだろ」

 と、カプセルの残り滓を掌に転がしてみせた。


「それがあれば安心ね」

 チョットマは、あえて朗らかに言った。

 今この時期、妙に張り合われても困る。


 ライラは、「ああ。誰もが欲しがるものさ」と、今度はカプセルを透かして見ている。

「何も書いていないね。違法薬品だな」

「ダメよ。買い占めたりしちゃ」

「フン、おまえに言われる筋合いはないね」

「だって」

「あたしゃ、パリサイドが嫌いなんだ。やつら、こんな大事なことも言わないで。いや、それはどうでもいい」

「おばあさん」

「チョットマ、その呼び方はやめておくれ。いつからそんないい子ちゃんになったんだい」

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