旅の前のHe love she
朝食を終えると、俺が城を発つことを伝えるよりも早く立ち上がり、向かいの席に座って今もリラとイチャイチャしている宗谷に向かって歩いて行った。
「宗谷様、話があるのですが」
と言って畏まった態度になるルデラ。宗谷は怪訝そうな表情で彼を見ている。
「貴方の『影を操ることのできる』魔法は闇を支配する魔法です。そのことはご存知ですね?」
そう問われて宗谷はゆっくりと頷く。
「実は、闇を支配する魔法を持つ者を一箇所に留めて置くと、周囲に不幸を振り撒く存在となるのです。すみませんが、旅に出てもらえませんか?」
ルデラは嘘か本当か分からないようなことを言った。半分真実半分嘘くらいだろうか。
「分かりました。今直ぐにでも出て行けます。丁度旅をして見たいと思っていましたし」
そう言った宗谷の目が一瞬動いたのを俺は見逃さなかった。視線の先には今だに美少女達とイチャついている如月がいた。宗谷は如月に虐められていたし、一緒にいたくない気持ちもわかる。
「お待ちください!」
そう透き通った美しい声を放った主はリラである。
「ソウヤが城を出て行くなら、私も出て行きます!」
「リラ……」
なんと美しい愛だろうか。しかし外見は美女と野獣、いや美少女と怪物だろうか。しかし二人は互いを本気で好きになっているらしい。
「……勝手にしなさい」
と言ってルデラはリラから目を逸らした。宗谷とリラは二人揃ってやたら喜んでいる。
「しかし、奇遇ですね。私の隣にいる松本様も旅に出ると仰っているんですよ。」
……ヱ?俺に二人と旅に出ろと?宗谷とリラは露骨に嫌そうな顔をしている。傷つくだろ。
「共に旅に出ろとは言いません。ただ最初に二人の面倒を見てやってください。金銭はさっきの金貨三枚で充分足りるはずです」
ルデラがコソコソわざとらしく耳打ちをしてくるが、俺はため息しか吐けなかった。
これでプロローグは終了です。
これからも千文字程度ですが、できるだけ毎日更新していくのでよろしくお願いします。