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月に照らされた夜道。
そこを進む、アレンとセシリア。
っと、そこに。
「ガルルル」
狼の唸り声が響く。
それも数匹の。
「あ、アレン様。この唸り声は」
怯える、セシリア。
それもそのはず。
セシリアは、あくまで門番の事務方。
戦いは得意ではない。
そして、それはアレンも同じはず。
だが、アレンは怯えることはない。
「セシリア。俺の後ろに」
「アレンさま?」
「大丈夫。俺に任せてくれ」
「で、ですが」
頬を赤らめる、セシリア。
アレンはそんなセシリアの頭を撫で、狼の前にその身を置く。
そして聞く。
「か、かっこいいです。アレン様」
「流石、わたしの上司さま。どこまでもお付き合いいまします」
そんなセシリアの心の声を。
しかしアレンの表情は変わらない。
今は、草むらから現れた数匹の狼たちをなんとかするのが先決なのだから。
「ガルルル」
「グルルル」
「ワオーン!!」
威嚇し、狼たちは二人を取り囲まんとする。
だが、アレンは呟く。
【心眼】
「左からの飛びかかり」
刹那。
アレンの言葉通りに、左から狼がアレンに向け飛びかかる。
それを流れるように避ける、アレン。
そしてそのまま、一匹の狼は木に激突。
ぐったりする。
「ワオーン!!」
吠えたける、狼たち。
そして。
【心眼】
「左右からの飛びかかり」
三度、呟かれるアレンの言葉。
同時にセシリアと共に身を屈める、アレン。
瞬間。
「「きゃうんッ!!」」
二匹の狼。
それがアレンの上の空間で頭をぶつけ合い、失神。
地に落ち、ぐったりとする。
「グル…がるる」
残った一匹は狼狽え、後退り。
それに、アレンは呟く。
【心眼】
「こちらに背を向けて逃走」
言葉通り。
狼はアレンたちに背を向け、その場から逃走。
一心不乱に。それこそ、死に物狂いで。
静まりかえる、空間。
そして。
「終わったぞ」
響く、アレンの声。
立ち上がり、アレンはぱんっぱんっと自らの黒のローブをはたく。
そのアレンの姿。
それにセシリアは見惚れてしまう。
「あ、アレン様」
「ん?」
「そそそ。その、ありがとうございます」
「上司として当然だ」
「……っ」
乙女の顔を晒す、セシリア。
「さて、セシリア」
「は、はい」
「できるだけはやく、宿屋に向かおう。外はやっぱり危ない。宿屋に着くまで。その…できるだけ俺から離れないでくれ」
「かしこまりました」
ぎゅっ
セシリアはアレンの腕に身を寄せる。
密着といっても過言ではないほどに。
そこでアレンは、セシリアに対し心眼を使ってみる。
【心眼】
すると。
「だ、抱かれたい」
「わ、わたしのはじめて。それは、アレン様に奪ってほしいです」
そんなセシリアの心の声。
それにアレンもまた、少しだけ頬を赤らめーー
しかしそれをセシリアに悟られないように。
セシリアにぎゅっとされたまま、アレンは先に進んでいったのであった。




