いえーい
「駄目ですからね?」
朝食。俺の機嫌は最高潮に悪い。
片足を机に乗っけて、もう片方はブラつかせる態度悪オジサンである。
珍しくスクランブルエッグを頬張るが旨味を感じない。
俺が機嫌が悪い理由は、学校からの連絡でこの間ノリでぶっ潰した相手方の両親が怒り狂ったように抗議の電話が来たそうだ。
俺としてはマジでどうでもいいのだが、現実的にはそうではないらしい。
「というか何故俺が伊崎さんの父親設定で上手く行っているのか分かりません」
「お前が電話対応上手くやり過ぎたせいだろうな」
近くで待機している石田に半笑いで返す。
というから本人確認とかねぇの?
内心笑ってしまうのだが、それはまぁ仕方ない。
「カスが。格下が吠えてんじゃねぇって話だわな?石田」
首を上げて問う。
「それは伊崎さんの責でもあるのでは? 普通でいるということは、こういう絡みは自然だと思いますが?
だから極道の世界では実力もそうですが名前というのは重要なんですよ。二つ名とか」
返事は返さない。
珍しくまともだから。
⋯⋯だが、それは許されない。
何故?
問うまでもなく、言わなくてもわかるだろう。
俺の能力なんて目立てば目立つだけ普通からかけ離れてゆく。
今の生活をしているのがまさに答えだ。
こんな土地を与えられ、
極道の警護を付けて、
イジメられている人間をノリで買収し、
大企業とのコネで高校が決められ、
大企業からは身内専用の限度額もない黒いカードで好きにしなよと言われる。
──たかが15歳がだ。
俺は中身と精神がかけ離れているが、これが普通ではないことは自覚している。
だから大っぴらに女遊びをしないのはそれが理由だ。
正直今にでも爆発しそうだが、ソレをしてしまうと、止まらん。
一時ではあるが、実験的に身体機能と性欲のエリクサーを作成し、試してしまったあの時、本当に自分の無自覚さを理解した。
反省してからは頑張った過去が、って今はそれはどうでもいい。
「着替えてくる」
「外でお待ちしてますね」
「銀は?」
「念の為、獲物を研いでアップしてます」
⋯⋯アイツ警護に本気過ぎるだろ。
「そんな相手は強力じゃねぇだろ。アイツレベル、一人で対処できそうなもんだが」
「アニキはそういう人間です」
そんな確信してる顔をするな。
俺はそのまま誰にも入らせていない6畳の個室に入って、制服に着替えつつ、魔力の確認を行う。
「チッ、これがあるのかないのか分からんのが玉に瑕だ」
戻る前が"あり過ぎて"今があるのかないのかも分からん。
「一応ミニ空間は余裕で開くか」
開いた空間その1。
俺は大量に空間を所有しているから、少しずつ力を取り戻せるのは間違いない。
魔力を示せば空間が反応する感覚がある。
おそらくこちらにいても問題はない。
だが。
「回復速度があまりにも遅い」
ネクタイを締めながら呟く。
確かに治癒速度は肉体的にも最高レベルであることは分かっているし、それの為の黄金の雫だ。
しかし身体改造用のエリクサーしかないのがここに来て一番の問題になるとはな。
「あとエリクサーは3本」
この三本はあの会長のように老いた人間をどうにかする用の三本だ。
多分あの時丁度同時期に試行錯誤していた時期だから入れていたのが功を奏したな。
王族の連中に催促されまくった。
え?お前みたいなやつが催促されてやるわけないだろ?
⋯⋯欲望って知ってる?
10人の美女。ありがとうございます。
本当に何でもしてくれました。
満面の笑みで。
幸せです。南無三。
エリクサーを作製出来るまでは⋯⋯どれくらいだ?
これでもかなり待った方ではあるが。
真剣に体内を循環させる。
んん、多分出来ん。
構築はどうにでもなるからいいんだが、魔力が本当に一番の難題だ。
「まぁいい。さっさと行くか」
外に出ると、待っているのは銀と石田。
しかし何処か照れている。
視線の動きから見て、少し離れたところをチラチラと見ている。
「おはようございます、伊崎様」
「お、おはようございます!」
お辞儀する二人の美女。
止めて。朝から胸元がクッキリしてるのだけは止めて。
──こっち中学生!
中学生の性欲舐めんなよ?
ゴキと一緒なんだからな?
一回してると思ったら実は3回してますは本当にあるんだからな?
世の中の女性の皆さん、キモイって言わないであげて。
男の宿命なんだから。
「あれ? この間の人と⋯⋯新しい方?
諸星会長の所の?」
「はい。実は会長からご指示がありました。
⋯⋯こちらを」
そんなどっかのふじ○さんみたいにそこから取り出すんじゃないよと中から少し湿った紙が出てくる。
⋯⋯え?少し反応したんだけど、これって俺が悪い?
誰か答えて?
《やぁ伊崎くん。ご無沙汰しているかな?これは細やかな私からの贈り物だ。君が好きそうな女を数人見繕った。
"全て説明済み"だ。
好きに使いなさい。
"何処"で"何"をしてもいい。
こんなものでは物足りないだろうが、一先ず出来そうなのはこれくらいだ。
あとは少し知り合いに頼んでセントリーの特注品を作った。
おそらく数人が分かっていないだろう?中を見たら驚くぞー?
と、老人なりの気遣いだ。
車も女も好きにしてくれ。
贈り物なんだが、特別な意味はない。
しかし、電話くらいくれてもいいじゃないかという老人の寂しい気持ちを表しただけだ。
許してくれ》
⋯⋯爺さん。任せろ。
全盛期の姿くらいまでに戻せるように力が戻ったら変えてやる。
「説明済み?」
顔を上げて尋ねる。
「はい。ここで説明してもよろしいのですか?」
「え?」
彼女達の視線が俺の後ろへと向く。
「お前ら⋯⋯」
呆れた。
思わず手で顔を覆う。
何かと思ったら、鍛錬をしている奴らが全員鼻を伸ばしてハァハァしながら覗いていた。
まぁここは男所帯だからな。
仕方ないか。
「ほら行った行った」
手でシッシッとやるんだが、嫌そうな顔でトボトボ背を向けていく。
「ッたく。アイツら一人一人に幾ら与えてると思ってるんだ」
一人60万だぞ?
2022年だったら、魂売ってるやつもいっぱいいたってのにな。
金も生んでねぇのに女だなんて。
まだまだだなぁ。
「そんなに与えているのですか?」
「えぇ。彼らも生活があるでしょうから」
と、少し驚いたような顔をしている。
「あぁ、お名前を伺っても?長い付き合いになるでしょうから」
「あぁ。そうでしたね。私は佐藤衣里でございます。
元お嬢様校出身でございます」
綺麗な所作でご挨拶。
「おーそんな情報を」
「男性は良い反応を示すので」
まぁそうか。
分からんでもない。
「では佐藤さん。お仕事は"そういうコト"ということで?」
「仰る通りです。身の回りの世話からお仕事の代行、様々なスキルを身に付けておりますので、如何ようにもお使い頂いて構いません。
まずは車内までどうぞ」
案内され。
俺は銀と石田を呼んで車内に入ると。
「お二人は前へ。伊崎様はこちらへ」
車内は完全にリムジンと変わりない。
運転席と助手席があり、もう一つ"二人座れる"助手席のようなもの。
その後ろから後部座席的な所だ。
向かい合って座れるソファが二列もある。
中央には酒や煙草、飲料系のモノが置いてあり。
「すぅぅ。こっれは有り難いっすねぇ」
「おはようございます伊崎様」
なんと座席には様々な種類の美女がこちらを見て朝のご挨拶をしてくれる。
服装もバラバラで、顔の系統も割と似通ってはいるが、これもバラバラ。
ただ、全員そういうコトと分かっているのか、露出度がバカ高い。
「座ってください?私の上に座りますか?」
うん。生足最高。
「──是非」
美女に囲まれ、とりあえず炭酸水片手に堪能していく。
どうやら、思ってるよりも楽園化するのはそう遠くないのかもしれない。
ちょっと支障きたしそう。
若干機嫌が治ったかもしれない。
「はい、あーん♡」
うん。最高。




