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【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常  作者: ニキニキちょす
世界征服編

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出演陣による座談会!【挨拶】

 「えー、いや〜今回ご出席頂いた皆さんのお話をたっぷり聞けたんじゃないかと思います」


 台本を確認する名無しくん。


 「先程はこの人の好きな所や嫌いな所など、観客の皆様にだけお話しました」


 「あれ?いまフリートークっすよね?

 ちなみにこの人はマジで時間を守りません」


 隣にいる伊崎を見て名無しくんに言いつける石田。


 「ルーズなんですか?」


 「ルーズどころじゃないっすよ!

 この人この時間に集合!って言ってるのにその時間に起きたりするんで」


 「あらあら」


 名無しくんが笑っている中、伊崎が背後を向く。


 「ていうか、衣里はコリックマだけどさ、理沙ってトンプソンだっけ?好きなの」


 「そう!

 トンプソンもだけど、クレハも好き」


 「トンプソンっていうのはなんですか?伊崎さん」


 「あー。

 スポーツブランドの名前だ。

 ア〇ィダス的なやつがあるんだよ。


 海外のブランドなんだけど、理沙があまりにも買おうとするからもうそれ会社ごと貰ったら?って言った気がするんだよ俺」


 「言ってることがめちゃくちゃな気がしますが」


 「あ~いつもこの人こんな感じですよ?

 ねぇ、兄貴?」


 「あぁ。

 大将はコンビニ行こうくらいのテンション感で店を買ったり売ったりする」


 「そうね。

 だってわざわざ行くのめんどいじゃん?」


 「「「「そらそうよ」」」」


 「すげぇハモるじゃん」


 ニヤっと歯を剥いて笑い、観客を見る伊崎。


 「さて、座談会の方もいよいよお別れの時間がやって参りました。


 お題は公開では2つ。

 見えない所で3つとやって行きましたが、観客の皆さん方は楽しめましたでしょうか?」


 名無しくんが観客にアイコンタクトを送る。


 「あぁーいいですね。

 楽しんでくれた模様です。

 

 途中途中伊崎・石田ペアがゴチョゴチョ荒らし回って凄かった訳ですが、本当はねっ、もっと聞きたい事があったんですけれども⋯⋯魂の持続が持ちそうにないということで、予算の都合上仕方ないかと思います」


 「まぁ俺達、無限じゃねぇしな」


 「仰る通りです。


 では、個人インタビューも本当はそれぞれ撮らせていただきましたが、最後に1人ずつ挨拶をお願いして座談会の方を終わらせたいと思います。


 では、佐藤さんから前の方へ出ていただいて」


 一礼し、衣里は右から左へと観客を見ては、静かに口を開く。


 「えー。

 色々用意はしていたんですけど、こうして実際に話すというのは緊張しますね。


 先程も一人一人のプロフィールや物語でもお話があった通り、私の人生は非常につまらないモノでした」


 少し深呼吸して、衣里は振り返って全員の顔を見つめ、また観客を静かに捉える。


 「私自身、特別何かが凄いという事はなかったと思います。


 外見や基礎的なものくらいだと思います。

 なので皆さんと全く違う存在ではないということです。


 そんな私が何を偉そうに言うことがあるんだと思いますが、一つ。


 一つ⋯⋯言えることがあるとするなら、"人生は最後まで何があるか分からない"。


 ──ということです。


 私がこうして関わりだしたのはアラサーです。

 それまでの時間は自分の中で一生とも思える時間で、今いる自分の時間が全てだと思っていました。


 しかし天寿を全うして、私は思います。


 それから何十年⋯⋯私はその三十年近い時間よりも何百倍もの時間を仲間たちと、そしてここにいる家族のみんなと過ごす事ができました。


 伊崎くんが南ちゃんの卒業式でガン泣きした時は私も貰い泣きしましたし、夫の妹弟二人の晴れ舞台も眺める事が出来ました。


 何より息子と娘の孫を見るまで生きて、「お母さん産まれてきて良かったよ」と言われた事は、それまでの時間では考えられない経験です。


 確かに辛いことがあるかもしれませんが、最後まで生きてみないとわからないことが私達の生きる人生では数多くあると⋯⋯少なくとも私はそう思いました。


 そのキッカケである伊崎くんやその他のメンバーも含め、最高の人生だったと言うことができます。


 自分が出ているのでお恥ずかしい限りですが、恐らく面白いとは思います。


 では、これからは皆さんの人生が晴れる番ですよ。


 ⋯⋯ありがとうございました」


 深い一礼。

 観客からの拍手が地鳴りのように鳴り響く中、軽快な足取りで理沙がマイクを受け取る。


 「衣里ちゃんが言いたい事を言っちゃったから、私が言う事はあんまりないんだけど⋯⋯私が言える事は、前を向いて人生を必死に生きていればもしかしたら⋯⋯輝けると思う⋯⋯って言うことかな?


 似てるかな?

 でも、私は何度も死にたいって思ったから。


 何があるかなんて人生分からないもんだよね?

 

 でも生きていればきっと⋯⋯なんて。

 あの時の私がこんな事を言う日が来るとは思わなかったけど、あは。


 衣里ちゃんと一緒で、孫も見れたし、本当⋯⋯人生ゲームみたいな生活も送れたし?」


 噴き出す理沙。


 「でも、やっぱり無気力に生きるって意味ないんだなーって。


 出会う前は死ぬ寸前だったし、私からすればもう終わりだと思ってたから⋯⋯そこで、後ろの人たちと一斉に出会ったんだよね。


 チャンスは平等って言葉を作った人って凄いよね。


 だって、あのチャンスを掴めなかったら──今私はこうしてなかったから。


 だから、ここにいる全ての人達には。


 "そのチャンスはどんなに駄目な人間の前にも必ず現れる"。


 折角物語なら臭い事言ってもいいよね!?」


 一瞬振り返って伊崎達を見ては、すぐに観客を眺めて不敵に笑ってぴょんぴょん跳ねる。


 「ありがとうございましたー!」


 手を振る理沙。

 そしてその隣には銀譲の姿。


 「あ、どぞ!」


 無言で頷いて観客を無言で見つめる。


 「⋯⋯何を話そうか」


 真顔でボケる銀譲に観客の小さな笑い声が伝播していく。


 鼻で深呼吸して。顎を上げた。


 「世間は俺や、後ろにいる石田を一般的にはゴミだと言うと思う。


 人様に迷惑を掛けて、ましてや金を取って、暴力に訴えかける⋯⋯まぁ傍から見れば間違いなくそうだろう。


 こんな形の人生を見たら、悪い奴が良い人生を送っているというきっと多くの人間にあまり良くない気持ちを抱かせるに違いない。


 事実であると同時に、変えられないものだ」


 銀譲は口の端を僅かに吊り上げ、天井を見上げながら呼吸を整える。


 「石田はどうかわからないが、俺は毎日考える。


 いや、毎日自分自身を見つめ直す。


 そしてこうして何を話すかを求められた時、人生を歩んで、様々な事を見て聞いて感じて⋯⋯こう思う。


 "俺達人間は同じレベルが一緒にいるわけではないが、「気づき」を得るという所においては一緒なのではないか?ということだ"


 俺達は悪い事をしたが、それが悪い事であると気付く。


 だが、ここで様々な要因があると思う。


 それは環境のせいなのか?

 周りのせいなのか、自分のせいなのか。


 それをどこまで"気付く"のかが所謂俺達人間に課されたそれぞれのミッションなんじゃないかってことだ。

 

 別に小さくても構わないんだ。

 それがその時の俺達に必要なことであって、また別の人間なんかは感情的になっては駄目だな、だったり人との距離感だったり。


 得られる気付きは沢山あるはずだ。

 ただそのレベルの差があるのが、俺達人間のいわゆる徳の違いってやつなのかもしれない。


 俺のような悪い奴にとっては大したことない小さな気付きだ。


 目の前の果実を取りに行くような⋯⋯簡単な事だ。


 だがきっと、徳の高い人間というのは、もっと色んな考えをすると思う。


 なぜそこにあって、人間の届く目に映る所にあるのか?とかな。


 高尚な事はわからないが、こんな事だろう。

 遅れたが、それに気づいてからは毎日見つめ直す。


 その結果、個人としても様々な事業を始め、寄付も、ボランティア活動も行ったし、アドバイザーとしてグレてしまったり闇社会から足を洗いたいと思う人間たちを補助したり真っ当な生活をサポートするような事もやった。


 ちなみに寄付は匿名。

 だが、どこからか聞きつけて俺の家まで来て頭を下げられた時、俺はまだまだ人間も捨てたもんじゃないなと思ったんだ。


 ⋯⋯などとジジ臭いな。


 とにかくだ。

 俺のような奴も、並んでるこの二人のような人間も、何か持ってきて生まれた人間も、等しく用意されているのは、自由と⋯⋯気付き。


 何を学び、何を気付き、どう選択するのか。

 人を殺す事も、人を守る事も、助ける事も、陥れる事も、全てができるこの自由な世界。


 若い人たちには考えて欲しい。

 この話したその"気付き"がいつか、伝わってくれる事を願っている。


 ⋯⋯物語は勢いと気持ちが熱くて俺は好きだ。

 興味があれば読んでくれると助かる」


 今日一番の拍手がお辞儀する銀譲を包み込み、隣には仰々しくペコペコしてマイクを受け取る石田の姿。


 「えー。

 みんな凄く良い事ばかり言うので言う事は特にないんですけど、ただ、この地球という星には色んな人間がいます。


 自分はかなり環境が悪くて、兄貴と同じように人様に迷惑をかけて来た人種です。


 まぁ読んでいただいたように、この世界は良い奴も悪い奴も等しくいて、常に隣には断崖絶壁というような人生です。


 その中でどう生きるか?

 というのが生きてみてわかった事だと思います。


 色んな人間と出会って、喜怒哀楽全て、経験してきた身としては思うところはあります。


 しかしこれらは結局、経験しないといけないことであって本で読むモノでもないんだと思います。


 賢ければ机上の空論になりますし、馬鹿すぎても戦争が起こりますし。


 何事も小さな経験から成功して失敗してを繰り返さないといけないんだと思います。


 息子にも言ったんだけど、失敗を恐れるんです。


 でもそれって本当に人間なのかな?って。


 恋愛も勉強も、人間関係も全て、小さな失敗から次どうするか?を経験しないと。


 とにかく家でどうこうするより、外に出て沢山のモノを経験する事こそが、自分らの存在意義なのかなって思います。


 長いのは嫌いなんでそれじゃ、主人公に渡そうと思います」


 一礼しながら観客のゲラゲラとした笑い声と共に、最後の男へマイクが渡る。


 「今日楽しかった?」


 いきなり観客の前へ行くと笑いながら訊ねる。


 「うん。あ、楽しかった?

 あーそれならよかった」


 そう言って伊崎は少し間をおいて、静まった雰囲気の中語りだした。


 「俺達人の人生ってのは、特に現代。

 自由を求めて働き出すよな?


 飯を食う為、家族の為、あるいは将来の為。

 大体この中だよな。収まるのはな?

 

 現代ってさ、金があれば何でもできるじゃん?


 そうでしょ?な?頷いてるな。


 分かる。

 金があればありとあらゆるサービスを受けることができるし、その為なら悪魔に魂を売る奴だっている。


 俺はさ、たった一人の女と過ごす為に働き続けてきた時に、ずっと思ってた。


 「自由になる為」。


 だけど、その自由になる為に俺達はなんでこんな思いをしないといけないんだろう?って。


 同じ時間に起きて同じ時間に飯を作って、同じ場所に行って同じ場所で仕事して、理不尽に詰められる。


 そんで疲れたある日さ。

 自由ってなんだろう?って思ったんだよ。

 その時、いくら考えても結論は出なかった。


 そんでご存知の通り俺は錬金術師となって全てを得た。


 女、権力、金。


 あの頃に欲しかった全てが手に入って、俺はようやく気づいたんだ。


 あの時、既に自由だったなって。


 いや本当。

 マジで、マジマジ」


 観客の声を聞いた伊崎が笑いながら返す。


 「自由ってさ⋯⋯俺達人間の中では富、権力、異性だろ?


 でもさ、冷静に考えたら⋯⋯自殺を許されてる俺達って究極の自由じゃね?」


 シーンとなるスタジオ。


 「そうだろ?

 神様って存在がいたとしてさ、命を無駄にする行為をもっとガチガチに普通は決めるだろ?


 でもそうしない。

 俺達に殺し合って、憎み合って、助け合って、悲しみ合って、そんな全ての行為が許されてるって⋯⋯これって俺達の自由の価値とは大きく違うよな?


 だけどさ、これって凄いことだなって事に気付いた。


 だってもし俺が神様だったらいい加減にしろよって思うんだけど、それでも許されてんだよな。


 どんだけ心広いの?って感じじゃん?

 頑張って作った星とか人とか勝手に死なれたりして怒らず全てを許す。


 だからさ、俺達はもう既に自由なんだよ。

 これを聞いてるお前らがどう生きようと、どんな凄い事を成し遂げようと俺はどうでもいい。


 ただよ、俺達にはその人生っていう道の中で得られるモノがとんでもない価値なんだぜって事をもっと大事にしなきゃならないってことは自由を知った後に分かったことだ。


 俺達人類の浅知恵なんてどうでもいいわけよ。


 そんな単純じゃねぇって。


 若い奴らに言える事はさ、全て刻め。

 全ての経験を。

 全ての感情を。

 全て描いた自分の全てを。


 どう生きることも許された人生だぜ?

 そんくらい心広い神様のいる世界だ。

 

 ──自由に好きに生きようぜ。


 みんなも言ってたけど、何でも許されてるって究極の自由なんだぜ?


 その中で日本なんて当たり⋯⋯早々歩めるもんじゃねぇよ。


 そんな国で無気力な人生?

 なんてつまんねぇって事を⋯⋯今の俺はそう感じてる。


 もっともっと、理屈抜きで生きてみろよ。

 やりたくねぇことはやらんでいい。


 お前がやりたいことをやれ。

 お前が極めたいと思ったことを無我夢中で極めてみろ。


 努力ではなく、やりたいことを一生やり続けろ。


 そしたらお前は気付いたら道の果てにいるはずだ。

 

 無責任かもしれねぇが、俺は様々な人間を見てきてそう思う。


 俺はお前らに⋯⋯そして昔の自分に言いたい。



 "既に俺達は自由なんだって"。



 だから今からでも遅くねぇ。

 やりたいことをやれ。

 燃やせ。


 燃やして燃やして燃やし尽くせ。


 その選択も、お前らの生き様も、全て誰かが見てるから。


 こんな世界?

 いや、この世界だからこそ、お前らの奥底にあるやりたいことをやるのが一番だろ?


 まぁお前らを見ることはねぇだろうが。

 ⋯⋯頑張れよ、若者」

 

 伊崎たちの前を通り抜け、マイクを受け取る名無しくん。


 「いやぁ⋯⋯胸が熱くなりますね。

 それでは、座談会は終わりになります。


 皆さん手を繋いでもらって」


 全員手を繋ぎ、名無しくんは声を張り上げる。


 「この物語を見た全ての人たちに感謝を!!

 ありがとうございましたー!!」


 「「「「「ありがとうございましたー!」」」」」


 両手を上げ、そして下ろす。

 5人の挨拶が起こると、大喝采。


 その喝采は収まることはなく、止んだのは全員が消えるまで続いたという。

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