恩返し
お付き合い戴ければ、倖せです。
暗闇の海から浮上するように聖流は目を覚ました。
央が傍で聖流の顔を覗き込んでいた。
ソファーに横たわる聖流を央は床に座り、寄り添うようにして見詰めていた。
「目が覚めた?
ずっと聖流を見てた
今だけ聖流はボクだけの聖流だった」
「お前は誰なんだ? 」
「央だよ........
聖流を好きな央.......それがボクだ」
央は聖流の胸に頭を載せて目を閉じた。
「お前がもっと大人になったら考えてもいいさ」
聖流は央の髪を弄んだ。
「それじゃ遅いんだ.......」
央は起き上がると、聖流のジッポライターに火を灯した。
「もう、遅い」
央がジッポライターを放ると瞬く間に炎が部屋中を駆け巡った。
聖流は起き上がった。
部屋中にガソリンの匂いが充満していた。
「どうゆう積もりだ」
「聖流をボクだけのものにしたい
もう、時間が無いんだ
ボクと一緒に死んで」
「それはできない相談だな
オレはまだ、この世に未練がたっぷりある」
黒い煙が天井を這い、面積を広げて行くのを聖流は見上げた。
央は立ち上がり聖流に背を向けた。
「ボク、もうすぐ死ぬんだ
余命三ヶ月
白血病なんだ」
聖流は微かに震える央の背中を見詰め、立ち上がった。
「死ぬのが恐い..........
聖流、一緒に死んで」
振り返った央は何処から出したのかナイフを握り締めていた。
「独人で死ぬのが恐い
たった独人で何処へ行くの?
一緒に死んで
聖流となら恐くない」
「貴都李.............」
聖流は無意識に呼んだ。
「その名前、ボクと初めて逢った時も口にしてたね
ボクと目が合った時、ボクをそう呼んだ.........」
視界が煙で白んで行き、呼吸が苦しくなって来た。
「お願いだよ!
ボクと死んで! 」
央はナイフを構えて聖流に突進して行った。
聖流は避けることもできた。
だが、そうしなかった。
腹部に激痛が走った。
聖流は央の身体を受けとめ抱き締め、央は大きく目を見開き、聖流を見上げた。
「どうして?
避けることもできた.......」
見上げる央の瞳が微かに震えていた。
聖流は央を抱いたまま身体を折り、痛む腹を押さえた。
央の目から涙が溢れた。
聖流が央の涙を指で拭うと、央の憂いた顔が聖流の血で汚れた。
聖流は央を強く抱き締め口付ける。
央は驚きに目を見開き、それから静かに目を閉じた。
央は血塗れの手を聖流の背中に回して這わせた。
口唇を離すと、央は静かに喘ぐ。
どちらからとも無く床に寝そべり、央の身体を愛撫する聖流の髪に、央は頬を摺り寄せ恍惚とした表情を浮かべ、ゼウスが変じた金の雨を抱くダナエのように倖福な笑みを浮かべ聖流の頭を抱き締めた。
炎は燃え上がって天井を焼き、黒い煙は勢力を広げ、うねりながら生き物のように蠢いていた。
『貴都李..............
オレと死ぬために迎えに来たのか......?
答えてくれ
貴都李..................』
炎に包まれながら聖流と央は激しく求め合った。
床を転がり、指を絡め、愛撫しあった。
炎をすぐそこまで迫っていた。
やがて炎と黒煙が愛し合う聖流と央を覆い隠して行った........。
『オレは....恩に報い........たか............
貴都........李...........』
窓から見ていた桐生は、その場を立ち去った。
ラプンツェルの接吻 聖流編 fin
最後までお付き合い戴き、有り難うございました。
このラストシーンは本当にお気に入りで、長年答えを探し続けていた聖流の貴都李への想いと央に潜在する貴都李の聖流への想いが絡み合うロマンチックなシーンだなあと。
私としては、最高に書いていて倖せなシーンでした。
連載の間中、お忙しい中作品を読んで感想を送って応援して下さった水渕成分様、本当に有り難うございました。
そして、ご苦労様でした。
また、こんな劇的なシーンの作品書けたらいいなあ。
なんて、胸を膨らます私でした。
新作、もう少しで書き上がりそうです。
その時はまたお付き合い戴けたら、嬉しいです。
それでは、see you~♪♪♪




