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聖詞の恋

 読んで下さったら、嬉しいです。

 真聖(まさと)沙夜子(さよこ)は二ヶ月後に入籍し、結婚した。


 真聖が三度目と云う事で大袈裟な式などは挙げず、内輪だけのお祝いの席を設けて、写真を写すだけに収めた。


 まだ暑さが爽やかな初夏の日曜日に沙夜子(さよこ)は越して来た。


 聖流(さとる)聖詞(さとし)も駆り出されて荷物運びをやらされ、荷物の殆どがCDや美術書で、美術部に入ったばかりの聖詞は頻りに、どの画家の模写をすれば腕が上がるかなどの話を沙夜子としていた。


 沙夜子と云う女性は、クラシックだけに留まらず古い洋楽のロックや、ジャズやシャンソンも聴いていた。


 聖詞は、教養が高く、それでいてラフな姿勢を崩さない沙夜子に次第に夢中になって行った。


 聖流がそれに気付いた頃には、聖詞は少年では無く男の表情を身につけていた。


 沙夜子が来て季節は秋へと移り、聖流は仕事が休みの午後、古いCDが聴きたくなって実家を訪れ自分の部屋に行った。


 隣の聖詞の部屋から話し声が聞こえて来た。


 閉まり切っていないドアの陰から聖詞の部屋を覗くとベッドの上で聖詞と沙夜子が抱き合いキスをしていた。


 聖詞は慣れた手つきで沙夜子の身体をまさぐっている。


 聖流は音を立てない様にその場を離れた。


 何日か経ってから聖流は実家に電話を掛けた。


 聖詞が出た。


「聖詞、以前バンドの練習見たがってたろ

 今週の土曜の夜に来ないか? 」


「行くよ

 何時に待っていればいいの? 」


「そうだな七時頃はどうだ」


「しゃあ、待ってる」


 聖流は通話を切ると、ビールをあおった。




 土曜の夜、聖詞を迎えに行くと沙夜子は聖流を避けるようにキッチンへ引っ込んだ。


「行こう、聖流」


 聖詞はポケットに手を入れた聖流の腕を引いた。


『こんなあからさまじゃ親父にバレるのも時間の問題だな』


 聖流は聖詞を助手席に乗せると練習場へと走らせた。


 街外れの、元農家の家屋だった練習場に着くと既に他のメンバーは来てチューニングを合わせていた。


 聖詞に手伝わせて機材を運ぶと聖流は、他のメンバーに聖詞を紹介した。


 演奏が始まると聖詞は部屋の端に置かれたソファーに座り爆音に耳を傾けた。



 聖流は、こうしてキーボードを弾いていると戸口の柱に身を預けて貴都李(きとり)がこっちを見ているような気がして、未だに見てしまう。


 今でも貴都李の夢を見る。


 夢の中の貴都李は何も言わず、あのキレイな笑顔で聖流を見詰めていた。


 だが、話し掛けようとすると決まって目が覚めてしまうのだ。



 始めの内は既成のバンドの曲を真面目にコピーしているが、最後の方になると訳の解らないジャムセッションになる。


 そして、訳の解らない会話を交わしてお開きになる。


 毎度のパターンである。


 帰り、飲みに誘われたが未成年の聖詞を連れて飲み歩く訳には行かないので断った。


 帰りの車の中で聖詞は興奮して言った。


「耳で聴くって言うより身体で感じるって感じで、身体から力が湧くって言うのかな、凄く興奮した」


「聖詞」


「ん? 」


「この先に自販機が在るんだ

 何か飲まないか? 」


「そう言えば喉渇いてる」


 大きな駐車場の奥に自販機が二台設置してあって、ドライバーたちがよく休憩するのに利用しているので駐車場にはあちこち空き缶やペットボトルが散らばっていた。


 二人は車から降りるとコーラを買った。


 聖流は自販機に凭れてタバコに火を点けた。


「聖詞」


 聖詞は振り返った。


「沙夜子さんとはいつからなんだ? 」


 聖詞の表情が(にわ)かに変わった。


 聖詞は顔を背けて俯いた。


「気付いてたの? 」


「あんなにあからさまに態度に出ているようじゃ、親父だって莫迦(ばか)じゃない、その内気付く」


 聖詞は持っているコーラのボトルを親指の爪で引っ掻いた。


「その日が来るのを心待ちにしてる」


 俯いたまま聖詞は言った。


「彼女がそれまで待っていて欲しいって言うから我慢してるんだ

 でも本当は今すぐにでもあの家を出て、彼女と二人で暮らしたいんだ」


 聖詞はそう言って真っ直ぐ聖流を見た。


「本当にそう上手く行くと思っているのか? 」


「上手く行くって? 」


「世の中、そんな甘くはできていないってことだよ

 だいたい彼女はお前に本気なのか」


「どういう意味? 」


「言葉の通りだよ」


「おかしなこと言うよね

 本気だから愛し合ってる」


「忘れてないか?

 相手は親父の嫁さんだ」


「解ってる、そんな事」


 聖流は敢えてこれ以上言うのは止めた。


 女にのぼせ上がっている十六歳の少年に何を言っても理解できないだろう。


 真聖にバレた時、嫌と云うほど思い知ることになる。


 それを経験するのもまた、聖詞にはいい人生勉強になるだろう。


 聖流はそれくらいに思っていた。


 だが、高を括っていた聖流も甘かったのだ。


 会社で仕事をしている聖流のスマホに電話が掛かって来た。










 読んで戴き有り難うございます。

 この回は長くてですね、二つに分けました。

 またも、いつもの投稿時間に遅れてすみません。

 間に合いませんでした。 m(_ _)m


 二日くらい前から雪虫がとんでいるそうで、そろそろ山では雪降りそうですね。

 今年は初雪早いのかなあ。


 福士創太くんのドラマのダイバーをやってますね。

 楽しみにしていたのですが、暇が合わなくてなかなか観れません。

 あの爽やかな好青年の福士創太くんがクソ野郎を演じてると云う事で、めちゃくちゃそそられるんですけど、明日で最終回。

 残念。

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― 新着の感想 ―
[一言] 本編の前日譚も佳境に入って来ましたか。
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