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聖詞の章    真聖の再婚

 読んで戴きましたら倖せです。

 時は何事も無かったように流れて行く。


 誰かが心に大きな傷を受けた日であろうと、大切な誰かを失った日であろうと朝は訪れて日常が始まる。


 感情に合わせた日常は訪れない。


 だから人間は生きてゆけるのであろうか。


 


 聖流は二十五歳になっていた。


 建築士として聖流は毎日忙しく過ごしていた。


 仕事の帰り、スマホに実家から着信が来ていたので、折り返し電話を掛けると聖詞が出た。


「聖詞、どうした? 」


「あ、聖流

 父さんが召集を掛けたんだ

 今日、来れそう? 」


「ああ、特別予定は入ってないよ

 一端アパートに帰ってから、そっちへ向かう」


 聖流は、今の会社に入社した時、家から独立し、会社に近いアパートで一人暮らしをしていた。


 徒歩でアパートに帰ると服をラフなものに着替え、車で実家に向かった。


 途中、真聖と酒でも飲もうとウィスキーと聖詞用の炭酸ジュースを買って行った。


 桜は散り、家々の庭先には色とりどりの花が咲き乱れ始めていた。


 家に着くと聖詞が出迎えた。


「聖詞、また身長伸びたんじゃないか? 」


「そお? 」


 聖詞はこの春から高校に通っていた。


「それより大変なことになってるよ」


「大変なこと? 」


 聖流がリビングに行くと、見慣れない女性が立って聖流を待っていた。


 女は胸まで髪を伸ばし、仕事帰りに寄ったのだろう、スーツ姿だった。


「突然、お邪魔してすみません

 今晩は、古井沙夜子と言います」


「はあ、今晩は」


 聖流は気の抜けた挨拶をすると聖詞に目で問うた。


 聖詞は肩を竦めて、ソファーで新聞を読んでいる真聖に目をやった。


 聖流が真聖に視線をやると真聖は読んでいた新聞を畳み、立ち上がって言った。


「この古井沙夜子さんと再婚しようと思っている」


「はあ? 」


 聖流にとっては渾身の「はあ?」だった。


 父親の真聖は今年五十四歳になる、この古井沙夜子と云う女性はどう見ても二十代後半と云う処だ。


 聖流は思わず沙夜子に向き直って言った。


「いいんですか?

 親父と結婚すると云うことは、その若さでこんなデカイ息子二人の子持ちになるって事ですよ」


 沙夜子はにっこり微笑んで言った。


「ワタシに務まるか解りませんが、精一杯努力します」


「覚悟はできてると云うことですか」


「はい」


 聖流は暫く沙夜子と真聖を交互に見た。


 沙夜子は緊張しているようだった。


 聖流は言った。


「親父には親父の倖せがあるだろうから、オレからはどうこう言う積もりは無いです

 聖詞、お前は? 」


「僕も何も言うことは無いよ」


 聖流はソファーに座ると買って来たウィスキーと炭酸ジュースをテーブルに置いて言った。


「シャンパンの方が良かったね」


 沙夜子は出されたウィスキーを見ると、直ぐサイドボードからグラスを取ってテーブルに置き、キッチンに行ったかと思うと氷を持って来た。


 聖流は真聖とウィスキーを酌み交わし、聖詞と沙夜子は炭酸ジュースを飲みながら、真聖と沙夜子が会社の上司と部下であることや、クラシック好きの二人がよく一緒にコンサートに通ったなどの馴れ初めを聞いたりした。


 沙夜子が帰り、真聖も寝室に入ると聖流と聖詞は久し振りに話した。


「高校はどうなの? 」


 聖詞は手を後ろについて脚を組んだ。


「毎日楽しいよ

 美術部に入ったんだ」


「絵なんか描いたっけ? 」


「デッサンの過程が面白そうだったから

 初心者で下手だけど下手なりにやってる」


「新しい事に挑戦するのは悪くないな

 しかし相変わらず地味だな、聖詞は」


 聖流はタバコに火を点けようとしたが副流煙で聖詞の健康を害してはいけないと思い、直ぐにタバコを元に戻した。


「バンドの方はどうなの? 」


 聖詞が訊いた。


「やっと、メンバーが揃った処だよ」


「やっとドラムの人が見つかったんだ」


「ああ、やっとね」


「今度、見に行きたいな

 練習してるところ」


「その内な

 処でどう思う、再婚」


 聖詞は伸びをしながら言った。


「いいと思うよ

 父さんも最近若返った気がするし」


「そうか.......」


 聖流は、聖詞の母美菜子の啜り泣く背中を思い出していた。


「同じことを繰り返さなければいいけど」


「同じことを繰り返すって? 」


「なんでも無い

 そろそろ帰るよ

 明日も仕事あるし」


 聖流は立ち上がった。


「僕も早く寝なくちゃ

 明日も学校だ」


 聖詞は聖流を見送ると家に入って行った。


 聖流はカーステレオでリンキンパークを聴きながら繁華街へと車を走らせた。








 読んで戴き有り難うございます。


 今日は更新がこんなに遅くなってしまいました。

 私の破滅的に呑気な性格が災いしております。

 申し訳ありません。m(_ _)m


 今日は旦那の爪を切ってあげたのですが、老眼鏡かけないと見えないので、老眼鏡を掛けました処、案の定旦那が私の顔を見て叫びました。

「謎の福祉協会のおばさんだ❗ 」

 なんでも福祉協会のおばさんに私のような眼鏡の似合わないおばさんがいると旦那が言い張るんです。

 そして、必ず言うのが、

「眼鏡似合わねー❗ 」

 うっさいわ、ほっとけや。

 


 今、hydeさんのケイプオブストーム聴いてました。

 この曲、聴く度に映画「下弦の月」が観たくなります。

 そう言えば、最近観てないなあ。



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― 新着の感想 ―
[一言] きっと、眼鏡をかけていない地顔の方が良いということではないでしょうか?
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