夢うつつ
今回、竣はほんの少ししか登場しませんが、楽しんでくださいね!主役は明るい女の子、瀬川竣の幼なじみの相沢亜美ちゃんです!
亜美はマンガを読みながらポップコーンを食べていた。せっかくの夏休みなのに、最近は、退屈しのぎに漫画三昧の日々を過ごしてストレスが溜まっていた。南弐梦山での冒険が懐かしい。エキサイティングだった。
相沢家では、毎年、盆休みの間まで、あまり外には出歩かない。両親はのんびりとした性格だし、兄の相沢丈は亜美と同じハキハキとした明るい性格で、現在、都会の大学で寮生活をしながら学生をエンジョイしていた。5日後の8月8日、盆休み前に帰宅する予定だ。
『詩音は何をしているのだろうか? 連絡をしてみようかな? 何処かに出掛けているかもしれない。
先日、「竣の家が騒がしかった」とお母さんが言っていたけども、何かあったのかな? 生憎、瀬都子と一緒に梨香の家に泊まりに行っていたので、詳しいことはよく分からない。
お母さんが『馬を見た』とか言ってたけども。フフッ、何を言ってんだか。ムフフ。そん訳無いでしょうがよう。今時、公道を馬に乗って走る奴なんてさ、いないっちゅーに。カウボーイだったら分かるけどね。フフッ。暇だから竣にいたずら電話しようかなぁ?』
トントン
『うぅん? 扉をノックするのは誰かなっ?』
「ふぁ〜い? 誰ですか?」
「お母さんだけど、亜美、暇ならスーパーに行って来て、晩御飯の買い物をしてきてくれないかい?」
「え〜っ!? 暑いから嫌だ」
「じゃあ、今晩は晩御飯を食べなくていいんだね」
「え〜っ!? それも嫌だ」
「じゃあ、ちょっと宜しく御願いします」
「え〜っ! ……。うん、分かったわよ」
「お味噌、豆腐、醤油、茄子をお願い。五千円渡すから。あとホウレン草もお願いね」
「はぁ〜い♪」
今日の最高気温の予報は31℃だが、外に出てみたら37℃近くもありそうだった。
『うげぇ〜っ、暑いわ。今日も暑い。スーパーは遠いなぁ〜。面倒いなぁ。ニタシならすぐだけどもさ。そうだっ! 竣にいたずら電話を掛ながら行こうかな。非通知設定でね。フフッ』
プルルルル
プルルルル
プルルルル
ガチャッ
『はい』
『おほほほほ。あたすぃ、美絵よん。どうもー。おこんにちは♪』
『はっ!?』
『待って、今、美雪に代わるから』
『もしもし!? 誰だって?』
『あたい美雪よ。お電話ありがとう。うれすぃ〜。暑くて喉がカラカラよ。水辺に行きたいわねぇ』
『美雪? 知らないよそんな人。切るよ。たぶん間違い電話ですよ。では…』
『待って、まって。あたいよ。あたい。昔、あたいと一緒にミニスキーを履いて北極点に到達したじゃないのよ。その後、極寒の中で1時間近くランバダを踊った仲じゃないのさ。思い出した?』
『北極点? いやいや、南極点じゃなかったっけ!? 君を思い出したよ! ランバダの後に、一緒に、上半身、裸になって、寒風摩擦をしたんだよな。君はズルいよ、君だけニップレスをしてさ』
『話を複雑にしないで』
『亜美だろう? 何やってんだよ。非通知設定までしてさ』
『いたずらっ子ですっ。今からね、スーパーに行くんだよ!』
『あっ、ラッキー。じゃあさ、オレンジジュースを買ってきてくれないかな?』
『え〜っ!? 面倒い。お金はどうするの?』
『立て替えといてよ』
『分かったわよ。いくらのサイズのやつなの?』
『500のペットボトル5本を御願いします』
『はぁ〜い。じゃあね』
『亜美、ありがとう!』
亜美は電話を切ると「しまったなぁ〜。荷物が重くなるじゃん。掛けなきゃ良かったかなぁ」と言って口を膨らませた。
今年、オープン30周年記念のスーパー「サン」は亜美の家から歩いて25分程の所にある。自転車はペダルが壊れていて乗れなかった。自転車だと12分位で行けるはず。
亜美は早足で歩いたら新記録になるかもと思い、姿勢を良くして競歩のスタイルで歩き出した。
「目指せ! 15分!」と言うと早足で小走り気味に歩き出した。
「暑いし風がぬるい」 亜美はスキップをしながら歩いた。後ろ向きで歩いてみたり、辺りを警戒し、壁に背をつけて追われる真似をしながら歩いたり、ジクザクに歩いたりした。
ニタシを越えた所に名もない広場がある。小さな広場だが、近所の子供たちがサッカーや鬼ごっこをよくしていた。
広場の片隅に片付けられる事のなく置いてある古びたタイヤが3本あった。
亜美は、何時だったか、雨が降った後、水溜まりとタイヤの溝にアメンボが泳いでいるのを見た事を思い出していた。
「あの時のアメンボは何処から来たんだろうね?」と考えながら広場を通り過ぎようとした。
亜美が何気なく遠目でタイヤを確認して通り過ぎようとしたら、タイヤの側で3人組の茶髪でスーツ姿の男性が話し込む姿に気付いた。
亜美は特に気にすることもなく歩いてその場を離れていった。
冷房が効いているスーパー「サン」には、店内で暑さを凌ぐためだけに来たお客さんもいるような感じで混雑していた。
買い物もしないでベンチに座って涼んだり、本屋で寛いだりしている姿が見てとれた。
亜美は赤い買い物カゴを手に取ると迷わず食品売り場へ行って、母親に頼まれた物をカゴに入れていく。
竣に頼まれていたオレンジジュースが品切だったので、『代わりにメロンソーダを5本に変更してもいいかな?』と竣にラインを送ると『いいよ!』と返事が届いた。普段は1本150円の値段だが、記念セールの値下げ価格で1本75円となっていた。
『安いじゃん! そう言えば、ホウレン草も豆腐も安かった』と亜美は思った。
亜美は長居はしないで買い物を済ますとレジへと向かった。
入り口に目をやると、先ほど広場で見た男性3人が入ってきた。
男たちは辺りを落ち着きなく見回すとカゴを手に持ち各々に別れた。
「あっ、いけない! 醤油を買うのを忘れたわ」と亜美はせっかく並んでいた列から離れて醤油の売り場へと走った。
亜美は棚から醤油を選んで確認をするとカゴに入れた。
インスタント食品の側にある、お酒のコーナー付近で、辺りを警戒する広場で見た男の姿が目に入った。
亜美は不審に思いながらその様子を窺っていた。男は亜美の姿に気付いていないようだった。
男は監視カメラに背を向けてしゃがむとビールを2本懐に入れた。
「あっ!万引き…」と亜美は呟いた。
男はそそくさとその場を離れた。
亜美はさりげなく男を追った。
もう一人の男と合流すると弁当の売り場に行き、今度は二人して、おにぎり5個とマカロニグラタンを5個も懐に入れた。
亜美は腹立たしくこの光景をそっと見ていた。
『3人目の男が見当たらない。どこだろう?』と亜美は見回してみたが、いなかった。
亜美は、取り敢えず、従業員、店員に言わなければと思い、レジに行こうとしたら、後ろから強く肩を叩かれて驚いた。
「お嬢ちゃん、どこに行くの?おじさんと一緒に何処か行こうよ」と3人目の男が亜美の腕を強く握り締めて、ヨダレを垂らしながら言った。
つづく
ありがとうございました♪




