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僕の好きな歌

最近、「おっぱい」に纏わる事しか書いていないような気がする。思春期だからね(笑)竣君はね!(笑)

 僕は朝の10時に目覚めると、寝ぼけたままイーゼルの前にある椅子に座り、制作途中の裸婦画の木炭デッサンを見つめた。


 『完成まで、あと5時間くらいは掛かりそうだ。今日は1日木炭デッサンをして過ごそう。パンを用意しなくちゃならないな』


 僕はジーンズを履いてから茶の間に行った。

 母、幸子は既に仕事に行ったようだ。

 スズ婆ちゃんが茶の間で扇風機の風力を小で回しながら涼んで、ジョンとミッシェルと遊んでいた。


 夏奈子と真美ちゃんと渚ちゃんは、まだスズ婆ちゃんの部屋で爆睡しているとのことだった。


 僕は台所に行って食パンを二枚、母、幸子が作った鮭おにぎり3つ、野菜ジュース、炭酸水を持って自分の部屋に戻った。


 『よし! 今から夢中でデッサンに取り組んでいく。木炭は高度な技術が必要。画材の中でもレベルが高い部類に入る。食パンは消しゴムと同じ使い方をするために必要。

パンが余ればジャムを着けて食べれば宜しい。


 そういえば、昨日は寝る前に石膏デッサンに対して愚痴を漏らしたな。石膏デッサンは調子や形や空間を理解するには勉強になる。奥行きを描くようなイメージも必要だ。


 僕は美大受験のために美術予備校に通っている。石膏デッサンは嫌いじゃないけど、めんどくさい。デッサンが好きだから石膏デッサンを憎むまではいかないけど、生徒の中には石膏ノイローゼになった奴も何人かはいた。ある種の呪縛があるからね、石膏デッサンにはね。


 学んで損はないけど、執着する必要も無いのが石膏デッサンだと覚えていてくれたら良いよ。

 アグリッパ、ブルータス、モリエール、ラボルド、アポロ、パジャンド、ジョルジョなどなど。1年間、描きに描いたよ。117枚。しんどかったけど、これからも勉強はまだまだ続くんだよね。最近、人体デッサンの段階に入ったんだ。


 石膏デッサンに文句や愚痴を言うのは、今まで勉強してきたから言えるんだ。あまりにも、しんどすぎてストレスになるからさ、文句も言いたくもなるよ。


 腕前? 教室に貼られたことが3回あるから、まあまあだとは思うよ。

 早く美大受験が終わってほしいよ。まだ2年後の先の話だけどさ。


 石膏デッサンなんか描くよりも、美絵ちゃんの方が絶対に良いね! 美絵ちゃんを描いてみたい。何処を描きたいかって? そりゃ、まあ、何だ? まあ、お、お、お、おっぱい…ダメだ! 鼻血が出るから止めとこう。


 美大…。芸大かぁ…。う〜ん。実はさ、ある画家の対談の中で、こんなやり取りの会話、言葉を言っていたのが妙に引っ掛かっているんだよね。


インタビュー

−美大、芸大について、どう思いますか?


画家

「美大は才能の無い連中が行くところ」


と言っていたんだよ。衝撃的な答えに面食らったけどもね、一理あるなぁと思う所もある。


 不安感から、何か権威めいたものにすがりつきたいという自信の無さの表れがあるのかもしれないし、同じ様な教育を受けることで、画家としての個性ではなくて、学んだ絵画技術の披露や発表を続けていくという苦虫を噛んだような矛盾した展開になり兼ねないという、怖い部分を感じ取ってもいるんだ。


 『同じ様な教育を受けた結果、似たり寄ったりの画風を修得、会得して拡散される』と言えば分かりやすいかな? 僕は、今、それが非常に恐れていることなんだよ。


 ダ・ヴィンチとラファエロは明らかに画風が違う。レンブランドやフェルメールも明らかに画風が全然違うしピカソやモディリアーニも明らかに画風が違う。ルノワールとマネの画風だって似ていないよね。


 う〜ん。話が難しくなってきたなぁ。カリスマ性を備えた人物のヘタ上手(うま)な絵の場合、技術はなくても評価が高いとかね。


 『絵が上手い下手の問題では無い』と言う無責任な考え方は納得出来ないし気に食わない部分もあるし。


 要するに『アーティストは自由になりたくてアーティストになる!』だと思う。『誰が見ても僕の絵だと分かる個性が欲しい。自分の画風が欲しい』これだな。これがすべてだと思う。


 もう、2時間経過か。午後12時17分。夢中になると時間が早いなぁ。

 美絵ちゃんに会いたい。美絵ちゃん、夏休みだからお婆ちゃんの家に行っている。たまらなく会いたい』

 

 和雄爺ちゃんの部屋から歌声が聞こえる。風邪は治ったのか? 心配だから僕は和雄爺ちゃんの部屋に行くことにした。


 「爺ちゃん、大丈夫?」


 「おう大丈夫だよ!」


 「風邪じゃないの?」


 「風邪かなぁ? と思ったけどさ、寝たら治ったよ。最近は体調が優れなかったからね。睡眠不足もあったからさ」


「良かったね! ちょっと、念のために体温計を持ってきたから熱を計ってよ」


 和雄爺ちゃんは体温計を脇に挟むと黙りこくった。


 3分後。

 

 ピピピピッ。


 ピピピピッ。


 ピピピピッ。


 「うん!? 35度2分だって? 竣、低すぎないか?」


 「低いけど、それなら大丈夫だわ」と僕は言って体温計を受け取った。


 「疲れないようにね」と僕は和雄爺ちゃんに言って自分の部屋に戻った。


 和雄爺ちゃんの歌が聞こえてきた。


 ビートルズの『GIRL』。アルバム『ラバー・ソウル』のラヴ・バラードの名曲だ。僕の好きな歌だ。


 ポールとジョージのバッキング・ボーカルがイカしていて「tit,tit,tit,tit,……」と歌っている。これが最高なんだよ。「tit」は『おっぱい』という意味だ。


 ビートルズは素敵だ。


 僕は聞こえてくる和雄爺ちゃんのボーカルに合わせて自分の部屋でハモった。

 さあ、次がバッキング・ボーカルの部分だ。


 次!

 

 ここ!! ここ!!


 ここだ!





つづく

ありがとうございました!

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