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乙女たち

瀬川家の乙女たちは

今日も元気です!


 夏奈子とスズ婆ちゃんが銭湯に行っているので、僕はお母さんと一緒に夕食のチャーハン、キャベツの千切り、シシャモ、納豆、なすび、豆腐、ワカメのお味噌汁を先に食べながらテレビを見ていた。


 「ただいまぁ〜!」とスズ婆ちゃんと夏奈子が言って帰ってきた。


 「お邪魔しまーす!」と真美ちゃんと渚ちゃんが後から茶の間に入ってきた。夏奈子と渚ちゃんは幼稚園の時からの友達だ。同じ音楽学校に通っている。


 「いらっしゃい♪ 悪いけども先に食べているよ。スズ婆ちゃんも夏奈子も早く食べなさいよ。真美ちゃんと渚ちゃんも遠慮しないで、一緒に食べなさいよ」とお母さんは言った。


 「わーい!」と夏奈子と真美ちゃんと渚ちゃんはジャンプをして喜んだ。


 「ねぇお母さん、メロンのかき氷もさぁ、一緒に食べても良い?」と夏奈子が甘えるように言った。


 「ダメだ。ご飯を食べてからにしなさい」とお母さんはビシッと言った。


 「風呂上がりだからさ、かき氷が食べたいの」と夏奈子は粘って言った。


 「冷えた炭酸水があるから、それと一緒にご飯を食べなさいよ。かき氷は食後にしなさい」とお母さんは厳しく言った。


 「わっかりましたぁ〜」と夏奈子は諦めてテーブルに着いた。真美ちゃんと渚ちゃんは、親子のやり取りを見て笑っていた。


 「爺ちゃんは?」と夏奈子は炭酸水を飲みながら言った。


「寝てるよ」とお母さんはシシャモを食べて、お茶を飲みながら言った。時刻は夜の8時半だ。

 「寝るの早いねぇ」とスズ婆ちゃんは味噌汁を飲んでから言った。


 「熱っぽくて、ダルくて風邪っぽいんだとさ」とお母さんは言いながら冷蔵庫にある沢庵を取り出して言った。


 「夏とは言っても上半身裸で孫の手を持ちながら、ウロウロしていたら風邪も引くさ」とスズ婆ちゃんは苦笑しながら言った。


 「チャーハン、メッチャ美味しい!」と夏奈子は言いながら首でリズムを取り出した。


 「コラッ! 首を動かさないで落ち着いて食べなさいよ」と夏奈子はお母さんに注意された。


 「いやマジで、チャーハンが美味いんだもん」と夏奈子はギターを弾く真似をしながら炭酸水を飲んだ。

 

 「本当にもう! 真美ちゃん、渚ちゃん、ゴメンなさいねぇ。落ち着きがない子でさぁ。学校でもこんな感じなのかい?」とお母さんは言った。


 「前はそうでしたけど、海斗君がいる時には、最近だと、しおらしくして食べていますよ」と渚ちゃんは笑いながら言った。


 「ちょっいとー! こらっあーっ!! 渚さんよーっ! なにを勝手に言っとるんじゃよ~う!」と夏奈子は赤面になって茶の間をウロウロし出した。


 「渚ちゃん、海斗君?」とお母さんは笑いながら言った。


 「ヴォーカル科の樹海斗(いつきかいと)君です」と渚ちゃんはニヤケながら言った。


 「どんな男の子なのさ? カッコいいの?」と母、幸子はニヤニヤしながら言った。


 「そりゃ〜もう。カッコいいんですよ。夏奈子のお兄さんに似ているところがあるかな。凄くカッコいいんですよ」と真美ちゃんはチャーハンを一気に口に入れながら話した。


 「写真を見ます?」と渚ちゃんが鮮やかな手付きでスマホを操作すると写真を見せた。

 スズ婆ちゃんもお母さんも顔を近付けて見た。

 「あらまぁーっ! ナウい感じだねぇ〜」とスズ婆ちゃんは言った。


 「ナ、ナ、ナウい!? 何ですか? ナウいって!?」と渚ちゃんはしどろもどろになって言った。


 「カッコいいとか、今風とかそんな感じの死語です」と母、幸子は髪を掻き上げて言った。

 「何処が好きなの?」とスズ婆ちゃんはお茶を飲みながら言った。


 「歌が上手いし、ハンサムボーイだし、私に凄く優しくしてくれるのよぉ。心臓が鼻から出そうな位になるわよ〜。あははははは」と夏奈子は夢心地な顔をして言った。

 「夏奈子、良いかい? 男は内面を見なさいよ。外づらだけじゃ分からないからないんだからね」とスズ婆ちゃんは蓮根の唐揚げ(スズ婆ちゃんが作った)を食べながら厳しい顔をして言った。

 

 「分かってるわよ。真美だって、渚だって、好きな人がいるもんねぇ〜っ。真美がカズくんで、渚が玲慈(れいじ)くんだもんね」 真美ちゃんと渚ちゃんは照れながら喜んでいた。

好きな人を急に思い出したのか、あたふたしながら跳び跳ねていて、勝手に有頂天になっていた。


 「よーし。今から恋が上手くいく方法を伝授してやるから私の部屋にお菓子を持っておいで。恋バナをするよ。乙女の、女だけの、女子トークを開催します」とスズ婆ちゃんは立ち上がって腕を振り上げて凛々しい顔をして言った。


 「イエーイ! 恋バナ」と夏奈子達が手を合わせながら言った。

 何故か人妻の母、幸子も一緒になって跳び跳ねていた。


 母、幸子を含めた5人組の乙女たちは、皆でキャッキャッ言いながらスズ婆ちゃんの部屋に向かった。


 僕は黙っていた。皆の後ろ姿を静かに見送った。

 女たちが元気で幸せならば世界は平和なのだ。

 さて、僕は自分の部屋に行ってジョンとミッシェルと遊ぼう。




つづく

ありがとうございました!

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