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無事に終了!

見事なカウボーイが現れたね!

 ディーン・マックィーンは疲れを知らなさすぎた。もう田賀津吉を30分間も引きずり回していた。


 僕の家から海までの距離の時間を合わせたら、50分間も引きずり回されたことになる。


 飼い主に似ているのか、馬も疲れを見せずにバランスよく走り通していた。休んだり、走ったりを上手く組み合わせているのだ。


 「ヘイ! ジョニー! この辺でストップだ! 変質者はどんな案配だい?」とディーン・マックィーンは言うとジョニーは徐々に速度を落として静かに止まった。 

 ディーン・マックィーンは颯爽と馬から降りると、縄をジョニーの胴体に結んだ。


 「ヒヒーン!! ブルルルル! ヒヒーン!! ブルルゥゥゥ」とジョニーは鼻息を吐いて興奮した体を静めようとしていた。


 「なに? ジョニー? なんだって? 『このまま、警察署まで送ってあげようぜ!! 牢屋まで走りたい気分なんだ!!』だって? よしっ! 良いぜ!! このまま行くぜ!! 西部にあるブタ箱まで走ろうぜぇ~い!! ヒャッハァッー!!」とディーン・マックィーンは馬に激を入れて走り出そうとした。

 

 「ちょい、ちょい、ちょっと待ってくれー」とボディーガードのリーダーがディーン・マックィーンの傍まで駆け寄り馬を止めようとした。


 「ヘイ! 急に危ないぜ!! 飛び出し注意!」とディーン・マックィーンは本気で怒鳴った。

 

 「すまん……。き、君。ディーン・マックィーン君。色々とありがとう。田賀津吉を、こちらに引き渡して欲しいんだ」とボディーガードのリーダー、榊備酢(さかきびんず)さんは右手を差し出して言った。


 「こいつは俺の獲物だ。このまま警察署までレッツ・ゴーだ」とディーン・マックィーンは拒否をした。

 

 「ディーン・マックィーン君が、僕らを助けてくれて手助けをしてくれたのは、ありがたいし感謝をしているよ。ここは一先ず、こちらに容疑者を拘束して連行する権利があるんだ。瀬川さんの自宅を破壊したり、必要以上の付きまとい等の犯罪があったから、こちらで受理をしたんだ」と榊備酢さんは穏やかに言った。

 

 「分かる。だが、カウボーイの掟を汚す真似だけはしたくないんだ。西部の男として、やらなければならないことがあるんだ」とディーン・マックィーンは目を細めて夕陽を見つめた。


 ジョニーは2人の話を真剣に聞き入っているように見えた。


 「西部の掟? 君は本物のカウボーイなのか?」と榊さんは疑わしい口調で言った。


 「カウボーイさ。本物の正真正銘のカウボーイさ」とディーン・マックィーンは言ってジョニーの首を優しく撫でた。


 「西部の掟、その1。犯罪者を捕まえたカウボーイは、優先的に裁きの権利が与えられる。すなわち、正義のために使命を果たす【約束】である」とディーン・マックィーンは西部の掟を暗唱した。


 「ふむ。なるほど。ディーン・マックィーン君。君が本物のカウボーイと証明する何かを見せてほしい」と榊備酢さんは厳しい事を言った。


 ディーン・マックィーンは肩を竦めて笑いながら、ジョニーの頭を撫でた。


 「問題なし。見せましょう」とディーン・マックィーンは言って馬から華麗に飛び降りた。

 

 このやり取りのあいだ、変質者の田賀津吉は自力で立ち上がって2人の様子を見ながら逃げようと目論んでいるようだった。


 和雄爺ちゃんとスズ婆ちゃんは、そんな田賀津吉を見張っていた。


 後ろから肩を叩かれたので振り向くと、筋肉男と坊主頭の男がいた。茶の間から駆けつけてくれたのだ。


 「瀬川さんの自宅は大丈夫です。妹さんや彼女も無事です。《スペース・J・戦隊》が家を取り囲んでいます。庭にいた大男は捕捉しました」と筋肉男は冷静な声で僕に言った。


 「わかりました。ありがとうございます。《スペース・J・戦隊》は以前にも聞いたことがありますが、スズ婆ちゃんと何か関連があるんでしょうか?」と僕は単刀直入に聞いた。


 「ノーコメント」と筋肉男はサラっと言った。僕と筋肉男が話している間、坊主頭の男は一言も話さず、にこやかに微笑んでいた。


 「カウボーイに必要な素早さ、身のこなし方を見せましょう。ヘイ! 愛しのラッキー・ガール!!」とディーン・マックィーンは誰かを呼ぶためなのか横を向いて指笛を強く吹いた。


 皆も一斉に左を向いた。 


 ラッキー・ガールは何処にも見当たらず、散歩していた見知らぬお爺さんがこちらに向かって手を振っていた。

 

 ディーン・マックィーンもお爺さんに手を振って答えた。


 皆で奇妙な間合いとズレと恥ずかしさを体感した所でディーン・マックィーンに向き直った。


 「よし! 早速、カウボーイの実力を見せよう! まずは速さだ。一瞬で見抜く的確な判断力に必要なのは、速さだ! あんた『あっち向いてホイッ!!』って知ってるかい?」とディーン・マックィーンは榊備酢さんに言った。


 「知っている」と榊さんは頷いた。


 「俺はじゃん拳が強くてね。この10年間負け知らずなんだよ。俺と軽く勝負するかい?」とディーン・マックィーンは人差し指を榊さんに向けて言った。


 「やってみようか。俺もじゃん拳は強い方だし『あっち向いてホイッ!!』は好きな遊びだ」と榊さんは顔色を変えずに言った。


 「よしっ! やるぜぇい! いくぜっ!! 

 『♪ あっ、最初はチョキ(グーよりもチョキがpeaceな感じさ)、あっ、じゃん拳、しょっ!』」とディーン・マックィーンと榊さんはハモりながら言った。


 ディーン・マックィーンがパーで榊さんはグーだった。


 「あっち向いてホイ!」とディーン・マックィーンは右を指差すと榊さんも左を向いてしまった。

 「負けた!」と榊さんは笑顔を見せて言った。


 「強いでしょう? これが、まず1つ。2つ目は、身のこなし方だ! あんた、準備はいいかい? 今から俺を……、捕まえてみろよっ!! ここまでおいで♪ ヒャッホ~イ」とディーン・マックィーンは自分のお尻を叩いて榊さんを挑発してから、全速力で向こうに走り出した。

 

 榊さんはディーン・マックィーンの後を走って追い掛けた。

 

 男同士が砂浜で戯れる走りっぷりは、あまり見たことがないので、僕らは何も考えずに黙って見守っていた。

 

 ほったらかしにされた田賀津吉は、途方に暮れながら体を震わせていた。引きずられ捲っていたので、逃げる気力も無くしていた。

 

 田賀容疑者の背後にスズ婆ちゃんがいたのも大きく影響していた。

 

 ディーン・マックィーンは砂浜の遥か先まで走って逃げまくっていた。


 榊さんは途中まで追い掛けたが、諦めて、必死な形相を浮かべてこちらへ戻ってきた。


 「速いですわ、はぁはぁ」と榊さんは言いながら、息切れをして僕らの元に戻ってきた。


 「ハーハハハハハッ!!」と遠くてカウボーイらしい豪快で陽気な笑い声が聞こえてきた。


 「どうだい? 凄く足が速いでしょう? ヘイ! ジョニー!! ジョニー!! カモン!! ジョニー!! カモーン!!」とディーン・マックィーンは叫んでから大きな指笛を吹いた。


 ジョニーが喜んで指笛に反応してディーン・マックィーンの元に走り出した。


 「あっ!!」と僕たちは慌ててジョニーを止めようとしたが遅かった。

 

 田賀津吉容疑者は、また倒されて、再び波しぶきと砂にまみれて高速で引きずられてしまったのだ。


 ジョニーは怒涛の如く速すぎだった。競走馬並みの速さだった。憐れにも田賀津吉容疑者は体が右に左に揺さぶられながら引きずられていた。うつ伏せになったり、仰向けの状態になったりと回転ドアに挟まれた感じだった。


 ジョニーがディーン・マックィーンの傍に着くと、ディーン・マックィーンはジョニーに股がって、こちらに戻ってきた。


 田賀津吉容疑者は、またもや、なす統べも無く、引きずられて戻ってきた。

 

 うつ伏せになったり、仰向けの状態から右へ左へ大きく揺さぶられたり。

 

 あまりの速さに少しだけ宙に浮いて引きずられてもいた。


 ディーン・マックィーンが僕たちの横に戻ると「これでカウボーイだと分かったかい?」と、ハニかんで言った。


 「分かったよ」と榊備酢さんは頷いた。


 「これも何かの縁だ。俺を分かってくれたのなら、理解をしてくれたのなら、権利を放棄してもいいよ。獲物は君たちに譲るよ! おめでとう! グッジョブ!」とディーン・マックィーンは言って、投げ縄をジョニーの胴体から解くと榊さんに手渡した。


 「ディーン・マックィーン君。どうもありがとう。恩に着るよ」と榊さんは一礼をした。


 「お前さんたち、まだ終わっちゃいないよ」とスズ婆ちゃんは言って前に出てきた。


 「スズ婆ちゃん」と僕は言った。


 「どうしたんだ? 話は付いただろう?」とディーン・マックィーンはスズ婆ちゃんに言った。

 

 「田賀津吉よ、反省はしているのかい?」とスズ婆ちゃんは田賀容疑者を睨んで言った。


「……」田賀容疑者は疲れ果ててはいたが、スズ婆ちゃんの目を見据えて黙秘をした。


 「おやおや。今度は黙んまりかい?」とスズ婆ちゃんは言って田賀容疑者の前に出て対峙した。


 「こっちとしてはね、夏奈子に対しての謝罪を求めたいし、2度と近づくなとも言いたいんだ。色々と弁償をしてもらわないとね」と僕は冷静に話した。

 

 「俺をこんな目に合わせた夏奈子を許さないよ。早く会わせろよ」とここに来てまで、変わらない考えの田賀津吉容疑者に僕は不吉な物を感じた。

 

 「私はね、あんたの考えや心が読めるんだよ」とスズ婆ちゃんは言って田賀容疑者の顔の前に右手の掌を向けた。


 皆に緊張が走った。


 「田賀津吉。あんたは過去にも同じような事を起こして警察の厄介になっているね。現在24歳。最近まで警備員の仕事をしていたが更衣室の盗撮がバレてクビになったばかりだね。


 2つ年下の彼女がいるが、彼女があんたと別れたがっているよ。


 幼い頃に左足を複雑骨折をしたね。原因は公園の木を蹴ったからだろう? 1週間前の夜に、左のコンタクトレンズをトイレに落としただろう? 右のお尻にアザがあるね。


 夏奈子に対して、いやらしい、いかがわしい気持ちを、まだ持っているね」とスズ婆ちゃんは半目の状態で話していた。


 僕は一通り話を聞いてみて、怖かったけれども、凄いと思って感動してしまった。


 田賀津吉容疑者は驚愕して顔が蒼白になっていた。


 「まだ、続けてもいいけども。あんたは、全然、反省をしていないようだ」とスズ婆ちゃんが言った。


 いつの間にか坊主頭の男がスズ婆ちゃんの傍に来ていて、沈黙を破った。


 「貴方のぉ~、記憶をぉ~、全てぇ~、消しますねぇ~」と坊主頭の男が田賀容疑者に催眠術をかけ始めた。

 

 「貴方のぉ~、記憶を消すためにはぁ~、たった1つの呪文が必要でぇ~、私か今から唱えたらぁ~、今までのぉ~、記憶は2度とぉ~、戻りません。解くこともぉ~、できませぇ~ん」と坊主頭の男が眠くなりそうな優しい声で話した。


 「3、2、1、ハイ! 『ウニッチョ・バルバゴドンジェ』」と坊主頭の男は叫ぶと田賀津吉容疑者の頭を思いっきり殴った。


 「痛っ!!」と田賀容疑者は叫ぶと、目の焦点が合わなくなり眠ってしまった。


 「これで彼の20年分の記憶を消却しました。4歳児と変わらない記憶で、今後は残りの人生を過ごす事になります。


 ただし、夏奈子さんに対しての罪を償わなければなりませんので、裁判で裁きを受ける時『夏奈子さんにした行為の記憶だけ』が瞬間的に戻りますが、夏奈子さんの事は記憶には残っていません。完璧に消しました」と坊主頭の男は手を合わせながら話した。

 

 聞いたこともないサイレンが聞こえてきた。

 

 「スペース・J・戦隊の装甲車のサイレンだ」とボディーガードの榊備酢さんが教えてくれた。


 「俺はそろそろ行くよ。問題は解決。あとの事はヨロシク! ヘイ! ジョニー!! ジョニー!! 開拓地を目指して西部に行こうぜ!! ヒヤッハァッ〜!」とディーン・マックィーンは馬に股がると夕陽に向かって走り出した。


 「ディーン・マックィーン! また会えるよな? 詩音に宜しく! ディーン、早く戻ってこいよ〜っ!」と僕は思わず叫んだ。


 ディーン・マックィーンは本当に戻ってきた。


 「君は確か竣君だよね? 詩音の友達のさ。あのさ、今の別れの言葉をさ。もう1回だけ言ってくれないかい?」とディーン・マックィーンは頼んできた。


 「なんで?」


 「あれみたいでしょ?」


 「あれって?」


 「あれさ!!」


 「何さ?」


 「言わせるつもりかい?」


 「何の事か分からない」


 「ほら、あれだよ!」


 「いや、知らないよ」


 「あっ、そう。ふ~ん。知らないみたいだね……」とディーン・マックィーンは馬のジョニーに股がると「ヒャッハァッー!!」と叫んで夕陽に向かいながら何度も僕に振り返り、今度は本当に走って帰っていった。





つづく

ありがとうございました♪

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