ハニー、心配するな
次回で50話になります。本当に大変でした。アイデアを振り絞るのが無理な時もありました。読者の優しさに溢れた支えや、仲間のユーザに励まされて、ここまで来れました!どうもありがとう!!これからも宜しくお願い致します。
「あら!? 寝ている子犬はどうしたのよ? 誰の子犬?」と母、幸子は犬のケージをゆっくりと下ろしながら言った。
「『あじさい公園』で保護したんだよ。捨てられていたんだ」と僕は母が連れてきたケージの中の子犬の様子を見ながら言った。
「よし! その子犬も家で飼っちゃおう。竣、夏奈子、お母さんの幼馴染みで、元・ヤンキーで女番長の高崎葵(たかざきあおい 旧姓・江藤)がオーナーのペット・ショップ『和音』に顔を出してきたのよ。久しぶりに葵に会ったわ。
子犬たちに引き寄せられてさ、色々と見て回っていたらね、この子と目が合って、電流が体を貫いたのよ。この子がね、『そこの美人で可愛いお姉さん! 僕はお姉さんの家の子になりたいんだなぁ〜!』って言ってきたの。テレパシーでね、通じちゃったのよ。お母さん、一目惚れしちゃってね、飼っちゃったの! 可愛いでしょう!」と母はケージから子犬を出してあげて言った。
「かわゆい〜! かわゆい〜! お母さん、何て言う犬種の犬なの? 性別は?」と夏奈子は子犬を抱っこしながら言った。
「オスだよ。ボーダー・コリーというの。原産国がイギリスでね、中型犬に成長するの。頭が良くて運動能力が優れた優秀な犬だってさ」と母は必死に思い出しながら説明をした。
この犬種は以前どこかで見た覚えがあった。
僕はボーダー・コリーを抱きしめながら、何処で見たのかを思い出そうとしていた。
『映画の中で見たんだろうか? 小説や絵本の中で書いてあったんだろうか? 絵の中ではないだろうし』と僕は心の中で思い巡らせた。
「竣、どうしたの?」と母は僕の頬を撫でて言った。
「いや、ちょっと考え事をしていた」と僕は言って、ボーダー・コリーを抱っこしながら子守唄を歌った。
スズ婆ちゃんがトイレからから戻ってきた。
「おや、まあ! 2匹も子犬がいるじゃないの!」とスズ婆ちゃんはボーダー・コリーの頭を撫でながら笑っていた。
「わあん! わあん!」とボーダー・コリーは鳴いたが、寝ている方の子犬のシベリアンハスキーは動じずに眠っていた。
「お母さん、この、ボーダー・コリーはいくらしたのさ? ヤバイ! 足が吊ったわ。痛てててて!」と夏奈子は言って、こむら返りをしたので、ふくらはぎを伸ばすと右足を押さえながらソファーに沈み込んだ。
「お父さんやお爺ちゃんには言わないと約束をしたら金額を言うわ」と母、幸子は声を潜めて言った。
「言わないよ」とスズ婆ちゃんが頷きながら力強く言った。
「私も言わない」と夏奈子は口に指を当ててシーッと言った。
「僕も口にチャック」と言った。
母は目を閉じながら決心をして「この犬種では、もっと高いのはあるし、するんだけどね、この子の場合は20万円位だよ。葵もさ、お母さんがさ、ペットロスで、ずっと苦しんでいたのを知っていたでしょう? それでね、葵がね、『幸子、持っていきなよ』と言ってくれたのよ。
『あんた、なにバカな事を言ってんのよ? そんなことをしたら商売にならないじゃないのよ!』と戸惑って言ったらね、『幸子はさ、愛情を込めて動物を、ちゃんと飼えるから幸子を信頼しているのよ。飼い主の鏡だわ。良いから持っていきなよ、大切にしてやんな』と葵は言ってそっぽを向いたのよ。お母さんは泣きながら葵を強く抱きしめちゃったわよ。
『ありがとう! 葵、ありがとう!』と顔中、涙と鼻水だらけでさ、泣きながら御礼を言ったのよ」と母、幸子は涙ぐみながら言った。
昔、飼っていた2匹の犬、ジェイミーとキャルを亡くしてからの母の落ち込みようは本当に残酷で見ていられなかった。
その姿を僕たち家族は見てきたので、僕も夏奈子も葵さんの優しさに胸が打たれてしまった。
「閉店時間がとっくに過ぎていたからね、お母さんがさ、子犬を抱っこしながら、ケージも譲ってもらったんだけども、葵に見送られてペット・ショップから帰る時にね、お母さんがさ『あっ! 葵! トイレにスマホを忘れたわ。悪いんだけと取ってきてくれる?』と頼んで言ったら『チッ、マジかよ。しょうがねぇ~なぁー』と葵が言ってくれてね、小走りで2階にあるトイレの方まで行く間にさ、お母さんね、秘密だったけどもね、いつかね、イタリアに行く予定だった旅行のためにね、必死にさ、貯めていたさ、旅行費を常に携帯して持っていたんだわ。20万円の入った袋をレジの横に、そっと置いてきてそのまま、葵に別れの挨拶もしないで店をダッシュして出てきたのよ。ということで、金額は20万円です」と母、幸子は胸を張って言った。
「わかったよ。爺ちゃんには内緒にしておこうね」と僕は約束を誓った。
「葵さんは優しいよね」と夏奈子は涙ぐみながら言った。
「名前を決めようか?」とスズ婆ちゃんがボーダー・コリーの子犬をを抱っこしながら言った。
「一応、名前の候補だけれども、ジェニー、ジュリア、ミッシェル、アンジーがあるんだけどね」と僕はノートに書きながら言った。
「ボーダー・コリーがオスなので、後で、オスに相応しい名前を決めたいと思う。爺ちゃんも参加してほしいけど、寝ているからなぁ、起こすかい?」と僕はスズ婆ちゃんに聞いた。
「いや。起こさんでいい。野球も放送は終わっているし、そのまま、寝かしとこうぜ」とスズ婆ちゃんは言って、ガスを止めに台所に行った。
「シベリアンハスキーの子犬は、メスだから、何かあるかい?」と僕は言った。
「私はジュリアが良いな」と夏奈子は言った。
「お母さんはね、ミッシェルが良いなぁ」と言った。スズ婆ちゃんが考えた名前だった。
「私もミッシェルが良いね」と台所からスズ婆ちゃんの声が飛んできた。
「僕はジュリアが良いと思うよ」と言った。
「俺も、ジュリアが良いね!」と和雄爺ちゃんが言った。
「うわっ、じ、爺ちゃん、起きたの? 野球は終わったよ」と僕は慌てて言った。
「そんな事よりもよう、このチビちゃん達はどうしたの?」と寝ているシベリアンハスキーの子犬を抱っこしながら和雄爺ちゃんは言った。
僕は事情を簡潔に説明すると和雄爺ちゃんは「名前を早く決めた方が良いな。ボーダー・コリーはジョンに決定だ」と独断で言った。
「良いね! ジョンにしよう」と僕も賛成した。ジョンに決定だ。
「じゃあ、メスはミッシェルで良いね?」とスズ婆ちゃんは言った。
「良いよ!」と夏奈子も頷いて返事をした。
ジョンとミッシェル。新しい家族の誕生だ。
「では、わたくし、お風呂に入ります」と僕は言って浴室に行った。
僕はクタクタの体を癒すために早くお風呂に入りたかった。
僕がお風呂に入っている間にスズ婆ちゃんと夏奈子が、お母さんとお爺ちゃんに、のぞき事件の説明をするだろう。あとは2人に任せよう。
僕は体を洗ってから、風呂に入ると、窓に鍵が掛かっているのを確認してから湯船に浸かった。
「よいっしょ、と♪ ぐお〜! いやぁー、体に染みるねぇ〜。ぐわ〜〜っ! あつーい! 良いねぇ〜。お風呂は良いねぇ〜。あーっ、暖まるな。こりゃ極楽だな。あはははは。お疲れさ~ん」と言いながら頭にタオルを乗せた。
滑らかな良いお湯だった。入浴剤は北海道の名湯をイメージしたもので、ミルク成分を含んでいた。
お肌が滑らかになり、頭痛や腰痛に効果が期待できるとか。お湯が白く濁る入浴剤だ。
僕はフロンティア溢れる北の若い大地と美間ちゃんの事を考えながら肩まで湯船に浸かった。
鼻唄を歌いながら、温まっていると「お兄ちゃ〜ん」と夏奈子の声がした。
「どうした? なんだ?」と僕は片目を開けて言った。
「お風呂にさぁ、入ってもいい?」と珍しいことを夏奈子は言ってきた。
「な、な、なんでだよ!? ダメに決まってるだろうがよう!」と僕は慌てて返事をした。
「お兄ちゃん、勘違いしないでよね! 背中を流そうか? っていう話なんだよ」と夏奈子は笑いながら言った。
「おお! そりゃありがたいね! あはははは。夏奈子、ありがとう。ぜひとも頼むよ!」と僕は言って湯船から出た。
湯船から出る時に左足が僕専用のシャンプーにぶつかって、倒れたので、焦りながら、ほとんど空のシャンプーを元に戻した。
つづく
読んでくれて、どうもありがとうございました!




