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寂しい背中

最近、僕は小さい秋を見つけたけれども、竣たちは夏を満喫中!只今、楽しい夏休みです。良いなぁ。

 僕は昼過ぎに本屋に行くために街に出た。街は混雑していた。行き交う人、誰もが皆、汗だくで歩いていた。


 本当に今日は、ゆでダコになりそうなくらい暑い日だ。今日の気温はなんとビックリ38度もあった。

 

 暑さに強い僕は嬉しくて仕方がなかった。


 午後1時15分。僕はソフトクリームを食べたくなってきたので、ソフトクリームの専門店『7(ナナ)』に行くことにした。

 

 店はギャルとお爺ちゃん、お婆ちゃんの集団、子供たちが店内を走り回っていた。『7(ナナ)』はお客で溢れかえっていた。

 

 レジには20人ほどが並んでいた。僕は後ろへ並んでぼんやりと照明を見ていたら店員が笑顔で歩いてきた。


 「ようこそ、いらっしゃいまっせ。お客様、メニューでございま~す」とアルバイトの女の子が満面の笑顔で僕にメニューを渡した。


 「ありがとう。バニラを食べたいんだけど大丈夫かな?」と僕は若い店員に聞いた。


 「大丈夫です。お客様、新作のアイスクリームが入荷したのですが、挑戦してみませんか?」と割れた店員は言って、まだ僕はメニューを見ていたのに、直ぐにメニューを奪い取ってページを捲ると目的の場所を開いて差し出した。


 「どんなのものなんですか?」と僕はメニューを覗きながら聞いてみた。

 

 「〈地獄の5丁目3番1号、辛ッシュシタツン入りチョコミント、親にはシーッ! 内緒で食べたい私を許してね☆ ウフッ、この味はさ、うん、マジで辛いから2度とゴメン。でもね、やっぱり機会があればさ、また食べたいね。うん、それはつらいよね、刺激っ子・クリーム〉というソフトクリームです。450円で~す!」と店員は言葉を噛むこともなく見事に言い切った。

 

 「随分と、また長い名前のアイスクリームなんですね。でもね、バニラ味のソフトクリームでお願いします」と僕は遠慮がちに言った。

 

 「お客様、了解です。かしこまりましたぁ~♪」と店員は笑顔で会釈をして、僕の後ろで待っているお客の方に去っていった。


 僕の後ろの方で待つ女性のお客に対して「地獄の」と同じセリフを言っている先程の若い店員の声が聞こえてきた。


 僕は後ろを振り返ってみた。

 

 『7(ナナ)』はブルーの制服が可愛いので有名だが、あの店員の背中は汗が染みていて、ブラジャーの紐が透けて見えていた。

 

 僕は『笑顔を絶やさずに一生懸命に働く姿が素敵だよ。頑張ってね!』と思いながら見ていた。

 

 辛いのは、本当に、もう、うんざりだ。すでに、昨日と今日で、一気に30年分の辛さを味わってしまったのだから。

 

 僕は和雄爺ちゃんの悲痛な叫びを聞きながら家を出たのを思い出していた。

 

 夏奈子が作った「辛ッシュシタツン入りのカツサンド」を知らずに喜んで食べた爺ちゃんの雄叫び。聞きようによっては、あれは悲鳴と同じだ。

 

 和雄爺ちゃんの泡くった顔が可笑しくてさ。特にこんな気が抜けたお昼過ぎの時間帯には思い出すよ。「笑っちゃいけない」と思えば思うほど笑けてしまう。

 

 カラフルな店内のクーラーが涼しくて気持ち良い。

 

 僕は何気なく前の方に並んでいる男性に目をやった。


 男には妙な違和感があった。男は何度も辺りをキョロキョロと見ていた。ソワソワと落ち着かないでいた。


 背が高くて、髪は長めで、髪の毛の色は薄いブラウン、黒の長袖のシャツ、リーヴァイスは501を穿いていた。

 

 あまりの男の落ち着きなさに、僕はいつでも殴れるようにと、万が一、念のためにもと思い、軽くステップを踏んでからストレッチをしていた。

 

 男の番が来た。

 

 「いらっしゃいませ♪ お客様、ご注文は何になさいますか?」とアルバイトの女の子が活発な声で言った。

 

「〓♪<♀☆↓??★!」

 

 「えっ? はい? あのう、ど、どうしよう!? お客様、メニュー、メニュー、ぷ、ぷ、ぷりーず、です!」と店員が慌ててメニューを開いて男の手元に置いた。

 

 どうやら外国の方のようだ。なんとなくだけど、フランス語のように聞こえた気がした。

 

 男はメニューに指を指して注文を決めた。

 

 「ブルーベリーソフトクリーム(ニース出身・ミッシェルさん風)ですね? かしこまりましたぁ〜♪ 400円でぇ~す♪」と店員が可愛い笑顔で言った。

 

 男はポケットから千円札を1枚取り出して店員に差し出した。


 店員が受け取ろうとしたら、男はヒョイと千円札を上に上げた。

 

 からかわれたアルバイトの店員が「いやん♪」と言って笑い返した。

 

 男は笑いながら、もう一度千円札を差し出した。

 

 男はお釣りをジーンズのポケットに無造作に押し込むと、奥の窓際の席へと移動して行った。見覚えがある男だった。


 席の位置からは男の後ろ姿しか見えないのだが、僕は食い入るように男の寂しそうな背中を見つめていた。





つづく

ありがとう☆

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