表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/214

ジャン・アレックス・水詩

翌日の昼頃に目が覚めた竣はどんな1日を過ごすのかな?楽しんでくださいね!

 目が覚めて茶の間に行くと、夏奈子が買ったばかりの新しい雑誌が、ちょこん、とテーブルに置いてあった。

 僕は雑誌を捲ってみた。しばらく眺めていると、ある記事に目が止まった。

 

 ジャン・アレックス・水詩の新作の詩集が発売されることを知った。


 「こ、これは欲しい!」と僕は叫んだ。最近、僕は急激に彼のカリスマ性に夢中になっていた。

 

 ジャン・アレックス・水詩(ミズシ)はフランスの詩人であり小説家だ。フランスと日本のハーフで、現在はフランスに住んでいる。国籍はフランス。彼は『何処からともなく彗星のごとく現れた!』という印象が非常に強かった。

 

 現在23歳。彼は僅か16歳で、イギリスの音楽雑誌『ヒップ』のコラムと音楽評論を担当するという破格の待遇を得ていて、編集長に直に直接の発言も許されていた。文才があり世界中から注目をされていた。 フランス語と英語が話せて噂では日本語も少しばかり話せるのだとか。

 

 『風の行方、群青の空へと続く楽園』という小説で数々の賞を受賞したのに、授賞式には1度も出たことがないという変わり種でもあった。

 彼なりの意思表示、ポリシーの表明であった。賞に対して何の興味も価値も見出だしてはいないようだった。

 

 彼はテレビが大嫌いで、彼の口癖のひとつに「テレビは無責任の象徴だ。テレビばかり見ていると、バカになるというのは本当の話しだ。テレビは我々の『貴重な時間』を奪う時代錯誤のガラクタだ。テレビは病んだ箱だ」というものがあった。

 

 テレビはダメでも映画は大好きで「テレビで映画を見ることは推奨する」という矛盾したことを言い、日頃から自説を唱え続けてもいた。

 

 ジャン・アレックス・水詩はルックスが美しく、研ぎ澄まされていた頃のジャン・ユーグ・アングラードに似ていた。身長は181センチもあった。

 ジャン・アレックス・水詩は、よく行方を眩ます事をしていた。

 音信不通になっては、彼の友人たちが心配で探している間、彼は行方不明の場所から遠く離れた所にいることが多かった。

 

 何故か、ロンドンにいてアビーロードの横断歩道を渡る写真を毎日撮り続けていたり、ヴェネチアングラスを作りにムラーノに行っていたり、友人と一緒にジャック・ケルアックの墓の前で酒を飲みながら自作の詩を朗読をしては泣いてばかりいたりなど奇行とまではいかないが、何処に居るのかは全く予測困難であった。

 

 ある時には北海道で温泉、九州で温泉、といった具合に。誰もが『ジャン・アレックス・水詩は自由な旅人でもあるのだ』と悟った方が気が楽であると無理やり納得をした。


 最近こんなことがあった。滅多に受けないインタビューを嫌々ながらして、偶然にも以前から気に入らないインタビュアーと出くわし、まぬけな質問に苛立って、言い争いになり、喧嘩に発展し、癇癪を起こしたので、そのまま帰ってしまったのだ。

 結局、その日のインタビューは喧嘩した内容がテープレコーダーに記録されていたので、激しい罵り合いが5ページに渡り雑誌の記事に載ってしまった。雑誌は280万部も売れた。


 ジャン・アレックス・水詩は、周りを巻き込んでいくタイプ、彼に引き込まれてしまうタイプの男であった。

  

 最新作の詩集は『太陽に身を委ねて、君に涙を託す』というものだった。雑誌には最新作の詩が掲載されていた。 

   

 

 

 『愛の誓い』


君への愛を口にする度、

僕の愛は震えてしまう

泣きたくなるほど

時間があるので、

君への愛で世界を満たす必要性が生じるし

考慮しなければならない


それが喜びであれば

僕の人生は肯定される


君にセレナーデを歌う時、記憶にあった情熱の残像は、デモテープに落とした古い曲を引っ張り出して、やむ終えず、手を加えなければならない葛藤のようなものであり、枯れた才能の残骸を自ら知ることになる悲しみでもあるのだ。

新鮮な曲だと披露する躊躇いにも似ていて、泣けるほど歯がゆいのだ

作り続けていくしかない


愛は最高の薬だ

愛は常に生きている

君には世界のすべてがある

僕は君に命を委ねている




という詩だった。僕はジャン・アレックス・水詩の記事を全部、切り抜いてから雑誌をテーブルの上に元の位置に戻した。

 

 僕は昼過ぎに街の本屋に行く事にしようと決めた。

 


 ◇◇◇◇◇



 「あっ、お兄ちゃん、おはよ~う♪」と夏奈子が洗面所から出てきた。夏奈子は歯を磨いていた。僕は慌てて切り抜いた記事を後ろに隠した。

 「あ、おはよう。夏奈子、今日は良い昼だね。あはははは」と言ってその場を離れようとした。

 

 「お兄ちゃん!」と夏奈子が呼び止めた。

 

 「な、何さ?」と僕は冷や汗が出てきた。

 

 「お母さん、出掛けたから、遅い朝食を今から私が作ろうか?」と優しい提案をしてくれるではないか。でも今日はその優しさが恐い。

 

 「悪いね。お願いしようかな? そうしようかな?」と僕はゆっくり、さりげなく扉の前に移動した。

 

 「出来たら呼ぶよ」と夏奈子は言って洗面所に戻っていった。

 

 『ふーっ。危機一髪。買ったばかりの雑誌を切り抜かれたら、誰だって、たまったもんじゃないだろうからな。まあ、これで、おあいこだな。僕はジャン・アレックス・水詩の大ファンだから、まあ、いっか。あはははは』と僕は考えながら自分の部屋に再び戻った。隠す場所を考えながら部屋の中を見回した。

 僕は切り抜いた記事を机の引き出しの奥に仕舞い込んだ。





つづく

ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ