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5本目:タイトルを思い出そう


「村だ〜」


貴子が元晴を置き去りにして早30分。

貴子の眼下には複数の建物があった。


……すたっ。


(さすがに、飛んで行くのはまずいかも〜)


貴子は村から少し離れた場所に降り立つと、そのまま徒歩で向かいはじめた。


「……?」


貴子は足を止めた。



(……悲鳴?)


微かに聞こえる複数の叫び声。

村で一体、何が起こっているというのだ。


貴子は身を屈めて、慎重に村へと近づいた。

息を潜め、足元に注意を払って進む貴子。


「……」


村の様子が見える場所まで近づいた。

貴子が周囲を観察しはじめた瞬間、



「ウォオオオオ!!」


何者かの雄叫びが、空気を震わした。


(何……?)


貴子はさらに身を屈めて警戒を高めた。


建物の影から飛び出してきた、逃げ惑う村人たち。

その後ろから、


ドスンッドスンッドスンッ!


巨大な一つ目の怪物が、姿を現した。


(何かのゲームにいそう)


貴子。

そんな悠長なことを考えている場合ではない。


怪物の足は鈍いが、村人たちに比べたら一歩が大きい。

捕まるのは、時間の問題だ。


「……は、」


貴子が急に声を漏らした。

そして次の瞬間——


「はっくしょぉおおおい!!」


年頃の乙女とは程遠い、

豪快なくしゃみをした。


「うぁ」


貴子はむず痒そうに顔を歪めた後、村に視線を戻した。


「あ」


——怪物と目が合う。



「ウオ! ォオオオ!!」


ドスンッドスンッドスンッ!


怪物が貴子に突進してくる。


貴子!

今すぐ傘を広げて逃げるんだ!


「これはまずい」


貴子はぽつり呟いて、傘を持ち上げた。


まずいなんて言っている暇はない。

今すぐ飛——



ヒュン!!



貴子が傘を怪物に向けた瞬間、

傘の先から——光線が駆け抜けた。


ブシュッ!


怪物の瞳目掛けて飛んでいった光線。

そのまままっすぐに、目ごと怪物の頭を貫いた。


「ォ……」



バタンッ——!


巨体が地面に叩き付けられた。

周りにいた村人たちは、呆然と立ち尽くしている。


「おー、よかった」


何故そんなに平然としているのだ。


『斬る』

まだ分かる。

『飛ぶ』

これもまだ理解できる。


『光線』

——分かるわけがない。


何をどうしたらその発想になるのだ貴子よ。


貴子は一番近くにいた村人に近寄って話しかけた。



「あのー、どこかタダで泊まれる空き家ないですか?」


図々しいことこの上ない。

恥を恥とも知らぬ貴子の言葉に、村人も言葉を失って……



「ぜひ、うちにお越しください」



村人は両手包み込むように、貴子の手を握った。


「えー、いいんですか〜」


「もちろんです! この村の恩人様ですもの! お礼をさせてください!」


「それじゃあ、お言葉に甘えて〜」


貴子の周りに、村人たちが群がりはじめた。

その誰もが、貴子を英雄かのような瞳で見つめている。


こんな英雄でいいのか……。

いや、間違ってはいない。

間違ってはいないのだが——



かくして、

意図せず寝床を確保した貴子。


コンビニで一人寂しく過ごす元晴のことは忘れ、

暖かく柔らかいベッドの中、無事異世界での一日目を終えたのだった。



閉。

最後までお読みいただきありがとうございました。

ここで一区切りです。


元晴を助けたくなったら、気が向いたときに異世界生活2日目を始めます。

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